第八十七話 悠長に待ちましょう!
第八十七話 悠長に待ちましょう!
約二千百文字です。
斉藤由鶴司令が十三階の夕子の部屋を訪問した。由鶴は鮮やかな紺碧色のスカートスーツにハイヒールだった。
斉藤の訪問目的は未来で見た出来事についてだった。
斉藤は作り笑いを浮かべて、富士箱根の現状を夕子に説明し始めた。
「と言う訳で、夕子さま。思ったより早い時期に富士保養所に戻れるかも知れません」
「でも斉藤さん、戻ったところで保養所が大丈夫か分からないでしょう。
ーー 私は周辺の安全を確認したいと思うわ」
「じゃあ、夕子さまのご意見を踏まえて会長と御坂さんに相談してみますね」
「斉藤さん時間はあるわ。無理しないでね」
斉藤は夕子に頭を軽く下げて会長室に向かいながら御坂恵子の携帯を呼び出した。
「御坂さん会長にお話があります」
「分かりました。ラウンジでお待ち下さい」
斉藤は十三階のラウンジの間の扉をノックした。中から御坂恵子が扉を開け顔を出す。
「どうぞ、中へ」
「ありがとうございます。御坂さん」
昼間秋生会長と御坂恵子の前のソファーに、斉藤由鶴が腰掛けた。
「ーー じゃあ、斉藤さんの考えでは、水戸保養所から富士保養所に戻れるんだね」
「但し、夕子さまは周辺のインフラをご心配されていて、まだまだ時期尚早かと懸念されております」
昼間秋生は御坂に耳打ちをした。
「分かりました会長。直ちにお調べ致します」
御坂は会長に頭を下げてラウンジから廊下に出て行った。
「と言うことで斉藤さん、御坂さんからの連絡待ちになりそうですが、宜しいですか」
「ええ、私は全然大丈夫です」
「じゃあ、御坂さんからの連絡をお待ちください」
斉藤がラウンジを出て行くと廊下で御坂と出会う。御坂は携帯をハンドバッグにしまいながら斉藤に斟酌しながら伝えた。
「斉藤さん、今、本社の調査部に安全確認の依頼をしましたから、もうしばらくお待ちいただけますか」
「じゃあ御坂さん、その時は私にも教えて頂けますか」
御坂と斉藤は十三階で別れ、御坂は昼間夕子の部屋に向かった。
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女子高生の夢乃真夏は、夕子の養女になったかのように夕子から離れない。真夏は夕子と一緒にいることが春雄との距離が縮まるかと考えた。
「夕子先生、真夏と二階のお店にお付き合いして頂けませんか」
「私はいいけど、ヒメは」
「ヒメ兄はニュースに夢中ですよ」
ヒメが真夏の背後から顔を出す。
「真夏、僕がどうしたって」
「ヒメ兄は火山ニュースに夢中でしょう」
「ちょっと興味あるだけだよ」
ヒメは真夏に言ったあと夕子の顔を見て、疑問を払拭しようと試みた。
「ところで先生、東富士見町にはいつ戻れますか」
「そうだな、まだ上からの連絡が無いから分からん」
紺色のスカートスーツ姿の御坂恵子がハイヒールの靴音を響かせ軽快な足取りで夕子たちの前に現れた。
「夕子さま、ちょっとお話がございます」
「難しいお話ですか? 」
「いいえ、今のところは問題ないかと」
夕子は天真爛漫な真夏を見ながら御坂に言った。
「今ね、真夏ちゃんにお誘いを受けたところで、良かったら二階のカフェで如何ですか。御坂さん」
「お邪魔じゃ無ければご一緒致します」
「真夏ちゃんも、ヒメもいいわね。ーー じゃあ行こう」
夕子が立ち上がると同じ文芸部の白石陽子と日向黒子が夕子のシャツの袖を引く。
「そうか。お前らも一緒だな」
夕子の同僚の星乃紫と朝霧美夏が示し合わせたように夕子の前に現れ八人になった。
「じゃあみんな、二階のあとは八階の温泉で汗を流そう!
ーー ヒメは四階の男湯よ」
夕子に言われたヒメは苦笑いしながら言った。
「先生、間違えても女湯はありませんから」
昼間夕子たち八人は二階のカフェに入り二つのテーブルに分かれた。
昼間夕子、御坂恵子、夢乃真夏、夢乃神姫[ヒメ]が奥のテーブルになった。
残りの四人は隣のテーブルを選ぶ。
「ーー それでさっきの続きだけど、今、本社に調査依頼しています。
ーー 早ければ明日には状況が分かるかと」
「吉凶禍福のことね」
「はい、どちらかになるかと」
「先生、それどう言う意味なの」
「真夏ちゃん、幸運と不運を著す言葉になるわ」
ヒメが御坂に尋ねた。
「御坂さん、早ければ明日には分かるんですね」
「夢乃君、確定じゃないわ。富士保養所の安全確認と周辺の交通機関次第ね。
ーー 多分今頃は・・・・・・。
ーー 昼間の調査部がドローンでデータを集めて解析していると思うの」
「そうか。ドローンと言う調査手段がありましたね」
「それだけじゃ駄目よ。ーー 衛星画像のサーモグラフィーから火山の周辺の状況判断も加わるわ」
「ヒメ兄ーー また探偵ごっこ。御坂さんたちは、お仕事よ」
「真夏、ごめん、ごめん」
ヒメは御坂に謝って四階の男湯に向かった。
「ヒメも温泉に向かったから、私たちも女湯に参りましょうか」
昼間夕子が立ち上がり他の者も立ち上がり続く。
カフェの出入り口で三日月姫姉妹と未来に出会う。
「夕子、今から何処ぞへ行くのじゃ」
「三日月姫、八階の温泉でございます」
従者の未来がはらはらしながら夕子を見ていた。未来の妹の零は姉に寄り添っている。
「未来、わらわも温泉じゃ」
「三日月姫さま、直ちに」
夕子は形式の支払いを昼間財閥のカードで済ませカフェをあとにした。
翌日、御坂は携帯で斉藤に連絡を伝えた。
「斉藤さん、まだみたい。解析途中ですが良いデータが揃いませんでした。
ーー もう少しあとじゃないかしら」
御坂は斉藤司令に伝えたあと、昼間秋生会長と夕子に伝えた。
「御坂さん、このままだと紅葉の季節になりそうね」
「夕子さま、致し方ございません」
「そうね、悠長に待ちましょう」
水戸保養所の窓に午前の暖かな日差しが降り注いでいた。
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三日月未来




