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第四十五話

保護された子供達は、その場に駆けつけた騎士達にさえも怯え震えていた。

例え自分達に傷を癒やす魔法を使った者であってもだ。

下手に近寄れば恐怖に駆られた子供が何をするか分からない。

現に今も近寄ろうとする騎士を睨みつけ、魔封じの拘束具が外された為に使えるようになった魔力で自分達に掛けられる魔法を弾いている。

「お疲れさまです」

そしてそんな緊迫した状況の中、闇を連れて現れたのは小柄な青年だった。

その青年の背後にはその青年よりも体格の良い男が三人と銀髪の青年に赤毛の狼がいる。

最後の一人と一匹……その狼は人狼の様で言い表すのであれば二人と数えるのが妥当だろう。

最後の二人はこの子供達と同じく傷はあれど警戒心は殆ど無いらしく比較的落ち着いているように見える。

「ル……スペランツァ様」

「中にいた彼等は拘束済み。それと白衣を着た男は背後に何かしらの組織か彼等を手引き、又はそそのかした相手を知っている可能性があります」

「分かりました。そちらを重点的に調べます。

…………後の問題は」

「子供達ですね」

騎士団の副団長ノックスが申し訳無さそうな表情をする中、フードを下ろした青年は月明かりに照らされた青の濃淡が混じったように見える黒髪を晒した。

そしてゆっくりと怯える子供達の元へと歩み寄る。

「来るな!もう痛いのは嫌なんだ!!」

そして子供達の内の一人が叫び、魔法で創り出した風の刃を放った。

せの風の刃をスペランツァは避けもせずその身に受けた。

てっきりその攻撃を避けると思っていた周囲は、その頬から流れる赤に目を見開いた。

そして近づこうとする騎士達や同じく陰の二人を手で制し、それでも尚彼は子供達の元へと再度止めていた足を進めた。

「なッ、離せ!!」

そして子供達の中でも年長で、魔法を使ってまで護ろうとした子供を優しく抱き締めた。

「よく頑張ったな」

そしてその腕のから逃れようと藻掻き、その背や腕を力の限り叩き足で蹴り上げたりと動いていたその子供は、聴こえてきた言葉にピタリとその動きを止めた。

「怖かっただろうに、皆を護っていたんだな」

「でも、もう大丈夫だ。大丈夫。

…………助けに来るのが遅くなってごめんな」

頭を撫でられ傷に触らないようにと優しく、けれども強く抱き締められた子供は動かない。

「皆も、遅くなってごめんな」

「でももう大丈夫だ。俺達と一緒に家族の待つ家に帰ろう」

その言葉に何とかスペランツァの腕から助け出そうと動こうとしていた子供達はその大きな瞳からポロポロと大粒の涙を溢し、声を上げて泣き出した。

それは悲しい、痛い等と言った負の感情からくるものではなく、安心からくる涙なのだとその場にいた全員が理解した。

ベネチアンマスク越しにも分かる優しいアンバーは子供達を安心させるように凪ぎいて、その腕の中にいる子供も縋り付くようにスペランツァの服を握り締め声は上げないものの嗚咽を漏らし涙を溢していた。

腕の中にいる子供を抱きかかえたスペランツァは、そのまま子供達の直ぐ側によりある者は抱き締め、頭を撫で、頑張ったなと声を掛けたりと動いていた。

涙を流し安心からかウトウトとしだした子供達に、持っていた水筒に一度口をつけ何もないから飲んでも大丈夫だと見せ、飲ませる。

そして今にも寝てしまいそうな子供達に自身の黒い外套を毛布代わりに掛け、自身の背中や膝を枕や背もたれ代わりに差し出した。

「…………」

「分かりました」

そして同じ陰である二人に目配せをし、子供達を安全に送り届けるための馬車を近くまで呼ぶよう指示を出し、それを正しく汲み取り動く二人にありがとうと感謝を伝えるように微笑んだ。

「………今はゆっくり休んで。俺がもう君達が傷付くことのないように護るから」

その言葉を聴いて安心したように目を瞑る子供達一人一人の頭を撫でたスペランツァは、その言葉通り馬車が到着して子供達全員を乗せた後も子供達から離れず傍に寄り添っていた。


太陽が昇り始めた頃、子供達は三人を除いてその全員が親元へと帰った。

涙を流し母の胸に飛び込む子供。

父に母ごと良かったと抱き締められた子供。

家族で喜びを噛み締めその存在を確かめ合う姿は、どんな名画も霞むほどに美しい光景だった。

「見事に懐かれましたね」

「うぅぅん……」

「………駄目?」

「駄目じゃないけど……どうしよっか?」

残った三人はスペランツァが最初に抱き締めた栗色の髪の子供と、銀髪の子供、そして赤毛の人狼の子供だった。

「どうしますか?」

「えっと、本当に家が分からない?」

「うーん、家への道は分からないけど……城に行けば分かるよ?

この狼くんも」

「…………城って、何でか聴いても?」

「そこだったら良く出入りしてるし家に近い。

それに狼くんはそもそも城に預かられてる身だからねぇ」

「成程?

なら俺達で送るよ」

「問題は……」

そう言ってスペランツァが僅かに目線を下にずらせば、こちらを見上げる茶色い瞳と目が合った。

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