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第四十六話

本当に、どうしたものか……。

陰として本名で動くわけには逝かないので、新しくスペランツァと言う名前で動いていた俺は本気で困っていた。

__因みにスペランツァと言う名前は俺が付けたものではなく、俺と一緒に陰として動いてくれている三人が付けてくれた名前だ__

方向音痴で自分の家の道さえも迷うという銀髪の彼と人狼らしい灰色に赤の混じった毛並みの子犬くらいの大きさの彼。

そして俺から離れなくなってしまった子供。

二人は城に送り届ければいいらしいが、問題はこの子だ。

彼は家がない。

元々孤児院にいたらしいが、その孤児院は俺達が彼等を救出する前に騎士団の方が事前に動き、今その孤児院は運営していない。

もっと言えば、その孤児院自体が人身売買に携わっており身寄りのない子供を引き取ってはその子供を腐った貴族や金持ち連中に売りさばいていたらしいのだ。

この彼も、その孤児院で売られてあの場にいたのだろう。

その孤児院にいた他の子供達は保護して他の信頼のおける孤児院に移動して暮らしている。

それと同じ様に彼にもその孤児院に行かないかと提案したのだが____

「いや!一緒にいる!」

その一点張りで、俺の着ている外套を掴んで離さない。

無理に剥がそうとしたり説得しようものならギャン泣き待った無しで手の打ちようがないのだ。

それに俺を含めジュラルドもロベルトも困り顔だ。

それにセルペンテ、セルも相変わらずの無表情だが、その桃色の瞳はどうすればいいのかと不安げに揺れている。

「本当に俺と一緒がいいの?」

「一緒がいい」

「んー」

引き取ってもいいならそうしたいが、それは出来ないのだ。

陰としての俺はルイーナ・ファウストとは全く無関係の男だ。

つまりスペランツァの俺が彼を養うのは難しい。

それにこれから先、本格的に陰として動くのだから危険が付き纏う。

その場に何も知らない子供がいたら?

それは弱みになるるだろう。

弱みがあれば敵はそこに漬け込む。

リスクが高い分、子供の彼を一緒には連れてはいけない。

「……スペランツァ様、もし宜しければ私が彼を預かりましょうか」

「プレガーレ?」

俺から離れようとしない子供を預かろうかとそう提案したのはセル、プレガーレだった。

「私の今いる場所でなら彼も満足するのでは無いでしょうか」

「でも、プレガーレが大変なんじゃないか?」

「ご安心下さい。屋敷には信頼の置ける部下がいますし力量も問題ありません」

「うーん……じゃあお願いしようかな。

ね、君もそれでいいかな?」

「………一緒にはいれない?」

「スペランツァ様と共にいたいのであれば、まずは己自身が力を付けなければならない。

……………それとも、ずっと護られるだけの存在でいたいのか」

プレガーレのその言葉に、外套を掴む手が強くなる。

俯いてしまった子供に掛けられる言葉を俺は持っていない。

ここで「大丈夫」「一緒にいる」とは言えない。

確かに俺は彼等を助けるためにここに来たが、俺についてきたいと言う彼の今後を俺は保証できない。

俺自身護りたいものがあるから。

その為には俺は俺自身を捨てる覚悟がある。

そしてこんな俺について来てくれた三人は俺が護らなくても強いのだ。

だから俺自身も心配はするが、それでも安心して陰の任務を共に出来るのだ。

そこに、子供をいれる余裕はない。

望んでも出来ない事はあるのだ。

………現実は非道で、ままならないものだよなぁ。

「………付いて行ったら、役に立てる?

護る為に力を付けられる?」

「それは君の頑張り次第だ。

だが君が望むのであれば、私達は手を貸そう」

「なら、行く。護られるんじゃなくて、護りたい役に立ちたい」

顔を上げた子供は、その茶色の瞳に護ると決めた者特有の炎を灯した目でプレガーレを真っ直ぐに見ていた。

「すぐに追いつくから」

「んふふ、応援してるよ」

柔らかな栗色の髪を撫でれば気持ちよさそうに目を細めた子供。

「それじゃあ、彼をよろしくねプレガーレ」

「お任せ下さい」

子供と共に先に彼の屋敷へと向かった二人を見送り、俺は四人に向き直った。

「待たせてごめんね。君達を城の近くまで送るよ」

陰である俺達は大々的には城に入れない。

騎士団は互いに協力する為、団を束ねる隊長格達にはスペランツァがルイーナ・ファウストであることは知っているが、その他に知っているのは陛下とその側近のみ。

ルイーナ・ファウストだとバレてしまえば、陛下と交わした誓約に反する。

俺は二人を護るために陰になったのだから、自分から俺の正体に繋がり得る事はしたくない。

今回は仕方ないが、城の裏手まで案内して後は彼等だけで行ってもらおう。

彼等が行けば、出入り口を警護している者達が気付いて保護してくれるだろうから。

「移動は、馬車だけどカテーナは二人と一緒に馬車の中に。

カングは俺と一緒に御者役ね」

「分かりました」

「はーい」

ジュラルドはカング。ロベルトはカテーナという陰としての名前を呼べばそれぞれ返事を返し二人を馬車へと案内する。

それに俺も後ろから付いていくが、内心憂鬱だった。

御者であればそこまで体調に負担は無いからまぁ楽っちゃ楽なんだけどなぁ………。

まぁ気分が乗らないよな。

「そう言えば、あの子の名前聴いてなかったな……」

今度セルに聴いてみよう。


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