表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
65/237

親子

 俺達は店の中に入らせてもらった。

 店の中を見ると色々な物が棚に陳列してあった。道具屋というか雑貨屋というか、そんな感じを受けた。



「いらっしゃいませ。」



 声を掛けたのは若い男の子だった。



「あれ?親父が店に立ってないのか?」



 その声を聞いて質問したのはキースだった。いつもだったら店にいるのは親父(おやじ)さんだったってことかな。だからキースは店に入るの悩んでいたのかもしれないな。



「え~っと、もしかしてキースおじさん?」



 男の子がキースに聞いた。



「そうだけど・・・。誰だ?」


「俺はエミリオ、キースおじさんの姉ソフィアの子供だから、おじさんからすると甥ってことになるかな。」



 そうエミリオは言った。ソフィアさんは結構な年頃の息子さんがいるみたいだな。キースより年上だし、この世界はみんな結構結婚するの早いみたいだしな。エミリオは中学生くらいの年齢で、キースとソフィアと同じ髪と目の色をしているなかなかの美少年だ。この年で店番してるってしっかりとした子供なんだろう。



「そうか、俺が家出てった時は赤ん坊だったもんな。」



 キースはそうしみじみ言った。



「そう言えば、親父は?どっかに買い付けに行って今はいないのか?」



 キースは安心したような顔をして、店の中をキョロキョロと見回しながらそう言った。

 親父さんとは顔を合わせなくて済んで安心したと言ったとこか。

 ただその言葉にエミリオとソフィアさんは表情を暗くした。



「付いて来て下さい。」



 そう言ってソフィアさんが店の奥に入っていった。

 俺達は顔を見合わせてから続く。不穏な空気を感じキースの表情も硬くなる。

 ソフィアさんの後を追って廊下を進む。途中から生活感のある感じの物が見えてきた。多分店の裏側に家があってそちらで生活をしてるんだろう。そこに通じる廊下を俺達は歩いてきたみたいだ。



「私、ソフィアよ。入るわね。」



 1つの部屋の前で足を止めたソフィアさん。扉をノックしてそう声を掛けて部屋の中に入って行った。俺達も続いて一緒に部屋に入った。

 部屋に入ると6畳ほどの部屋で目の前にベットがあった。ベットでは上半身を起こし座っている男性がいた。髪は白髪が大分混じっているがオレンジ色の短髪。無精ひげが生えていてその髭にも白髪が混じっている。年は取っているが凛々しさがあり男っぽい顔をしている。キースによく似ている。



「親父、どうしたんだいったい。」



 キースが部屋に入るなり声を上げた。目の前の人は思った通りキースの親父さんだった。キースが似てるっていうよりキースが親父さんに似てるんだろう。



「家を出て行った奴がいきなり来てなんだ。」



 キースの親父さんが口を開いた。その声はどこか風格があった。少し低めの声でカッコいい。



「いや、その。あの、今は俺冒険者やってて、それでその、お世話になってるパーティの人が俺の家族に挨拶したいっていうから来てみただけっていうか、なんというか。」



 キースがしどろもどろになりながら説明する。

 そこ言葉を聞いてキースの親父さんが俺達の方に目を向ける。



「初めまして。キースさんと一緒にパーティを組んでる冒険者のダイゴと申します。」



 俺はそう挨拶した。



「勝手に家を出て行った奴など知らん。だからあんたに挨拶をされるような(いわ)れはない。」



 キースの親父さんにそう言われてしまった。



「親父・・・。」



 キースが少し悲しそうな顔をした。



「勝手に出て行ったから知らないという事でしたら、私も勝手にご家族に方に挨拶にしにきただけなので気になさらないでください。キースさんと一緒に旅をすることが出来て本当に助かっております。そのキースさんを生んで育てて下さったことに感謝しています。ありがとうございました。」



 俺はそう言ってキースの親父さんに頭を下げた。俺のしたことにキースの親父さんはびっくりしていたみたいだが満更でもないような顔をしていた。素直じゃないんだから。



「でも、親父。いったい何があったんだ?」


「それは私から説明すわ。」



 キースが質問し、それを聞いたソフィアが口を開いた。



「父がある商品の買い出しに行った時に魔獣に襲われたのよ。一応冒険者は護衛として雇ってたんだけどあまり役に立たなくてね。とりあえず何とか馬車を走らせて魔獣から逃げれたのは良かったんだけど、その時に荷物を守ろうとして足を怪我してしまって立てなくなったの。それで今はベットの上ってこと。」



「そんな・・・。」



 ソフィアの説明にキースが絶句する。

 ここでも魔獣か。魔獣って確かそんなに数はいなくて、活動もそこまで活発ではなかったと聞いてたけど。やっぱりなにか色々起きてる気がするな。



「今は商業ギルドにお金貰ってるけど、それももうすぐ切れるし。このままだったら店を畳むしかないわね。そんな時にあんたが帰ってきたんで憂さ晴らしにちょっとね。」



 ソフィアさんが続けて言う。そうかさっきのは憂さ晴らしだったのか。普段からあんなやり取りが繰り広げられてるとは違うんだよね?



「だったら、兄貴。」



 キースが俺の方を見てくる。キースの言いたいことはわかる。



「でしたら、私がその足を治しましょうか?」



 俺はキースの親父さんに言った。



「ふん、そんなことが出来るものか。」



 親父さんはそう言って下半身に掛かっていた布団を取った。そこにあったのは足というよりは足の形をした石の棒だった。



「父を襲った魔獣は【ストーンフロッグ】と言って、口から触れたものを石に変える粘液を吐くの。その粘液が父の足に当たってしまったの。こんな状態を元に戻すなんて大きな街に行ってかなりの大金を払わないと出来ない事でしょ。」



 ソフィアさんが代わりに説明してくれた。

 なんだそんな事か。

 ただ。



「俺は治せます。ただし治すには条件があります。

 その条件はキースの事を許してあげて下さい。そしてまた家族として仲良くしてください。」


「兄貴・・・。」



 俺の言葉にキースが呟く。なんか親父さんも素直じゃなさそうだしこれくらいは必要だろう。キースがそんな辛そうな顔をしているのを俺は見たくない。



「出来るもんならやってみろ。出来たら条件をのんでやってもいい。」



 キースの親父さんはそんなこと出来るとは思ってないんだろう。少し怒ったように言った。

 俺はキースの親父さんの前まで行って床に膝を下ろして唱えた。



「【清浄なる調(ピュリフィケーション)】」



 俺がそう唱えると俺の手から光る五線譜の様なものが流れ出る。五線譜には何かの曲を表す音符が並んでいる。その光る五線譜はキースの親父さんの足に巻き付く。光る五線譜に書いてある曲が演奏されているかの様に、中の音符が五線譜の上を流れていく。

 親父さんはびっくりしたがそのまま事の成り行きを見ていた。しばらく光る五線譜は親父さんの足を巻いていたが、曲が終わったかのように音符が全て五線譜の上から消えると俺の手元に巻き戻されるように帰ってくる。光る五線譜から解放された足は普通に人の足の様になっていた。

 使った魔法は回復魔法でも上位の状態異常を治す魔法だ。毒、麻痺、石化、呪い、ほぼどんな状態異常も治せる。ただ曲を演奏するように現れる楽譜がどの状態異常を治すのかが決まっている、その為一回に付き一つの状態異常しか治せない。今回は石化に対しての楽譜で使用した。こんな魔法誰が考えたんだろう。ともかく、キースの親父さんの足は治った。



「治しましたよ。」



 俺がそう告げると、キースの親父さんは自分の足を手でもんだりしてた。それからベットの端に座り直し立ち上がった。ふらつくかと思ったが親父さんはしっかり自分の両足で立ち上がった。それを見たソフィアさんが泣いていた。キースも泣きそうな顔をしていた。親父さんはもう一度ゆっくりとベットに腰を下ろした。



「あんた、何者だ?」


「さっきも言いましたがキースさんにお世話になってる冒険者です。」


「そうか、そうだったな。礼を言う、ありがとう。」



 親父さんは俺にそう言って頭を下げた。頭を上げてからキースを見た。



「キース、いい仲間を持ったな。」



 そう親父さんは笑みを浮かべて言った。

お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ