第五十二話 帝の側室のお子たち
夢乃真夏、兄の神姫、白石陽子は放心状態になって三日月姫を見ていた。
さすがに拙いと判断した未来が三人を遠ざける。
「未来、その三人は私の生徒で、文芸部の部員なの。
ーー だから心配は無いわ」
未来は、生徒たちが手にしている“新説かぐや姫 副読本”を手に取り話し始めた。
昼間夕子が二人いるように見える。
若草色のワンピースの未来が夕子を見た。
「夕子、私が字体の説明するわ」
「未来、よろしくお願いします」
未来は三人の生徒と日向黒子を見て言った。
「竹取のかぐや姫は、帝の依頼を受け私が書いた御伽噺なの。
ーー そして、今、手にしている副読本は続編のような物語よ。
ーー 大和言葉の読み方は、私が説明するわ」
昼間夕子、星乃紫、朝霧美夏も生徒たちと一緒に聞いた。
一度では、無理に思えた教師たちは、未来にお願いをした。
「夕子、わかったわ。私が夕子に教えるから・・・・・・。
ーー 夕子が帝のお子たちの生まれ変わりに教えると良いでござりまする」
夕日が、学園のグランドを染め始めた頃、三人の教師は、神聖学園前駅で生徒たちと別れた。
三日月姫、三日月妹、未来の三人と日向黒子は、通勤電車で、東富士見町駅で下車した。
三日月姉妹と未来は、目を丸くして電車に乗り、電車から降りた。
「夕子、あの乗り物は、なんと呼ぶのじゃ」
藤色のワンピースの三日月姫に夕子が答える。
「電車です」
「電車・・・・・・・」
前世の未来が呟く。
水色のワンピースの三日月妹も夕子を見ていた。
東富士見町駅から、東富士見町スーパーマーケットに一同が寄ると、入り口付近で酒田昇が手を振っている。
「昼間先生、来られると思って、お待ちしました」
「酒田さん、そう言う偶然、ちょっとヤバくない」
酒田は、頭を掻き気まずそうになった。
「昼間先生、酒田さんを勘弁して上げてくださいね」
「星乃先生は、酒田さんには甘いわね。
ーー 男は、甘やかしては駄目よ」
朝霧美夏と未来が、その様子を見て笑っている。
日向黒子は、酒田に対して露骨な呆れ顔をしていた。
昼間夕子たちは、いつもの晩酌の買い物を済ませマンションに向かうとした時だった。
三日月姫が未来に耳打ちしている。
「夕子、帰る前に姫さまに食べるものをご用意できるか」
未来は夕子を見ながら姫の代弁をする。
「わかったわ、未来、ちょっとだけ寄りましょう。
ーー 星乃先生、朝霧先生、前に寄った喫茶店覚えてる」
「昼間先生、プレリュードね」
朝霧が言った。
「そう、そこに寄ってサンドイッチを注文しましょう」
「夕子、サンドイッチってなんじゃ」
「三日月姫、美味しい食べ物です」
「夕子、美味しいのか」
三日月姫妹と未来も興味深い顔で夕子を見た。
スーパーマーケットの一階近くにあるプレリュードと言う喫茶店に寄り軽食を注文した。
三日月姫と妹、未来が、サンドイッチをじっと見つめている。
「三日月姫、美味しいから食べてください」
未来が、夕子を制して、お毒味をした。
「姫さま、美味しいでござりまする」
「左様か、未来、じゃ皆でいただきましょう」
三日月姫の言葉を皮切りに一同は軽食を済ませた。
酒田が、喫茶店の伝票を持ち支払いをした。
「酒田さん、ごちそうさま」
日向黒子、酒田に微笑んだ。
酒田は、汚名挽回という感じで黒子を見て胸を張っている。
昼間、星乃、朝霧は、笑いを堪えて、酒田にお礼をいった。
喫茶店を出て昼間夕子のマンションに戻ると、黄色のワンピースの零が夕子たちを出迎えた。
零は、前世の姉の未来に寄り添い、夕子を見た。
「零、お土産よ、はい、これ」
夕子は、テイクアウトしたサンドイッチを零に渡した。
未来が零に言う。
「零、サンドイッチよ」
「え、なんじゃかな」
「零、美味しいのじゃ」
零は姉未来の言葉に笑顔を浮かべた。
「零、今日は、帰りが遅くなってごめんなさい」
夕子が零に謝る。
「零、わらわの都合で遅くなったのじゃ。
ーー 許したもれじゃ」
「三日月姫さま、畏れ多いお言葉、勿体ない限りでござります」
前世の未来が慌てて三日月姫に言った。
晩酌という名の飲み会を終えた翌朝、昼間、朝霧、星乃の三人は自分たちの前世の三人を連れて、神聖学園に向かった。
零は、安甲の神主の神社に行くため途中で別れる。
「星乃先生、朝霧先生、姫たちの昼食もよろしくね」
「わかったわ。昼間先生、今日はお弁当を全員分注文しておくわね」
朝霧だった。
「じゃあ、今日も交代で、よろしくお願いします。
ーー そうそう、昼休みに屋上で待ち合わせしない」
「昼間先生、そうしましょう」
星乃が昼間に言った。
昼休みが来て、昼間、朝霧、星乃の三人と前世の未来と三日月姫が学園の屋上で昼食を取った。
「三日月姫、ここからの眺め、素敵でしょう」
星乃が自分の前世の三日月姫に言った。
三日月姫の真っ白い肌に晩夏の日差しが降り注いでいた。
夕子が日傘を出して三日月姫に陰を作る。
未来が夕子の手から日傘を取り姫を護った。
未来は自分の役目に忠実だった。
「夕子、わらわは満足じゃ。
ーー あとで、帝のお子たちの生まれ変わりに会えるといい」
「三日月姫さま、あの子らは、帝の側室のお子たちでござりますが」
「未来、側室のお子たちでも、帝の血を分けたお子の生まれ変わりじゃ」
「姫さま、申し訳ござりません」
三日月姫は従者未来を見て言った。
「そろそろ、部室に如何じゃな」
「三日月姫、参りましょう」
「夕子、世話になるのう」
朝霧先生は三日月妹と一緒だ。
星乃先生と三日月姫も一緒だ。
昼間と未来も一緒に行動していた。
文芸部部室に到着すると、帝の側室のお子たちが出迎えた。
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三日月未来




