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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【新大陸へ】
201/237

予定は未定

 さてとどうするか。

 そんなことを考えながら俺は歩いていた。

 俺達はクレタの町を出て【自由国家 ルージア】の首都イベリオンに向かっている。

 今回は徒歩で向かう事にした。

 イベリオンまでは近いという訳でもない。

 ただ【転移の門(ポータルゲート)】を使うにしろ、水の馬に乗って移動するにしろ早すぎると思ったからだ。

 バロンさんが冒険者ギルドの本部に連絡して、それから何日も経たずに到着する。そんなことをすると怪しまれる可能性があるからな。

 でも俺達も一応Sランクの冒険者になろうとしている人間だ。申請する時にスキルなんかを隠そうとは思っていない、だからある程度進んだらスピードを上げるつもりだ。


 とりあえず今は考え事をしながら進んで行こうかと思っている。

 それに久々に旅って感じを味わってもいいかと思う。

 しばらくみんなとも離れていたしこうして話をしながら歩いて行くのもいいだろう。

 最近の移動は一瞬で終わってしまってるしな。 



 今考えているのは新大陸への渡り方なんだよな。

 俺が一番頭を悩ませていることだ。

 今いる【商業国家 エルバドス】には港町と言うのがない。

 厳密に言うとない訳ではないがな。海に面している町は港町と言えるんだろうが、港としての役割を果たしていないと言った方がいいか。

 漁やどこかに行くという目的で船を出している町がないんだ。

 商業の国なんだから絶対に海路を使って品物を運んだりしているだろうと思っていたんだがそれがないようだ。

 理由を聞いてみたら納得できた。

 この世界には海にもモンスターがいるってことだ。

 俺がいた世界とは違いこの世界にはモンスターが出る。

 当然海の中にもうようよといる。

 航海に出たり、漁に出たりすればそのモンスターの脅威にさらされることになる。

 かなりリスクの高いってことだ。

 相手は海の中、こちらから攻撃出来る手段は限られている。

 剣なんてものは通じないし、矢だって海水に当たるだけだ。

 火の魔法も意味がないし、風の魔法も届かない。土の魔法は論外だな。

 唯一水の魔法位は通じるかもしれないがいつどこで襲ってくるかわからないモンスター。姿も潜られていたら見る事も出来ない。そんな相手に魔法をぶつけるなんて至難の業だ。

 魔法をぶつける前に船底にでも穴を開けられればそれで終わりだ。

 そんなリスクを背負ってまで海に出たり、海路を使って商売をしようなんてことは思わないという事だ。

 唯一ルージアには港町がある。

 高ランクの冒険者が集まり護衛なんかを雇うことが出来るからとのことだ。

 それ以外にもどこかの町で自分で船を作って海に出て行く場合もあるらしいがな。かなりの金や権力なんかを持っていないと出来ない技だ。

 そんな事もありウィクルーアに渡るのならばルージアにいる方がいいんだろう。

 前にも言ったように俺達に海を渡るという知識はない。船員は揃える必要がある。

 どこかで船を作ったとしても船員をどこかで集めないといけないってことだ。

 だったら港町で集めた方が集まる可能性が高い。


 ただ船は作った方がいいよな。

 俺やブランがいればこの世界に今はないような船も作ることが可能だろう。

 魔石を使って動力にしたり、魔法を常時使用している船でも作ろうと思えば作れる。

 そう言った船の方が安全は安全だろう。

 そっちの方向で考えるかだな。

 だったら途中で木でも切って材料を調達しながら行けばいい。【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で木を見ていったらどういう木か、船の材料として適してそうかぐらいはわかる。

 こうして歩いて旅している間にもどんな船にするか考えるとするか。



 俺達は徒歩でイベリオンまで向かいながら伐採するという手を取っていた。

 まぁ分身体を作って木を切って【倉庫持ち(アイテムボックス)】に突っ込んでいってるだけなんだけど。だから正直言って俺は何もしていないのと一緒だ。

 一応【玩具箱(トイボックス)】の中で木を船に使う用に成形していってる。

 本当に【玩具箱(トイボックス)】と言うよりも【工場(ファクトリー)】に名前を変更した方がいいかもな。

 船の一隻ぐらいなら俺の【倉庫持ち(アイテムボックス)】には入る。流石に豪華客船とまでは行かないが、20人位がそれぞれの個室を持てるぐらいの船は入れておける。

 船の形位は俺でもなんとかなるが動力部分はブランに任せている。

 【魔工匠(ヘパイストス)】には【玩具箱(トイボックス)】の様なスキルも入っている。だから俺みたいに【玩具箱(トイボックス)】と同じ様に自分の持っている空間で物を作ったりするのが可能だ。

 俺も船の動力になりそうなスクリューとかは作れそうだが恐らくブランの方がそう言うのは得意だろう。全く別の動力でもいいんだけどね。水の魔石を使って船の周りを動かして進むみたいな感じでも、帆を張って風の魔石で風を吹かせて進みとかでもいいか。

 ブランには俺が持っているスクリューだったり帆船の帆の部分だったりの知識は共有している。

 ブラン自体は船と言うものは見たことないらしい。俺もこの世界に来てから一度も見たことない。

 海辺だったり、川や湖みたいなところへいってないし。

 生活水準を見ると恐らくは帆船ぐらいしかないだろう。魔石を使って動力にするにはかなり大きな魔石か大量の魔石が必要になるだろうし、魔法使いの魔法頼みなんかになればすぐにMPが枯渇するだろう。

 こういう時には【念話(テレパス)】は便利だな。

 イメージなんかも相手に送ることが出来る。だから正確に俺の見たことのある船をブランにも伝えることが出来る。

 そう言えば車も作ってみようかと思ってたけど船の方が先になりそうだな。

 そんなこんなで俺とブランは道すがら話をして俺達の船を作っていった。

 名前とかも考えるかな。

 ってまだこの船を使うのは先になるだろう。先にSランクになって少しは名を轟かせないといけないか。そうした方が船員も集まるだろうし。でもおこぼれに預かろうと一緒にウィクルーアに渡りたいとか言い出す奴がいたりするんだろうか。

 俺もまだまだこの世界の知識は少ないし。ある意味狭い範囲の人間関係でしかやって来てないしな。



 そう言えば目の前を仲良く歩いているガイとシータ。その後ろからついて行っているアリア。

 何とも言えない構図だな。


 ガイにクレタの町で再会した時にはちゃんと聞いてみた。

 シータとはどうなったんだってね。

 真っ赤な顔してどうもしてないと言ってたが。それ以上突っ込んでも何も言わないので聞くのはやめた。本気で怒られそうな感じがした。

 次の日にこっそりアリアに聞いたらシータからはどれだけガイが素晴らしいかを聞かされたらしい。

 特に関係が深まっているとかはないみたいだ。

 カーサさんも好きってことをどう表現するかは教えたみたいだがその先は教えてない様だ。

 まぁまだそんな年齢でもないし。

 見た目は大人っぽくなったが実年齢はまだまだお子様だからなんだろう。

 ガイとしてもそれを気にしているんだろうか。

 やーいやーい、ロリコンとかって言ったら確実にキレそうだ。止めておこう。

 この2人が結ばれるのはまだまだ先になるんだろうな。


 う~む、ハーレム要素が減ってきた・・・。

 単なる夢なんだから仕方ないし、そういう風に動いてもいないんだから仕方ないだろう。

 ブランは相変わらず慕ってくれてるみたいだけど、どういう感情かまではわからないし。

 安易に好きだと言ってしまっても『わしもです』ってことじゃなく『(あるじ)がそう望むなら』とか言われそうなんだよな。

 そうじゃないんだよな~。

 これは単なる俺の我がままと言うかこだわりと言うか。

 しかし譲れないものは譲れないんだ。

 やっぱり本当に俺の事を好きになって貰いたいんだよな。

 なんと言うか恋愛対象としてというか、その、性的にというか。

 無理かな~、無理だろうな~。

 どうしてもそこは自信が持てないんだよな。

 あれかな、勇者として魔王を討って、この世界を平和にしてもう勇者とその仲間として活動しなくてよくなったら聞けるかな。一人の男としてブランが好きなんだって。それだったら俺の事をただの一人の男として考えてくれるようになるだろうか。そこでどう判断されてもしょうがないよな。

 受け入れられたら嬉しいグッドエンディングだし、断られたらノーマルエンドって感じかな。

 そうだな、全部終わってからにしようか。

 でもあれだよな、途中でフラグは回収したリ立てていかないといけないよな。

 うん、ちょっとはフラグは立てていこう。と言うかブランにも意識して貰わないとどうにもならないだろうし。

 ハーレムは・・・、また後々考えようか。

 どっかに俺に色仕掛けをしてくる人とかいないんだろうか。

 ラノベだったらそんなの頻繁にあるような気がするんだけど。

 この世界に来てからも俺から行動しなければそんなことにならないし。それでもあんまりないな。

 ハグした位か。

 ヤバい、そんなの考えたら悲しくなるから止めよう。

 オモイカネの試練の時に幻想の中のブランとキスでもしておけばよかった。

 いや、幻とそんなことしても後で悲しくなるな。

 ふぅ、恋愛イベントどこかに落ちてないかな。


 そんなことを考えていたら前を歩いていたアリアが俺の事をちらりと見ている。

 アリアはアリアで今の俺の状況を嘆いているらしい。

 バロンさんとも別れたし、ガイはシータとくっついた。ブランと位しかないもんな。

 学園にいた時にはそんな光景を見ることもなかったらしい。

 どこかにはいるのかもしれないが大っぴらにってやってはないだろう。

 アリアも教師として在籍していたから忙しくてそれどころではなかったみたいだし。

 しかし俺も今は色々とやることがあるんだ。考えなければいけないことも色々あるし。

 そんな久々にブランに会ったからってイチャイチャしてばかりもいられない。まぁイチャイチャなんてしたこともないんだがな。

 妄想するネタもないってことなんだろうが。

 今世界を救おうとしている時にそれでいいのかよ。

 って俺が言えた台詞でもないが。

 頭の半分が良からぬ妄想しかしてないのは一緒だからな。

 それ以外にも悩んでる事もあるらしいが。

 ガイとシータが強くなってオリジナルのスキルを持って、自分は・・・とか悩んでいるらしい。

 そうだな、正直今回復、支援はあまり必要じゃないのかもしれないし。ほぼ傷を負う事もないし。

 状態異常なんかも俺の作った服とブランが作った鎧で無効化できる。

 ブランは物作りって言う役目があるから今も船を作るのに勤しんでる。

 そう言った点でもアリアの役回りみたいなものがないんだよな。

 アリアが得意なもの・・・、妄想か?

 あれじゃないか、妄想を現実のものにする能力とか。なんかの超能力系でありそうだけど、実際にそんなスキルがあればかなり強いんだろうけど。

 しかし出来そうなものとしたら想像した物を魔素で作って使役するとかだろうか。

 【空想現実化ファンタジー・オブ・リアリティ】とかか。

 ん~、その空想した物の能力とかも現実に出来たら凄いんだろうけど。そこまで再現できるかってことだよな。なんか考えてみたら俺がスキル掛け合わせたら作れそうなスキルだな。

 うん、やっぱりアリアは必要ないのかも。



「何かとても失礼な事考えませんでした?」



 前を歩いていたアリアが振り返って俺の方を見て言った。

 本当に勘の鋭い奴だ。



「いや、何も。俺も考えてただけだよ。アリアらしい力って何だろうってね。」


「その事ですか。」


「そうそう、難しいよね。俺も俺らしい力って何って言われたら答えられないし。」


「ダイゴ様でも?」


「そう、俺でも。ってか俺だからって感じかな。なんでも出来てもこれが得意ってのがない。」


「あぁ、そういう事ですわね。」


「そういう事。何だろうね、自分らしい力って。」


「えぇ、私もあまりそういうことを考えたことはありませんでしたし。」


「そうなんだ?」


「そうですわね。スキルは生まれ持ちましたがそれが自分らしいかと言うとまた別の気がします。

 その力があったからこそ今ここにいる。自分らしいというのは違う気がします。」


「そっか。アリアもスキルを持って生まれたんだもんね。

 でもそれを言うとガイやシータもそうじゃないのかな。ブランはドワーフっぽいと言えばドワーフって感じの力を持ってるし。

 シータはハーフエルフだけど得た力はあまりエルフっぽくはないと思うけど。

 やっぱりどう生きてきたか、どうなりたいかが重要なんじゃないかな。

 自分の方向性と言うか、どうなりたいかとやってることがぴったりと合ったとか、スキルを得たのはそんな感じがするかな。」


「自身の方向性ですか。」


「まぁ俺も実際にはわかってないんだけどね。俺も自分でどうにかしてスキルを得てる訳じゃないから。」


「どうなりたいか、やってる事・・・、でしたらダイゴ様の後を追ってウハウハしているのを見るのが・・・。」


「いや、そんなんで得たスキルって怖すぎるから。どう考えてもストーキングスキルしか思い浮かばないから。」


「なるほど。【千里眼(リモート・ビュー)】や【隠匿(インビジブル)】が私らしいという事ですわね。そこからどうオリジナルスキルを作るかですわね。しかしながらそもそも持っていないスキルですし、まずはそこからでしょうか。」


「頼むからホントにやめて。」


「仕方ありませんわね。もしくは【分身体(ジェミニ)】を作れるようになって姿を変えてダイゴ様にけし掛けるとか・・・。」


「それってお前自身が俺にってことだからな。分身体とは意識の共有してるんだからな。」


「それは流石にお断りですわね。」


「おいっ。」


「やっぱり地道に考えるしかありませんわね。」


「まぁ絶対に何かオリジナルのスキルがないといけないって訳でもないからいいんじゃないか。」


「そんな、私だけ仲間外れの様で落ち着きませんわ。」


「じゃあゆっくり考えてくれ。こればっかりは俺にはどうしようもないだろうし。」


「そうですわね。自分で考えてみますわ。」



 言ってしまえばブランも自分で作ったオリジナルのスキルじゃないんだけどな。

 それを言うとブランも悩んだら困るので言わないでおく。


 しかしこの後アリアが自分の方向性を見出すことが起きた。

お読み頂きありがとうございます。

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