表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毎日来る副校長が、なぜか“会計の瞬間だけ消える”話  作者: おみき
スピンオフ それぞれの理由
172/177

「綾と井上、医師としてではなく」


ドラッグストアHOPE。


店の少し外れた場所、青いコンテナ。


人の流れはある。

でも、この場所だけ少し静か。



綾は、そのコンテナが見える店内の少し離れた位置から世古を見ている。


動き。

呼吸。

立ち方。


全部。



(……まだ、無理してる)



分かる。


前より戻ってる。


でも、完全じゃない。



そこに、井上が来る。初めて。


横に並ぶ。



「……見て分かるだろ」



綾が、少しだけ驚く。



「……うん」



井上は、壁にもたれる。


視線は、世古のまま。



「アイツ、止まらねえからな」



淡々と。


事実だけ。



綾が、小さく言う。



「……知ってる」



一拍。



「……だから、怖い」



本音。



井上が、少しだけ視線を向ける。



「……だよな」



否定しない。



同じ。


分かってる側の会話。



少し沈黙。



綾が、少し迷ってから聞く。



「井上さんって」



井上が、軽く返す。



「何」



綾が、言葉を探す。



「どうして、そこまで……」



言い切れない。


でも、意味は伝わる。



井上は、少しだけ笑う。



「返せないほどでかい、借りがある」



それだけ。



説明しない。


語らない。


でも。


それで、全部分かる。



綾は、それ以上聞かない。



代わりに。


世古を見る。



“同じ理由じゃない”


でも。


“同じ方向”にいる人たち。



静かに、理解する。



別の夜。


病院の屋上。


風が、少し冷たい。



世古が、手すりにもたれている。


呼吸が、少し浅い。



(……まだだな)



分かってる。


戻ってないこと。



でも。


止まらない。



扉が開く。



「……やっぱここか」



井上。



世古は、振り向かない。



「なんで分かるの」



井上は、短く答える。



「分かる」



それだけ。



隣に立つ。



しばらく、沈黙。



でも。


この沈黙は、逃げじゃない。



井上が、ぽつりと言う。



「……無理すんな」



世古は、少しだけ笑う。



「無理してないよ」



嘘。


でも。


責めない。



井上が、少しだけ息を吐く。



「してる顔だ」



即答。



世古は、少し黙る。



逃げない。



「……止まれないんだよ」



本音。



井上は、すぐに返さない。



一拍。



「知ってる」



短い。


でも。


全部含んでる。



「だから言ってる」



少しだけ強く。



「壊れる前に、止まれ」



世古は、少しだけ笑う。



「壊れても、戻るでしょ」



井上、即答。



「戻らねえ時がある」



空気が、少しだけ張る。



でも。


ぶつからない。



世古は、視線を上げる。



「……その時は?」



井上は、迷わない。



「その前に止める」



静かに。


でも、絶対。



世古が、少しだけ笑う。



「頼もしいね」



井上は、肩をすくめる。



「借りだからな」



それだけ。



夜の風が、少しだけ強く吹く。



二人は、並んだまま。



何も足さない。


でも。


ちゃんと“守る側の関係”になっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ