第二十六話 夢乃真夏との約束
占い部顧問の三日月の姉である星乃紫が話を続ける。
「それはね、簡単なことよ」
「星乃ね、勿体ぶらないでー」
三日月の妹である朝霧美夏が口を尖らせる。
「それはね、異性間転生よ」
「ええ、異性間ですか」
夕子が驚く。
「ええ、よくあることよ。
ーー 直近の前世が異性の場合は強く出るわね。
ーー たとえば、女なのに男っぽい性格だったり
ーー あるいは、男なのに女っぽい性格だったりね」
「なるほど、じゃあわたしの直近の前世は男ね」
「夕子の直近は男ね」
「と言うことは、真夏ちゃんが帝の可能性も浮上しそうね」
「そうなるわ」
「だけど、ヒメは何で宮廷の夢を見るのかしら」
朝霧が遮る。
「そこに、この問題のミステリーがあるかもしれない」
夕子がビールを手酌している。
「夕子、また、御伽噺の続きを書いて見れば」
「朝霧、いいかもね」
三人会議は堂々巡りを繰り返してエンドレスになっている。
「それもいいけど、次の週末、真夏ちゃんを誘って神社に行きませんか」
「夕子は、直球が好きね」
「じゃあ、明日、部室で聞いてみるわ」
「わたしは占い部あるから、明日は無理だけど週末ならいいわよ」
「じゃあ、星乃は決まりね。
ーー 朝霧、どうする」
「わたしも大丈夫よ」
三人の飲み会は延々と続き、紫と美夏の二人は夕子の部屋に泊まった。
翌日の朝、二人は待ち合わせを決めて、それぞれの自室に一旦戻って着替えることにした。
「昼間先生、お待たせ」
朝霧美夏だった。遅れて星乃紫が現れる。
「じゃあ、先生たち、登校ね」
前世の宿縁の契りは強い。
東富士見町駅から神聖学園前まではすぐの距離だ。
改札を抜けると背後から生徒たちが挨拶している。
「おはようございます」
「あ、おはよう」
「先生たち、なんかお酒臭くないですか」
「そうか、真夏ちゃん、昨晩は三人で会議したからな」
「先生、それ会議じゃなくて宴会じゃないの」
「そうか、宴会だな」
昼間夕子は大声で笑いながら昨夜のことを思い出す。
「先生たちな、また、あの神社に行くんだが、真夏ちゃんもどうかな」
「先生、それ、いつですか!」
真夏の語気が急に変わる。
「今週末の予定だが」
「大丈夫ですよ」
真夏は昼間先生をじっと見つめている。
「じゃあ、放課後部室で待ち合わせ時間を決めよう」
「分かりました、先生!」
「じゃあ、あとでな、真夏ちゃん」
「はい、先生」
放課後、真夏から聞いたヒメは、真夏と一緒に部室に向かう。
部長の日向黒子は用事があっていない。
副部長の白石陽子も同じだ。
「先生、前に先生から頼まれた演劇部のシナリオですが
ーー ちょっと分からないことがあって」
「相談か? 何が分からない?」
「その〜、頭で考えると書けないんです」
「そうだな、考えると書けないなあ。
ーー 物語の展開に逆らわないことだ」
「先生、逆らわないって」
「小説も御伽噺なんだよ。
ーー 現実を無視して書けばいい」
「現実を無視って、どうするのですか?」
「そうだな、嘘を書けばいい」
「嘘ですか」
「嘘なら、なんでも書けるだろう」
「なるほど」
「本屋に並んでいる小説の大半、いや多くは嘘の結晶だよ」
「先生、目から鱗です。
ーー ところで先生、真夏から聞いたんですが神社・・・・・・」
「あーあれか、まだ時間決めていないんだが」
「先生、僕もご一緒してもいいですか」
「真夏ちゃん、ヒメも一緒で行こうか?」
「ヒメ兄、邪魔にならないでね」
「どう言う意味、真夏?」
「ほら、女同士の話よ」
「なるほど・・・・・・」
「ヒメ、何、顔を赤くしている」
「じゃあ、土曜日の午後三時でどうだ」
「先生、待ち合わせ場所は?」
「いつもの本屋の入り口でどうかな」
「分かりました!」
昼間夕子は笑顔になって部室をあとにした。
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三日月未来




