閑話〜神界1〜
今回は閑話です。
主人公2人は出ません。新キャラが一人増えます
黒龍と真琴のハプニングキスからの事故結婚と同時刻、終焉の地とはまた違う次元に位置する神界に数世紀ぶりに祝福の音色が流れる。
神界に属するものが世界の系譜に記された報せだ。
数世紀ぶりと云うこともあり、神界では専ら誰が結婚したのかその話題でもちきりになった。
勿論、そんな美味しい話題をミーハーな女神達が放っとく訳もなく、各方面から情報を集めていた。
「たっ、大変大変たいへーん!!!あの魔王が結婚したわよー!!!!」
「え?魔王って、終焉の地に自己封印されてたじゃない!?」
「そうなのよー!何であの醜い化け物が結婚してるのよー!?」
「「「信じらんなーい!!!!」」」
この神界では、数々の神々が様々な世界の管理者として各々の神殿で政務を行っている。
勿論、神々は自由気ままな生き物であるため、神界では日がな楽しみを求めて各々の神殿で茶会やら酒盛りやらを楽しんでいる。
特に、女神達は新しいもの好きで噂話が大好物である。
そんな女神達の間では、黒龍こと黒曜は魔王と呼ばれ酷く嫌われていた。
女神達からすると、創世神と共に世界を創生し、多数の世界を管理していた黒曜は嫉妬の対象であり、何より醜悪な生き物の形を象っている事がそもそも受け入れ難かった。
しかも、その醜悪な姿で、数十m以上の巨体である。全身は鋭い鱗に覆われ、血のように紅い瞳は神と言えど本能的に生命の危険を感じるのだ。
「あんな醜い化け物と結婚するとか、馬鹿な事する女もいるものねぇ」
「あの鱗見たことある?触らなくても私の柔肌を切り裂きそうなのよ」
「あの重低音の汚い声…本当に気味が悪いわよね!」
「「「本当、相手の女趣味悪ーい」」」
そんな女神達の姦しい声を聞き、自身の神殿前に出て来た白銀の美丈夫の男神は、姦しい女神達を冷たく見下ろしてした。
だが、話の内容を聞き、堅く冷たい表情を和らげ、口元には笑みさえ浮かんでいた。
「黒龍、お前は愛するべき片割れを手に入れたのか。ふむ、喜ばしいな。見てくれだけじゃなく、中身を愛してくれる女であればいいけどな。」
彼は、黒龍が神界で受け入れられないのを憂いていた。
そして、黒龍自身がそれを甘んじて受け入れ、何もない終焉の地で、神としての責務を果たしながら幽閉の如く過ごしているのを苦々しく感じていた。
だが、その黒龍を受け入れ受け止めて婚姻した女性が居るとなれば、喜ぶしかないではないか。
まぁ、真実は事故であり、中身どころか金にしか興味の無い女なのだが。
だが真琴は、黒曜の龍姿にも嫌悪は示さず、女神達から汚いと言われている声を何より好んでいた。
その点では、この白銀の美丈夫からすれば、かなりの及第点になるだろう。
「ふむ…、折を見て祝いに行くしかあるまいな。黒龍の嫁であれば、私の娘の様な者だ。」
白銀の美丈夫は優しく微笑むと、責務の為その場から姿を消した。
白銀の美丈夫の神殿近くにはまだ話し足りない女神達が集っていた。
「創世神様はあの醜い魔王を神と言ってるけど、私達は認めないわ!」
「それに、あの魔王よ?きっと無理矢理結婚したのかも!」
「もし、相思相愛だとしてもねぇ…」
「「「あの魔王の嫁よ!絶対化け物よ!!!!」」」
神々が住まう神界に、女神達の醜い叫びが木霊した。
お義父さんワクワクしております!