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次空間転送リングの件での追加報告と、敵、野盗側の陣営に潜り込んで諜報活動をしていた雷撃機乗りと、ブロンドヘアの諜報員からの報告を受けていた。
ブロンドヘアの諜報員との無事な生還の報告を受け通話を切ったと同時に、部屋に入って来た侍女は言った。
全艦隊の出撃準備は整ったようです、と。
未だAIアンドロイドが留守番をしている俺の艦も含め、雷撃機などの修理、架装に時間がかかっている。
この星の正規艦隊の架装、換装に全振りしているからだ。
しかも、今度の敵、野盗はその数が倍以上だと、斥候からの報告が上がってから、ほぼ不眠不休で、出陣の準備に取り掛かっていた。
確かにブロンド諜報員の報告では、今まで相手していた野盗の数より、かなり違うようだった。
斥候と諜報員尾情報が符合している。
敵の数は倍、もしくは倍以上の様だった、野盗側も俺が参戦している事で思っていた以上損耗が激しくなり、しびれを切らし、いよいよ総力戦と言ったところだろう。
俺と言う傭兵が参戦しているこちら側の情報が、向こうに渡っていると考えていい。
失敗はしているが実際白鯨そのものの破壊、もしくは強奪仕掛けられている。
俺の参戦と、白鯨の失敗が想定の範囲を超えているのだろう。
だが、所詮は数に物を言わせても烏合の衆、統制の取れていない数だけの軍は、少ない軍よりその効果は期待できないはず。
命令が行渡らず、各自バラバラの行動、自分勝手な進軍となり、それはやがて足かせとなり、それが弱点となり鈍重となった敵ほど身軽な狙い撃ちが出来る。
そこで俺は、
漸減要撃作戦。
主力戦力により敵を迎え撃つ早い段階で、敵戦力をあらかじめ削り、もって弱体化した敵を殲滅する作戦。
まず、高速で俺が単身飛び込み烏合の衆の敵艦隊をかく乱、漸減し、その数を減らしたところで、主力艦隊で打撃を与えこれを殲滅する。
と、いう作戦を立案し、元首姉妹に提示した。
そしてこちらの陣容は、
守備隊として元首の二女を残した。
全軍で事に当たらなければ、数の上で限界はある。
よって、
今回は大型戦艦に元首、戦艦に三女、まだ、俺の艦たちは仕上がっていないのは前述の通り、
今回も前回同様、戦艦に乗艦、と言いたいところだが、今回は一番足の速い重巡に主砲を急造で追架装して、その艦に乗艦した。
そして、遊撃隊の弩級旗艦白鯨。
前回、幼年兵女学校での実質の作戦会議を実施した。
だが、やはり堅苦しく言うと、受けている彼女達が緊張するのでは、という、思いが有ったので授業の一環として、受けやすいように講習会という名目で、講義をした。
今回はあの白鯨には俺の対応をしてもらっていた、五人の少女達も乗っていると言う。
彼女達の、屈託のない笑顔を思い出すと、胸が締め付けられる思いになった。
そして思い出したくない、遥か昔の場面が俺の頭を去来した。
あの時、俺は・・・。
艦長。
侍女が俺を呼んだ。
我に返り、要件を聞くと、ほとんど準備が出来、出港準備よろし。
との事だった。
そうか。
と俺は、独り言にも似た返事を彼女にした。
少し怪訝な顔をして、侍女は、
お気分でも?
と、気遣ってくれた。
ありがとう、
と言って少し笑い、艦にむかって歩き出した。
成り行きとは言えはいえ、この星の傭兵としての立場は変わっていない、そのために俺は心血を注がねばならない。
俺の過去がどうあったとしても、だ。
空母中心に輪形陣を取り俺の重巡は一番前を奔り、白鯨は陣の一番後ろの離れたところに陣取らせた。
手薄な所に駆けることが出来るよう遊撃艦としてその任を全うしてくれるよう言い含めた。
彼女達は、これまで、後詰めの任務が多かったのが、ようやく訓練の成果が発揮できるとはりきっていた。
それを横目で見ながら、乗艦した。
俺の艦が出撃して、味方の輪形陣がはるか後方に小さくなってきた頃、正面に敵艦隊群が散見しだした。
敵影は今までと違うようだった。
その質も違うように思える。
正規軍に近い艦体が混じっている。
だが、揃えている艦隊数もそうだが、今まではその質、鹵獲した敵、味方の半分壊れているような寄せ集め艦がその大半を占めていた野盗共には変わりはなかった。
野盗側はありったけの艦を寄せ集めたと言っていいほどの数の様だった。
それゆえにこちら側の陣容で何とか対処出来たとも言っていい。
だが今回は違う、正規軍が混じっている。
この事は情報に入っていたが、未確認の域を出ていなかった。
が、現実は混じっている事に変わりは無かった。
重巡のエンジンが吠え、
煌めくガラス細工の粉をまぶしたような、敵艦の粒がその全容を現してきた。
だが、正規軍が混じっているとは言え、陣形と呼ぶにはあまりに拙い、所々空きがあり、まばらな密集隊形を取っている個所もあり、不自然にばらけていたり、やはり烏合の衆は変わらずと言ったところだった。
全天モニターに映る敵艦はまばらではあるが、おおおよそ半分は埋め尽くしている。
迷わず一番密集している艦影のあるところに飛び込んだ。
この距離に敵艦が居ても未だ、一発も攻撃が無いのは、油断しているからなのか、ただの愚鈍なのか。
所詮は野盗。
正規軍もどきが居ても、野盗は野盗。
主砲が咆哮した。
同時に通常弾も弾幕を張った。
それらの光跡が、敵艦の体を打ち抜き、初弾でその艦隊の塊は沈んだ。
ここでようやく、周りの敵艦から、絡まるような光跡がこの艦にめがけて走って来た。
が、高速で滑空している相対的に小さな艦である重巡。
この当てるのは、至難の業だ。
自動照準もあるが、敵の輪の中にはいてしまえば、同士討ちも計算の内だ。
だから、単身この身のこなしの優れた小さな艦にした。
戦艦や、まして大型戦艦では取り回しにもたついてしまう。
漸減するには、
暴れるだけ暴れるにはこの艦がちょうどいい、架装も施してあるから火力も十分だ。
案の定、敵艦隊は同士討ちを警戒して、迎撃の手を緩めだした。
艦載機が無い事も幸いしている、艦隊戦であればこちらが有利である。
野盗には、こちらの戦力にあるような、空母はほとんど無い。
そもそもパイロットが揃わないし、無人機を飛ばす程、武器に余裕はない。
それだけの装備、火力があれば野盗ではなく、傭兵に鞍替えするだろう。
野盗は、敵を殲滅させるのが目的ではなく、財産を盗るのが目的だ。
また、野盗の一団を沈めた。
全天モニターに映っている敵艦の数は、俺がその真ん中を突っ切る度に、その占有率のパーセンテージを低下させていった。
そして、その野盗の塊は少しづつ散開しだして、退避行動に映り出したのが、見て取れた。
それら野盗は、味方主力艦隊に向けて舵を切り出した。
それを確認すると、この艦も野盗を追い縋るようにして挟撃行動に出た。
最近接している惑星を利用し天体重力推進を使って、野盗の後端に取り付いた。
正面にはあらかじめ輪形陣で待ち構えている味方艦隊がいる、俺の艦で、敵戦力を削いでいるから挟撃もたやすいはず。
味方艦の主砲の光跡がかすめていく。
こちらも敵艦の最後尾の殿から少しづつ、戦艦、巡洋艦を沈めて削っていった。
味方の艦影が認識できる距離まで近づいてきたとき、左舷からの重力振発生の警報が鳴り響いた。
何者かがデスドライブオフして来る警報。
数隻の艦を従え、その艦は姿を現し、同時にこの艦の全天モニターに画像を割って入って来た。
音声と共にその声と姿は忘れる事の無いそいつは、話し出した。
このへし折られた鼻の事は忘れてねえだろうな。
鼻を中心に×状に包帯を巻いているそいつは言った。
蛇蝎の如く嫌われている、忘れたくても忘れられない、
その声が画像と共に艦内に響き渡った。
面倒くさい奴がやってきやがった。
そう俺は心の中で歯ぎしりしながら、つぶやいた。
あいつが。
人形遣い、猛獣使いのあいつが。
拙作にお付き合い下さり、また、貴重なお時間をもって目を通してくださいます皆様に最大限の感謝の意を申し上げます。誠にありがとうございます。




