最終話その2 エピローグ
さあ、それからを語ろう
選定の日が終わり、僕たちは日常に戻る。
クレアもあのあと正式に水の巫女となったが、学園を卒業したら巫女として本格的に活動を開始するようだ。
ライネスもユリアーナもいつも通りに戻り、僕とニーナが付き合い始めたことをからかいまくってくれた。そして、ちゃっかりアルとカレンも付き合い始めていたのには驚きだ。
更に時間は過ぎ、僕たちは学園を卒業した、兄のハインツも一年の研修を終え僕たちとともに学園を去ることになった。
卒業から半年後には兄ハインツとメリンダさんが結婚、その結婚を機に兄は国王へと即位した。
メリンダさんも妹のせいで落ちてしまった、エレンツ侯爵家の汚名返上の為に健気にもハインツ王と国の為に頑張ってくれていた。
ソニアのヤツは最後まで喚いていたが、許されるわけもなく、犯罪者の烙印を押されエレンツ家とも絶縁された後に国外追放処分となった、いまは何をしているか誰も知る由もなかった、ホプキンスは牢屋の中で自害していた。
そしてニーナは僕のお嫁さんと成るべく礼儀作法や国の歴史だなんだを勉強、彼女は元々優秀なのでどんどんとモノにしていった。
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僕とニーナは馬車から手を振りながら街を進む。
更に時間は過ぎ二年後、僕とニーナの結婚式だ。国民に祝福されつつパレードは続く。
「んー、元は庶民の私にはむず痒いですね、カナード」
「うんうん、最近はようやく名前だけで読んでくれるようになったね」
「カナードはあの時からなんだか意地悪になりました」
「はは、そうかなぁ? ニーナの反応が楽しく可愛くてついね」
ぷくーと頬を膨らませるニーナ。
そして街から城に戻ると、兄と弟、それにライネスやユリアーナ達も祝福しに来てくれた。
「カナード、おめでとう」
「いやー、兄さんとニーナさん、やっとかって思ってたんだよねぇ」
「ハインツ王ありがとうございます。アルお前はカレンさんとどうなんだよ?」
「カレンとは、ああ、兄さんの後になるけどちかいうちにね」
「カナードとアルファスも……めでたい事が続くな」
ハインツ王はシンプルに、アルはちゃかして祝福してくれる。
「いやー、カナード王子にニーナ君、本当におめでとう」
「ああ、ライネスありがとう」
前髪くるくるがいつもより高速だった、しかしライネスの言葉に素直にお礼を言う。
「くー、カナード王子が羨ましいですわ! ニーナさん、なんてお綺麗なのでしょう」
「ちょっとユリナーナ様なぜ私の周りをまわるんですか!」
「よくてよ!」
「よくてよの意味が分からん……」
ユリアーナはニーナの周りをくるくる回っていた、こいつも変わらないなぁ。
そして、クレアが僕とニーナを祝福してくれる。
「カナード公爵、ニーナ様。今まで助けていただきありがとうございます。そして御結婚おめでとうございます」
「うん、クレアも来てくれてありがとう嬉しいよ」
「クレアさん、ニーナ様なんてやめてください」
「ニーナ様は公爵夫人となられたんですよ」
「それを言ったらクレアさんは水の巫女ですよ!」
いやいや合戦開始前に止めるか。
「あー、なら二人とも学園の時みたいに呼び合えばいいじゃないか」
「そうですよクレアさん、私はその方がいいんです」
「カナード公爵がおっしゃるなら、ではこれからもよろしくお願いしますねニーナさん」
「はい!」
ニーナとクレアが笑いあう、そしてクレアは顔の前で手を組み祈るような恰好をすると。
「あなた方に、水の精霊の祝福が有らんことを」
現水の巫女の祝福の言葉を胸に刻む。
あと、クレアが言っていたように僕は公爵となり、ニーナと一緒に一部の土地を治めることになった、元々空いていた土地とエレンツ侯爵家から一部没収した土地を合わせて僕の領地としたのだ。
ソニアの父親である侯爵家、流石に全くのお咎め無しというわけにはいかないので土地の一部を没収という形で罰としたのだった。
そして、時間は経ち結婚式は終わりを迎えた。
――
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結婚式から更に時間は経ち。
その一年後にアルも結婚、兄のハインツとメリンダさんには第一子が誕生した。
ライネスも父である宰相の仕事を手伝いながら、国の大臣と成るべく勉強中。
ユリアーナは弟に家の継承権の全部を譲り、クレアと一緒にくらしていた、ここゲームのユリアーナエンドと同じ流れじゃん! と僕は心の中でツッコミを入れていた。
クレアも馴れないながらにユリアーナと一緒に巫女として頑張っていた。
――
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「ひーん、思ったより領地を治めるのって大変ですねー」
「いや、ほんとマジでなんでこんなに大変なんだよ!」
僕とニーナは悲鳴を上げながらも、ある意味充実した毎日を送っていた。
「これじゃあ、カナードと世継ぎをゴニョゴニョ」
「ん? 何か言ったかい?」
「いいえ、なんでもないですー」
そうか、忙しくて忘れていたけど世継ぎ問題もあるのか、うん、その辺りも考えないとね。
「ニーナ、もし僕たちに子供が出来て、女の子が産まれたならその子の名前は『ショウコ』にしたいと思うんだ、この国では珍しい名前になってしまうけど、どうしてもね」
「いいと思いますよ、私とカナードの世界を超えた恩人の名前ですもん、良いと思いますよ」
「うん、ありがとう」
僕とニーナは少しだけ仕事の手を止めるとそんな会話をして、笑いあうのだった。
―― Fin ――
これにて『転生先は悪役令嬢?それともメインヒロイン?いいえ攻略対象の王子さまでした』は幕となります。
最後までお付き合いくださり有難うございました。




