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神界編スタートです。



『真沙子…真沙子…何で置いていたった…真沙子…』



 そんな女を、異性を抱き締める抱き方は不快だ。「私」を抱き締めないお前はいらない…。

 

 「私」は「真沙子」じゃない…真琴だ…。


 「私」は、逃げる様に家を飛び出て、アイツに見つからない様に、国の影に潜れた。


 「私」を見てくれる黒曜、私はアイツを殺したいと思う様な人間だよ。


 私は、綺麗なだけの女じゃない。神様の嫁にも巫女にも不適格な人間だよ…。










「真琴…?まーこーとー?着いたぞ?大丈夫か?」


 大丈夫とは?

 心配そうに私を見つめる黒曜。そんな顔を、何でするの?


「真琴、顔色が酷い…。かなり来てはいなかったし寂れているが、我の神殿にて真琴を休ませよう。」


 黒曜の背に乗せられ、フルドラゴンバージョンの黒曜からすればこじんまりした、神殿に連れてこられた。

 その神殿には誰も居らず、生活感の一切を感じられない寂しい所だった。



「ここでは、人化した事が無かった故、寝台がない…。直ぐ近くにあ奴の神殿がある故、寝台を借りて来よう!真琴待っててくれるか?」


 あ奴…?あぁ、創世神か…。


「…黒曜、黒曜が丸まってくれれば良い…私を置いていかないで。」


 黒曜は、青くなったり赤くなったりしていたが、諦めてドラゴン化して丸まってくれた。その腹部にそっと寄り掛かるように横たわれば、黒曜が緊張したのが伝わってくる。

 

 そんなに多くドラゴン化した黒曜に触れた事はないが、生温い人肌とは違い、ヒンヤリとした爬虫類独特の体温が今は心地よい。


「あぁ、黒曜の鱗はとても気持ち良いね…。」


 神界に移動する際に、思い出したくもない過去を探られた感じがして、気分が悪かった私は、そのまま意識を手放した。











 どれ程意識を手放してたのだろうか?

 辺りは、白み始めていた。それにも関わらず、外からは激しい怒鳴り声が聞こえてきた。


「黒曜?私はどの程度寝てた?」


「丸数日…。その間に、我が神界に戻って来た事を嗅ぎ付けた女神達の側使えが我の神殿前にて騒いでる」



 丸数日…?そんなに寝てたの?って…



「時間が勿体ない!!!!」


 うわぁぁ…!!神界に来たら、直ぐ様挨拶して、馬鹿女神達制裁して、お母さん達の所に戻りたかったのに!


「黒曜!寝てる暇は無いわ!さっさと挨拶しなくちゃ!」


「その必要は無いよ」


 ん?聞いたことのない声。それよりこの黒曜にそっくりだけど真っ白な人なんで居るのかしら?髪も身体も真っ白で、瞳だけ漆黒。縁取る睫毛まで白く、服まで真っ白…。白が好きなの?


「黒曜、真っ白になってるわよ?」


「我は真琴の枕になっておる」


 そうよね?なら、この白曜は誰?私の事を値踏みするみたいに見てきて、気分の良いもんじゃないわね…。


「ふむ、黒龍によく懐いているな。お前に触れるのなんぞ、俺位だと思ってたが。」


「この失礼な白曜は誰?」


 黒曜のお腹にグイグイ頭を押し付け、コソコソと聞いてみる。黒曜なら分かるはず!と、思いグイグイしてみた。


「白曜?これは創世神だよ。…我が友であり、我が父である創世神よ、我の妻に失礼だぞ。」


 創世神!?この黒曜の白いバージョンが?ってか、私だけじゃないよ、黒曜にも失礼なんですけど?


 私は黒曜から離れ、ビシッと敬礼する。数日寝てた割にはふらつきも無い。


「お義父さん、はじめまして、日下部 真琴と申します。黒曜とはすったもんだあり夫婦になりました。……初めましてですけど、貴方様は失礼な神ね!黒曜はこんなに大っきいけど、内面なんかただの乙女よ!触れられるのかどうかなんて聞かなくても分かるでしょ!肌触り最高よ!黒曜の父ならキチンと黒曜の事を見て!」


 黒曜の息を呑む音が聞こえる。うん、創世神に歯向かったらそうなるよね。けど、黒曜の事も私の事も馬鹿にするんだもん許せないわよ!


「ま、真琴…肌触りって…あぅぅ…」


 あ、そっち?そっちなの?え?あぁ…またモジモジ始めてる、


「ふはっ!正に豪胆!この黒龍を骨抜きにした女傑!気に入った!俺の娘に相応しい。」


 白曜は何がおかしいのか腹を抱えて笑ってるし…。なんだこれ…。

 ってか、創世神ってこんなノリで良いの?


「私、創世神って、もっと神様らしい神様だと思ってたわ…」


「懐深い素晴らしき神様だろう?」


 白曜が胸を張って自画自賛をする。


「自分で言う辺りが微妙?それに、もっとヨボヨボお爺ちゃんをイメージしてたわ。黒曜の白バージョンで威厳も何もなくてビックリしたわ。」


「ふむ…。嫁御は俺の姿が嫌か?」


「いえ?別に。黒曜みたいだから、威厳が無いだけ。見た目だけならイケメンなんじゃない?」


 本当に何が面白いんだか、白曜はケラケラ笑ってるし、黒曜はドラゴン姿のままモジモジしてるし、精霊達は石から出て来ないし…

 本当に自由ね。



「しかし、黒龍に名を与えただけで無く、俺の事を黒龍のオマケみたいな名にするとは、本当に嫁御は面白いな。」


 え?そこ?


「ふむ、真琴は素晴らしいぞ。見目だけの女でない、芯がある。」


 其処で嫁自慢?黒曜、ドラゴン姿のまま私を褒めないで…重低音素敵ボイスが堪らないわ…!


『創世神様〜!?僕達の事を覚えてますか!?』


 ん?ジークと、オウちゃん?覚えている?白曜と知り合いだったの?


 白曜は、ふむ。と頷くと、とろける様な笑顔で、ジークとオウちゃんに抱擁をした。

 其の姿は、黒曜の白バージョンの癖に、神秘的ですらあり少し悔しかったのは内緒。


 だって、なんか黒曜にはない母性的な包容力を感じて、負けた気分になっちゃったのよ。


 内緒だけどね。


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