プロローグ
〈???年〉
「うん………?」
真っ暗な闇の中どこかからか男の息の漏れる音がした。
「俺は…何故こんなところに?」
男は砂漠を渡り歩く商人であり、たびたびヨソの国の旅人に水などを売ったりしている商人だ。
おかげでそれなりに金持ちであり、今日もホクホクの懐を抱えて家へ帰る途中だったはずなのだが?
「そうか、確か突然足元の砂が落ちて、俺は巻き添えに……いわゆる落砂というものか。」
男は冷静に自分の状況を分析し、目を凝らしても何も見えないので唯一の五感である聴覚を頼りに
周囲の状況を確認しようとした。
「しかし、まさか自分が落砂に巻き込まれることになるとはな…」
自然とは恐ろしいものだと男が別の思考を考え出した時、近くでンゴォォォォと何かの鳴く声がした。
「ああ、そういえばラクダで来ていたんだったな」
自分のことで精一杯ですっかり忘れていた。
ラクダに持たせているバックの中に確かマッチがあったはず、そう思いラクダの鳴く声の聞こえる方角を聴覚を頼りに進んでいった。
「ん?これか?」
ンゴォォォォォと聞こえる方角を手探りで向かっていくと何やら柔らかいものを発見した。
男は手探りで自分のバックを探す。
「お、あったな。」
バックがあったので中からマッチを取り出し、火をつけた。
「……………へ?」
男が火をつけるとすぐ前に何かの門があることに気づいた。
「ンゴォォォォォォ!」
ラクダは自分を向こうへ向かわせようとするように首で俺を向こう側へ促した。
「まぁ、ここでグダグダしていても何も変わらないしな…」
男は勇気を振り絞り、門を力強く開いた。
ギィィィィィィィ
思いの外大きな音を軋ませながら門は開いた。
門の向こうには太陽の光が差し掛かっており、光の根元にはある一冊の本があった。
男はその本から目を離せずふらふらと近づいていく。
その本の表紙には本の名前が書いてあった。
「れめげとん?」
男は本を手に取って開いた。
そして、次の瞬間
「ヒィッ!」
彼は本を地面へ落とした。
男の顔面は蒼白となっており、その動揺は持っていたマッチを落としたことからもよく読み取れる。
マッチのこぼれ落ちた手は恐怖で震えており、尋常ではないほど揺れていた。
手からこぼれ落ちたマッチは男の落とした本の上に落ち、たちまち本は炎に包まれ込んだ。
「ゆ、夢だ、だっていま…」
本の絵が動いた。そう言おうとしたとき、
炎に包まれている本から怪しい光が漏れ出し一人でに本が開き始めた。
その中からたくさんの影が出てきて、男は声も出せないまま影に飲み込まれ消え去った。
「ギヒッ、ギヒヒヒヒヒ」
その場には誰もいないはずだが、数人の下卑た笑い声がそこに響いた。