第八十四話 春雄と昼間財閥にメリットがありますか?
『第八十四話 春雄と昼間財閥にメリットがありますか? 』
約二千二百文字です。
昼間春雄前社長は、不可解な運命の悪戯を考えないように努力していた。
昼間水戸保養所の温泉に浸かり、現世の白い湯煙に身体を預けた。
温泉の硫黄臭が鼻腔をくすぐり、むず痒い。
湯気の中から酒田昇と帝の姿が見え隠れしている。
湯船の奥には、父の秋生会長と弟の功社長もいた。
タイムスリップあとの春雄の身体は肉体年齢が釣り合わず離れていた。
春雄は帝に会釈して、秋生と功に言って脱衣所に戻った。
あとから功が春雄に続く。
功は、男湯の売店で購入したコーヒー牛乳を春雄に渡した。
春雄は、左手を腰に置き右手で牛乳瓶を持ち、音を立てながら飲んでいる。
[ゴクゴク]
「春雄兄さんの牛乳スタイル、昔から変わらないね」
「功、左手、ぶらぶらしたら変だろう」
「そう言われて見ればそうだ」
二人は全裸の腰に白いタオルを巻いているだけだった。
「春雄兄さん、その腕の痣、昔からあった」
「功ーー 痣って? 」
「ほら、ここ」
功は大鏡の前で功に教えていた。
「痣、初めて知ったよ」
兄弟は水戸保養所二号棟の男湯を出て、エレベーターホールに向かった。
十三階の夕子たちは御坂恵子チーフディレクターの案内で、二階にある婦人服売り場に寄る。
女子生徒たちが夕子に肌着の着替えを打診していた。
会社が準備していた着替えには生徒たちが希望する肌着が含まれていない。
夢乃真夏、白石陽子、日向黒子と白石式子が、小さな売り場で品物を選んでいた。
「みんな、決まったら先生に渡して、陽子さんのお母さんの式子さんもよ」
「夕子先生、娘も私もお世話になり、ご迷惑をお掛けしています」
「いいのよ、ここは祖父の施設ですから気にせずに」
星乃紫と朝霧美夏も遅れて婦人服売り場に到着した。
「夕子、三日月姫姉妹、未来、黒子のも必要ね」
「んーー それは、前世の未来さんが、なんと言うか? 」
「夕子に任せるわ」
春雄の歓迎会のあとで、夕子は未来に相談することに決めていた。
若草色のワンピースの未来が夕子の前にいた。
「未来は、お酒強いわね」
「・・・・・・ 」
「夕子の方よ」
「ところで未来、ワンピースの着替え以外に肌着が必要と思うけど、未来はどうしたい」
「夕子、私は姫の従者でござりまする。三日月姫が大切」
「そうね、でも、必要じゃない」
「・・・・・・ 」
未来の反応は鈍くて夕子の中に迷いが生まれた。
「夕子、未来となに話しているのじゃ」
未来が慌てて、藤色のワンピース姿の三日月姫を遮る。
ほろ酔い気分の三日月姫の口元から地酒の臭いが漂っていた。
ピンク色のミニワンピース夢乃真夏も白ワインでほろ酔い気分で頬が紅潮している。
「夕子先生、今日はお買い物ありがとうございます」
白石親子と日向黒子も真夏の後ろで夕子にお辞儀をしている。
それを見ていた三日月姫が真夏に尋ねた。
「真夏、お買い物ってなんじゃ」
「お姫様、肌着です」
真夏の乱暴な言葉遣いに従者の未来が真夏を睨んでいる。
「まあ、未来、怒らんでも良いが」
三日月姫の妹が真夏に聞いた。
「真夏、わらわによかったら、品物、見せてくれるか」
真夏は、買い物袋からスリップと小物を取り出して姫の双子の妹に見せた。
陽子、黒子は、三日月姫に見せて感想を聞いている。
「三日月姫、お気に入りましたら夕子に案内をさせます」
三日月姫は未来の言葉に首を縦に振らなかった。
「わらわと夕子が決めることじゃあ」
三日月姫は、そう言って、宴会のテーブルに戻った。
「夕子先生、今夜の皓月も素敵ね」
「真夏ちゃんの天使の輪も輝いているわ」
「先生のお父さんのお兄さんって、先生くらいに見えるけど
ーー 優しそうで素敵ね」
「真夏ちゃん、春雄伯父さんは、事情あって独身なのよ」
「えええ、そうなんですか。じゃあ、私、プロポーズしちゃおうかしら」
「真夏ちゃん、おとなを揶揄うものじゃないわ」
ビールグラス持った星乃紫だった。
「そうよ。男は、狼になるのよ」
朝霧美夏が真夏に言った。
「朝霧先生、それって、昔の懐メロの歌詞に似ているけど」
「真夏ちゃん、まさか知っていた? 」
朝霧の手にビールジョキが握られている。
保養所のスタッフが空いた食器を下げていた。
御坂恵子がカラオケ装置の前で言った。
「徳田理事長秘書の山下瑞稀さんが、バイオリン演奏を披露します」
山下は拍手が鳴り止み、ゆっくりと立ち上がりバイオリン協奏曲の曲名を発表した。
三日月姫は、山下瑞稀が醸し出す音色に感動している。
妹と未来も聞き入っていた。
巫女の花園舞は安甲神主兄弟の傍でお酌をしている。
徳田理事長は、昼間功社長と春雄前社長と一緒にビジネス談義をしていた。
「春雄さん、私の会社で新しいプロジェクトが動きだすの」
「凄いですね」
「それでね、新潟市と仙台市を視察して来たわ」
「理事長、それってなんでしょうか」
「私が未来で見て来たことの準備よ」
「なんでしょうか? 」
「まだ秘密だけど言うわ。昼間さんはビジネスパートナーだから」
「はい」
「私は、神聖学園の理事長だけど、神聖学園都市にするわ」
「凄いですね」
「新潟と仙台が続くことを知っているわ」
「分かりましたが・・・・・・ 」
春雄は、徳田理事長が何を言いたいか分からなかった。
「そこで、前社長の春雄さんに、是非手伝ってもらいたいの」
「お手伝いなら、今、時間ありますし・・・・・・ 」
「春雄さん、ごめん、言い方が悪かったわね。
ーー 学園都市に協力してもらいたいの徳田の重役として」
徳田理事長は、昼間功社長の前で徳田春雄をヘッドハンティングしていた。
流石に秋生会長も驚きながら徳田理事長に言った。
「春雄と昼間財閥にメリットがありますか? 」
「今は、春雄さんだけね。でも、そのうちわかるわ」
徳田理事長は、笑みを浮かべて昼間春雄を見ていた。
『第八十四話 春雄と昼間財閥にメリットがありますか? 』
約二千二百文字です。
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三日月未来




