事実≠真実
「お前が知りたいと望んでいた真実とやらを語ってやることが出来たはずだが、お前はこれからどうするつもりだ?」
オモイカネが聞いてきた。
「そうですね、一応知りたいことは一通り知ることが出来たので言われた様にエルフの里を目指そうと思います。
勇者であることは隠して。
魔王がどんな力を持っているかもわかったので、何となくですがこれからどう行動するかは予測が立てれる様な気がします。
ただ俺と同じスキルを持っているのであれば俺達勇者だけで魔王を倒したりするのは難しいと思います。協力者は不可欠でしょうね。その点を考慮して行動していこうと思ってます。
そう言えば後2人の勇者もこの試練を受けるんですよね?」
「恐らくではあるが。
勇者としての役割を放棄するのであればここに来ることはないだろう。
だが勇者として行動しようとすれば自ずとこの地を訪れることになるだろう。」
あの2人がねぇ。
例の2人がこの試練を受けて突破できるんだろうか。
もしかすればあのビッチ姫の為とか、勇者としてこの地に来たからと言う理由で命懸けで魔王と戦うと決心するかもしれない。
ただ何となくあの2人にそう言う気持ちがあるのかどうか疑わしい。
俺が勝手に思ってるだけだけど。
しかしそうなった場合は試練に合格しなければずっと眠ったままとかになるんだろうか。
試練と言うが結局はどんなことがあってもこの世界を救う気があるかを確認しているという事だ。
試練というもの自体がそう言う意味があったかもしれないが。どういう気持ちを持っているかを試すことと言う。
勝手に召喚されて命懸けてこの世界を救えと言われても。しかもその気持ちが本当にあるかを試されるって言うのが不条理と言うかなんというか。
でも結構な力は貰っていて魔王に付く可能性もあるのなら仕方がない話か。
そう言う可能性があるのに野放しには出来ないよな。魔王が2人になるって感じだもんな。
神としての立場であれば確認はしておかないといけないだろう。
話を聞いて考えてみると今更あの2人の必要性って何だろう。
勇者でないと魔王を倒せないってことじゃないってわかってしまった後だし。
魔王は俺と同じ【八百万のスキル】を持ってる。
【断罪】や【福音】を持ってるからって討伐に役立つとは思えないんだが。
魔王はその3つの中からスキルを選んだ。
という事は俺達勇者が持ってるスキルを知ってるってことだ。だとすれば【断罪】や【福音】のスキルに対抗する策ぐらい考えているだろう。
今までであれば1つ被ってるスキルを持ってるだけだった。だから他に勇者がいればどちらが優勢かはわかりきったことだ。勇者も魔王が持ってるスキルの予想がつくんだし。
魔王は成長しないらしい。多分レベル的にってことだろうか。
だとするとただ強いスキルを持っている敵ってことだ。
でもそうすると何故魔族はわざわざ魔王を召喚するんだろう?何人か魔族を犠牲にしなければ召喚出来ない魔王って自分達には持っていないスキルを持ってるだけの人間なんじゃないのか?
そんなのを召喚しようと思うのか?
魔王の称号の中に魔族の力を引き上げる様な隠れた力でもあるんだろうか。
奴隷契約と同じ様な力があるって言ってたし、いくらか魔王の力が魔族の連中にも流れるってことかもな。
まぁなぜ魔王が召喚されることになったかなんてわからなくても俺のするべきことは変わらないか。
他の勇者は本当に当てにせず、俺だけでもなんとかする位の気持ちじゃないといけないな。
「知りたいことが知れたというのであればもう行くがいい。外までは送ってやろう。」
オモイカネがそう俺に向かって言った。
「知りたいことは他にもあるんですが。でも結局は俺自身が見付け、知っていった方がいいんでしょうね。」
「そうだ。
人は皆簡単に答えを誰かから教えてもらえることなどない。自分で自分なりに考え行動し知っていく、それにも意味があるのだ。ただ教えられる事実に意味があるとは思わない事だ。
今回はお前は命を懸け、真実を知ろうとした。そうして知った事実にこそ意味があったのだろう?」
「えぇ、ただあの事実を教えられていたら、もしかすれば俺はこの世界を命を懸けて救おうか悩んでいたところでしょう。自分の気持ちを知った上で得た答えだから意味があったんですね。」
「あぁ、これからの進む道標となるだろう。」
「はい。
後一応聞いておきたいんですけど地上に戻ってから俺達はこの学園を出て旅すると思うんですが。」
「お前が考えている通りもうこの学園には戻ってこれないだろう。
この学園に入る大変さはお前にもわかっているだろう。
勇者であることを公表して入ることは可能かもしれないが、そうはしないだろう?
だからお前がこの学園に戻ることはないだろう。
もうお前とは会う事もないという事だ。」
「例えば魔王を倒した後だったら勇者としては公表してるので来ることは出来ますよね?」
「可能ではあるが、魔王を倒した後にこの地にいったい何の用事がある?
その時に今更知りたいことなどないはずだろう。」
「いや、会いたい人がいるだけです。」
「それは好きにすればいいだろう。ただ、あの者は喜ぶはずだ。」
「ありがとうございます。モチベーションが上がりました。」
「おかしな奴だ。」
「う~ん、神にも言われるとは思いませんでした。」
「そろそろ地上に戻った方がいいと思うぞ。ここでは時間の流れが止まっているという事はない。」
「あっ、そうか。連絡なくここへ来ちゃったんだった。アリア心配してるかな。いや、してるか?う~ん、しているかも?」
「それと学園からはどう去るつもりだ?」
「どうですか?」
「私も学園長として学園にはいるのだから、ある程度までならば融通も利くが。」
「そうですね。ただ戻ってこれないんだったらどういう形でも問題ないかと思います。
でも何も言わずに消えるとアーサーとか心配するかな。」
「そうだ。
ここでも絆を結んだ者もいるのだろう?
しかしその点はお前次第だ。聞ける範囲で希望は聞いてやろう。」
「う~ん、アリアも一緒に学園からいなくなるんで家庭の事情とか。いっそ駆け落ちとか?いや、流石に子供過ぎるか。しかも俺の方が年下設定だしな。
変な設定だと紹介されたレスティア教会にも迷惑掛かるか。
あれ?もしかして教会の人間は学園長が神であることを知ってるとか?それで教会と学園が仲がいいみたいな。」
「いや、私の事は教会の人間は知らないだろう。
だが仲がいいというのは語弊があるが教会とは通じている。
神レスティアを信奉しているレスティア教は勇者の事も神聖視している。
勇者として行動していればレスティア教との関りも強くなり、そこで私に繋がるという事だ。」
「なるほど。
そう言った点で勇者として行動していれば自然とこの学園に来ることになるってことですね。
少しでも魔王の事が分かればと考え、知識の神を訪ねてみようと。
アリアが知っていたのも意図的に情報が流されていたってことか。
どう考えてもこの図書館に知識の神がいる、ってそんな話をなぜ知ってるんだってことだし。
殆どここへ来る人間なんていないのに、神がいると言う話が出回るのは誰かが情報を伝えているってことでしょうし。
もしかしてレスティア教が勇者を神聖視しているのって言うのもそういう意図があってってことですか?」
「その通りだ。
この世界に召喚された勇者を好意的に見る様になる、そういう理由だ。
詳しくは知らなくてもそう教示として伝えられていたら自然に勇者をそう言った目で見るだろう。
初めから好意的な目で見てくれる者が多数いる環境であれば自然と良い縁にも恵まれる。
そうすればこの世界との繋がり、救う理由が発生するという事だ。」
「そこまで考えられていたことなんですね。
なんだかまんまとその通りになったって感じです。」
俺がこの世界に来て、自分の目で見てこの世界を知って、心からこの世界を救いたいと思えるようになろうって言うのは間違いではなかったってことだ。
意図的に最初からそうなる様に仕向けられてたのかもしれないが。
いや、しかしあの国で召喚されてそんな事思わないんじゃないか?
違うな、今でも何も知らないあの2人はそのままチヤホヤされて楽しんでるか。
俺が心とか読んでしまったからあそこにはいたくないって思ってしまったのかもな。
俺が別のスキルを取っていて普通に勇者としてあの国に迎えられていたらあそこでチヤホヤされていたのかもしれないな。
ただ今でも俺の行動は正しかったと言えるけど。
絶対あんなところにいたら腐っていきそうだ。
性格の違いがあるかも知れないが、あぁいうのは性に合わないだろうな。
だとすれば今まで最善の道を進んでこれたってことだ。
あの国を出て、大事な仲間も出来て、魔王の事も知ることが出来た。それに強くもなれた。
最初に【八百万のスキル】を選んでしまったところは問題かもしれないが、レスティアもそれでいいと思ったからには何か理由があったんだろう。
俺も【八百万のスキル】を持ってたから今こうしていられるんだ。
このスキルがなければ今の大事な仲間達に出会う事すらなかっただろう。
やっぱり進んできた道は俺の中では一番良い道だったんだ。
後はこれからの進む道だ。
どうやって同じ力を持つ魔王を倒すか。
向こうも俺が【八百万のスキル】を持ってることを知っているんだ。
ただレスティアによって新しい力を得たことは知らないはずだし、それを得ることは出来ないだろう。
やっぱりそこなのか、違いって。
その点でどう優位に立てるかってことだよな。
オモイカネにそのことを聞いてもわからないんだろう。神同士考えてることまではわからないみたいだからレスティアがどういう理由で新しい力をくれたかなんてわからないだろうし。
その点も更によく考えながら旅をしていくしかないか。
「悩むのなら戻ってからにすればいい。」
オモイカネに言われ、ハッと顔を上げた。しまった、また考え込んでしまった。
「そうですね、すいません。また1人の時にゆっくり考えることにします。」
「そうするがいい。」
オモイカネがそう言って手を振ると、近くの地面に魔法陣が浮かび上がった。
迷宮で何度も見たことのある奴だ。
「最終的にどうやってこの学園を去るかはまた学園長室にでも来た時に聞こう。」
「わかりました。少し考えます。では、また学園で。」
「うむ。」
俺はそう挨拶をして魔法陣の上に乗った。その瞬間に視界が一変する。
周りを見ると図書館のさっき階段が現れた所だった。
おっと。
俺はそう思いスキルを使い子供の姿になり、服も着替えた。
さて、とりあえず一旦ここから出るか。
それにしても閉館時間ギリギリの様だ、さっさと自分の部屋に戻るとするか。
しかしアリアにはどう説明したものか。
どこまでを説明していいのか迷うな。
皆だったら全部説明してしまってもいいような気もするんだけど。
俺が御飾りの様な勇者だったって聞いても態度が変わったりするとは思えない。
でも変な心配とか気を使わせてしまっても嫌だ。
とりあえず言われた通り神と会ってこれからの進むべき道を教えて貰ったとだけ伝えることにするか。
俺はそんなことを考えながら図書館を出て、寮へと帰った。
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「とまぁそんなことがあったんだよ。」
「そうだったのですね。」
俺は【念話】で今日あったことを伝えた。
「だからこの学園でのやることも終わったし、皆の所に戻ろうか。
それから別の大陸に渡る術を考えないと。」
「これからどうするかはわかりましたわ。
ただダイゴ様がずっと知りたかったという勇者様と魔王についての事は聞くことが出来たのでしょうか?」
「うっ。」
そうだった。それをずっと俺は言ってたし。知識と知恵の神に会ったという話をしたら俺が絶対に聞いたと思うだろう。
特にアリアはレスティア教の神官なんだから勇者がどういう存在で、何故あまり詳細を語られることがないのか知りたいだろう。
えっと、どうするか。それを話したら全部を話すことになる。
仕方がない。
「それは勇者にしか教えていけないってことだったんだ。
それによって魔王を倒せるかどうかが変わってくるから勇者以外の者には伝えられないんだ。
だからこの世界に勇者や魔王の詳細が伝わっていないんだって。」
「そうだったんですね。」
まぁ一応嘘は言ってはないかな。結局勇者と魔王の成り立ちは他の人間が知るべきことでもないし。当事者以外が聞いてもね。あの事実も試練を乗り越えたから教えてくれたみたいなところがあるからな。
「えっと、だからとりあえず俺の事信じて付いてきてもらうしかないんだけど・・・。」
「それは構いませんわ。ダイゴ様が知りたいことが知れたと言うだけでも十分だと思います。」
「ありがとう。でもそう言えば学園にも入れたし、今後アリアがわざわざパーティーに残る必要はないんじゃ・・・。」
「またそのような事を!なんと仰ってもずっと付いて行きますからね。」
アリアもレスティア教の神官として俺の元に来て、教会にいるより俺の傍にいた方がよっぽど信仰しているレスティアの為になるって言ってた。ただそれって勇者っていう役割を持った人間にこの世界を救おうとする意志を持たせる為、人々へ付けられたイメージがあったからじゃないのか。
勇者がそう言う存在じゃないんだよって教えたら、じゃあやっぱりってことになるんだろうか。
いや、それはないな。
どう考えてもアリアは俺が勇者だから一緒にいるっていうよりも自分の趣味、娯楽の為一緒にいるって感じだな。
もしかすると勇者がそう言う存在じゃないってことより、俺が女性を好きになる様になりましたって言った方が離れて行くのかもしれない。
でもそんな嘘をついても絶対すぐバレそうだ。
俺自身そんな嘘を付き続けれる自信なんてものもない。
仕方がないがアリアはこのままパーティーに居座るだろうな。
まぁいっか。
「ダイゴ様?何か今凄く失礼な事考えていませんか?」
「えっ?そんなこと考えてないよ。どういう理由でこの学園から去ろうかと頭を悩ませてたのだよ。」
驚くほどの勘の鋭さ。ホントにこいつ人の心が読めるんじゃないだろうか?
「そうですか、何となくそのような感じがしましたので。」
「いやいや、何を言ってるのかね。ソンナコトカンガエテナイヨ。」
「まぁいいでしょう。
確かにどういう理由で学園を去るかは問題かもしれませんわね。」
「立つ鳥跡を濁さずじゃないけど、それなりに理由は必要かなって思うし。
でも結局教会に戻るつもりはないんだろ?」
「えぇ、もちろんですわ。どこまでもご一緒します。」
「だとすると2人同時にいなくなるってのもね。
同郷の出身だからそこで何かあったとかにするかねぇ?」
「どうでしょうか、小さな村ですので嘘を付けばすぐにわかってしまうかもしれません。」
「じゃあ駆け落ちしたことにする?」
「私とダイゴ様がという事でしょうか?」
「俺と言うかナイトとになるかな。流石に年齢がね。」
「いえ、この世界ではダイゴ様位の年齢で許嫁がいることもありますし、結婚の約束をしてと言うのは問題ないかと思いますわ。ただ。」
「ただ?」
「私が少年趣味だと言うレッテルを貼られることに納得が出来ませんわ。」
「う~ん、今の趣味もそんな胸を張って言えるようなことでもない気がするけど。」
「ダイゴ様が言いますか?」
「うん、止めよう。なんかどっちも損するだけの様な気がする。」
「えぇ、しかしどうするか本当に考えなければいけませんわね。」
「そうだね、ちょっと考えてみるか。」
お読み頂きありがとうございます。




