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第八十六話 今夜の地酒は南部杜氏で決まりよ!

『第八十六話 今夜の地酒は南部杜氏で決まりよ!』

約二千二百文字です。

 二日後、茨城国際第二空港からヘリコプターに乗り継いだ徳田理事長一行は、昼間水戸保養所に向かった。

 

 昼間水戸保養所二号棟の斉藤由鶴司令がヘリと交信して二号棟三番ポートを案内した。ヘリのパイロットは指示を了解した。ヘリは大洗上空を大きく迂回して飛行している。


 秘書の山下瑞稀(みずき)がチーフディレクターの御坂恵子に飛行状況を伝えた。


「御坂さん、もうすぐ到着します」

「山下さん、ありがとうございます。

ーー 二日の出張、あっという間でしたわね」


「そうね。時間って遠ざかってしまえば、すべてが過去の出来事」

 山下は安堵感を漂わせながら言った。


「思いだけが過去に残っているわ・・・・・・ 」


 御坂は窓の外に広がる太平洋の豪快な(うね)りを眺めながら山下に言う。


「山下さん、あと五分くらいで到着します」

パイロットが伝えた。


 山下は伝言ゲームのように徳田理事長と昼間秋生会長、昼間春雄に伝え、この出張のファイナルアプローチが見えた。

 天候は良く視界を遮る物がないまま、水戸保養所のツインビルが視野に入る。


 赤いヘリコプターは着陸体制を維持したまま第三ポートにゆっくりと着陸した。


 ヘリは第三ポート地下に収納され天井が不快な響きを残しながら両側から閉じた。

壁面のライトが灯り、真っ暗な地下ポートの赤いヘリコプターが鮮やか姿を見せている。

 ヘリコプターパイロットが先導して搭乗者を誘導した。


 斉藤由鶴司令が地下通路のセキュリティ扉を解除する。

乾いた金属音が地下に響く。


[カチッ]


 御坂恵子は二号棟スタッフに、パイロットとキャビンアテンダントを客室に案内するように指示を与えた。

徳田理事長、山下瑞稀、昼間春雄、昼間秋生会長は、出張あとの事務作業を昼間会長の十五階の部屋ですることになった。

 チーフの御坂恵子も会長秘書して呼ばれている。


 御坂は昼間夕子の携帯に連絡を入れ雑務整理後に十三階に合流すると伝えた。



 

 夢乃真夏は、昼間春雄に一目惚れしていた。昼間夕子は女子高生の冗談と思い聞き流していたのだが・・・・・・。

 世の中が理屈や計算通りにならないことを夕子が一番知っている。


 現世も過去も未来もーー ()()()()()()の上に平行に存在している。

 アカシックレコードを見たことがない夕子でも、タイムスリップ経験者はそう考えて時間の矛盾に蓋をした。


「真夏ちゃん、もしもだよ、もしもそうなれば、真夏ちゃんが伯父さんのお嫁さんかな。

ーー 先生が姪になるわね」


「そうね先生、複雑だけど、この恋に障害は無いわ。

ーー 片思い以外に」


「世の中は、分からないことだらけなのよ。何も不思議じゃないわよ」


 昼間夕子と真夏は筑波山の奥に見える富士箱根の噴煙が風に流されているのを眺めていた。


「そう言えば、真夏ちゃん、春雄伯父さんがさっき保養所に戻ったそうよ」


「・・・・・・ 」


 快活な性格の真夏は夕子の言葉に動揺して押し黙る。


 夕子は真夏のナイーブな一面に気付きそっとして置くことにした。



 出張の雑務整理を終えた徳田理事長は、昼間春雄と正式な契約を交わし徳田理事長が経営する仙台神聖学園の理事に内定した。春雄は仙台と新潟を天秤に掛け近いエリアを希望し徳田理事長が承認した。




     ⬜︎⬜︎⬜︎




 その日の午後、ヒメは携帯ニュースを見て真夏と会話をしている。

「ヒメ兄は、この事件は偶々(たまたま)発生じゃないと言うのね」


「真夏だって、ほら、おかしいと思わないか? 」

「鈴木と言う名前は世の中に沢山あるわよ。そんなの単なる偶然よ」


「きっと裏にはシンジケートが暗躍していると思う」

「はいはい、ヒメ探偵さま、そうして置きましょう」


 昼間夕子が通りかかり真夏に声かける。

「先生、聞いて、ヒメ探偵がシンジケートとか言うのよ」

「はあはあ、ヒメ、詳しく先生に説明してみなさい」


「ニュースでは、鈴木さんの家だけが被害に遭っていると・・・・・・ 」

「ヒメ、それは、何の被害かな」


「えええと、報道では玄関の表札とか」


 夕子は両腕を組みながら呟く。


「鈴木さんの表札かーー 確かに需要が多そうだな」

「そうでしょう。先生ーー きっと表札シンジケートがあるのかも。

ーー 次は、斉藤、田中じゃないかな」


 真夏が携帯ニュースを見て言った。


「田中さんや斉藤さんの被害があったわよ」


 ヒメは鼻高々に真夏を見て胸を張り自慢の素振りを見せた。


「しかし誰が何の目的でしょうか?物を捌くルートが必要になるわよ」

「先生、インターネットオークションじゃないですか」


「それだとバレるでしょう」

「取引相手は匿名を指定出来るので、相手に住所が伝わる心配がないそうです」


「ヒメ、何でそんなこと知っているのだ」

「以前、欲しい物を競り落としたことがあって・・・・・・ 」


「そうか」

「でも先生、オークションってサクラの競合が値を吊り上げる場合があるので、良いことばかりじゃないですよ」


「何でも未知との遭遇は注意しないといけないな」


 夕子は二人に言って居間に戻って行った。




     ⬜︎⬜︎⬜︎




 (みかど)がヒメの前に現れ誘う。


「生まれ変わりの子よ、温泉どうじゃ」


 ヒメは帝に誘われ四階の男湯に行く。


「酒田さんも、一緒ですか」

「ヒメ、帝さまに誘われて・・・・・・」


 帝は温泉に行く時は、必ず誰かを同伴していた。

 遅れて安甲次郎と一郎の双子兄弟が合流した。





     ⬜︎⬜︎⬜︎




 夕子は地酒マニアの星乃紫と夜のお酒を相談していた。


「昨日が会津なら、今日は岩手の南部杜氏がおすすめね」

「紫の太鼓判で()()()()()()()で決まりね」


 朝霧美夏が遅れて到着して満面の笑みを(たたえ)えている紫に言う。


「ねえええええーー 何かいいことあったの」


「美夏、今夜の地酒は南部杜氏で決まりよ」

「なるほどね」

 『第八十六話 今夜の地酒は南部杜氏で決まりよ!』


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三日月未来(みかづきみらい)

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