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第八十五話 会津の地酒が楽しみじゃ、夕子

『第八十五話 会津の地酒が楽しみじゃ、夕子』

約二千三百文字になりました。

 昼間春雄は徳田理事長のお誘いを受け、新潟市と仙台市の学園都市予定地の視察に出かけた。秘書の山下瑞稀と昼間秋生会長が同行している。


 昼間功社長は水戸保養所に残り、妻の輝子、娘の夕子と一緒に家族団欒の時間を過ごしている。そのため、秋生会長が功に代わって徳田理事長の視察に春雄と一緒に随伴した。


 三日月姫は妹や(みかど)と一緒に現世(うつしよ)の時代を満喫していた。従者の未来と、その妹の零も一緒だ。


 その日の午後ーー 白石式子と娘の陽子が日向黒子と夢乃真夏、ヒメと一緒に保養所二号棟二階のショッピングアーケードでウインドショッピングをして時間を潰していた。


 三日月姫たちを真夏が誘ったが従者の未来が保留の返事を返している。


「真夏、向こうも色々あるから、まあ、今日一日くらいは・・・・・・ 」

「ヒメ兄はそう言うけど、あの未来が夕子先生の前世には見えないわ」


「未来さんは仕事をしているだけじゃないか。真夏、わかって上げて」

「ヒメ兄は美女には特別優しいんだからーー 」


 夢乃真夏には嗜虐心(しぎゃくしん)はなく、ただ単純に素直なだけだった。夢乃神姫[ヒメ]も、忌諱(きき)な感情を持つような男じゃなかった。夢乃兄妹は兄も妹も単純な遺伝子を親と前世から引き継いでいる。


 二階のアーケードの隅にあるカフェをヒメが見つけ、ヒメたち五人はティータイムすること決めた。


「ねえ、黒子、私たちいつまで、保養所にいるのかしら」

「そうね、夕子先生の話では、安全確認できるまでとかーー 陽子はどう思う」


「東富士見町も、安甲神社、神聖学園も問題ないけど、

ーー 交通機関が問題なら仕方ないわ。

ーー そう言えば安甲神主兄弟と巫女の花園舞さん、

ーー 誘わなかったわね」


「陽子、もうひとり忘れているわ」

「ーー ええええええ、誰かな、黒子」


「ええええええ、陰薄いのかなーー ほら(みかど)の前世持つ男で、ええと・・・・・・ 」


「黒子先輩、酒田さんじゃないですか・・・・・・ 」

「ヒメありがとう、どうも歳かなーー 最近物忘れ激しくて」


「先輩! そんな齢じゃないでしょう」


 ヒメたちが噂をしていたらーー 巫女の花園舞と安甲兄弟がカフェに入って来た。遅れて酒田昇も到着した。

 大人たちは陽子の母のテーブルに行き挨拶している。


「こんにちは、白石さんーー ここにいたのですね」

「あら、神主さん、みなさんまで」


「ええちょっと、喉が渇いて」

酒田が白石式子に言った。


「酒田さんも、今回の富士箱根事件は想定外でしたね」

「ええ、会社の方に事情を説明してありますので、大丈夫ですが。

ーー それより、式子さんのお仕事は大丈夫ですか」


「私は、臨時ですけど、とりあえず大丈夫みたい」

「そうですか。良かった。僕でお役に立てれば、編集長に伝えておきますが」


「大丈夫ですーー お気遣いをありがとうございます」


 酒田は式子に会釈して安甲兄弟のテーブルに移動した。


 保養所の宿泊客は、カフェを無料で使用出来ると御坂恵子チーフディレクターから伝えられている。


 水戸保養所二号棟は、富士保養所のバックアップとした危機管理専用棟で、一般社員向けの一号棟とは違う。

今は、昼間財閥関係者が使用している。


 男たちはヒメを誘い四階の温泉フロアに行く。式子と女子高生たちも八階の温泉に行くことになった。


 すれ違うように、昼間夕子が三日月姫姉妹と未来、零を連れて保養所二号棟二階の婦人服売り場を訪問した。


 三日月姫の気まぐれな性格は、夏山の天気のように変わる。従者の未来は、その性格を踏まえて姫姉妹に対応した。


 三日月姫姉妹の婦人肌着を数枚、未来が店の買い物籠に入れた。妹の零と未来も同じ物を入れて夕子に渡す。


 三日月姫は気まぐれでも寛容なお姫様だ。

 (みかど)は婦人肌売り場の前で姫たちと別れて四階の温泉に行くと言ってエレベーターに向かった。帝も保養所に長期滞在でエレベーターを使いこなしている。


「夕子、帝も温泉じゃあ」


「姫さま、温泉仕度は未来がご用意してござります」

未来が言った。


「三日月姫、未来さんが準備されていると言う事で、

ーー お荷物はスタッフにお任せして私たちも温泉に行きましょう」

「夕子が行くなら、わらわも行くのじゃがーー 未来はどうされる」


「未来は姫さまの従者でござりまする」

「左様かーー じゃ未来もわらわと一緒じゃ、零も一緒じゃよ」


「わたしは・・・・・・ 」

「妹殿は、いつもわらわと一緒じゃから、なにも言わなくても一緒じゃよ」


 珍しく三日月姫が口元に赤い扇子を当て小さく笑った。

 三日月姫の双子の妹は、そんな姉の姿を見て照れて赤ら顔になって微笑んだ。



 昼間夕子は形式だけの会計を済ませ、温泉へのエレベーターの前で御坂恵子がいないことに気付き携帯に連絡を入れる。


「夕子ですけどーー 御坂さん今どこなの」

「ーー 夕子さまですか? ちょっと聞き取りにくいですが・・・・・・ 」


「大丈夫よ、聞こえるわ。御坂さん何処ですか? 」

「今、新潟国際第二空港に会長とご一緒しています。

ーー 急な出張で言付けが遅れて申し訳ございません。

ーー レストラン部の吉田松江に留守中の接客をーー さっき伝えました。

ーー 吉田の携帯は、◯◯九・・・・・・。 です」


「分かったわ。春雄伯父さんと徳田理事長もそちらね」

「ええ、なるべく早く戻ると言っています」


「大丈夫よ。水戸保養所で座布団を温めておくわね」

「夕子さま、申し訳ございません」


「あなたが悪いわけじゃないわ。気まぐれな男たちね」


 夕子は携帯を切り、三日月姫をみて微笑んで言った。


「姫、今宵の献立は鯛のお刺身と会津磐梯山の地酒でございます」

「会津の地酒が楽しみじゃ、夕子」


 遅れて、星乃紫と朝霧美夏が三日月姫に合流する。


「三日月姫さま、福島県の地酒は評判が高いでございます」

「福島県って何処か、紫」


「会津のある、お国でございます」

「わらわも会津に行きたいのう、紫・・・・・・ 」

 『第八十五話 会津の地酒が楽しみじゃ、夕子』

約二千三百文字になりました。

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三日月未来(みかづきみらい)

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