魔石作成装置からの~
俺はとりあえず【玩具箱】から魔石を作る為の装置を取り出した。
「ませきさくせいそうち~。パラパッパッパパー。」
1人で某青いロボットの真似して声に出してみた。
【玩具箱】も名前を【四〇元ポケット】とかにすればよかったか。いや、それはやり過ぎか。ホントは【工場】とかの名前にしようと思ってたんだけど固いかなと思ってちょっとポップな名前にしてみたんだけど。
というか今の所部屋には俺1人しかいない。まぁ1人だからこんな馬鹿な真似できるんだけど。
そんな事より魔石作成装置だ。
形は50cm位の水晶みたいな球体があり、その下に30cm四方の台座がついている。水晶みたいなものは中は空洞だ。お土産物で売ってるスノードームみたいな感じと言えばわかりやすいかな。中身は何も入ってないんだけど。
使い方は簡単、球体に触れて魔力を注ぎ込めばいいってだけだ。すると球体の中に魔石が出来上がる。
球体や台座の部分には魔法陣やなんかがびっしりと刻み付けられている。作り上げるのが大変だろうなと思っていたんだが【玩具箱】が勝手にやってくれたんですぐに完成した。
とりあえず試運転と行こうか。
俺は床の上に置いた装置の前に座って、右手を出して装置に乗せる。
それから集中して装置に魔力を流し込む。すると球体の中に放電したような現象が起こる。小さな雷の様なものが水晶の中に現れて、中心に向かって収束する。すると何もなかった中心に小さな粒が出来るのが見えた。初めは米粒ほどの大きさの物が少しずつ大きくなっていく。
俺のMPというか魔素を装置が吸いとり、圧縮して魔石に変えていってるんだ。だから俺のMPは凄い勢いで減っていってる。1秒でそこそこの魔法使いが持つMP全てが消費されるぐらいの勢いだな。そりゃ普通の人には扱えないか。俺は膨大なMPと凄まじいスピードでの回復があるから問題ない。そうこうしている間に水晶の中の魔石は小指の先ほどになった。大体世間に出回っているのはこれぐらいの大きさの魔石だろう。しかし俺が作っているのは純粋な魔石だ。世間に出回っている魔石はある鉱物を核みたいにして作り上げられている。要するに不純物が混じったりしているという事だ。ただ俺の作る魔石は魔素だけを固めている為混ざり物がない、となると世間に出回っている魔石に比べて何倍ものエネルギー量があるってことだ。
魔石の大きさが3cmぐらいになったので装置を止める。と言っても手を離すだけなんだけど。装置から手を離すと空中に浮かんでいた魔石がポトッと球体の中に転がった。俺は台座についてあるボタンを押した。すると球体の下の部分に穴が空いて魔石が台座の中に落ちた。ボタンを押すと穴は閉じる。今度は台座に手を当てて魔力を流し込む。最後の仕上げだ、魔石の外側をコーティングしてる。そのままだと魔素が流出してしまうからな。
キュクロさんから貰ったレシピにはここまでの事は書いてあったが、俺はそれ以外にも台座に別の機能も付け加えている。それは属性付けだ。
以前に魔法具を作る時に属性の魔石を作ったが、その工程をこの装置に機能として付けたんだ。だから魔石を作り上げる瞬間に属性も付加できるようになった。それ属性以外にも魔法陣と魔法を直接刻み込んで魔法そのものも組み込めるようにした。今までは魔法陣を刻んで属性を付けてから、魔法を封じ込めてとそれぞれ別にやっていたがこれまでは一度に出来るようになった。
そんなことを思っていたら処理が済んだみたいで台座の一部分が開いて魔石が出てきた。
出てきた魔石を見てみるが綺麗な黒というか紫というかそんな色の石だった。今まで使ってきた魔石とは色味とかが全く違うな。【鑑定眼】で見てもかなりの魔素保有量を持った魔石のようだ。まぁ俺のMPをかなり注ぎ込んだんだからな、少しぐらいロスが出てもかなりのMP分がこの1つの石の中に存在しているってことだし。装置が使えることが分かったし、後は作っていくだけか。それ以外にも試したいことがあるし、試していこう。
俺が装置を作っている間に他の仲間達はそれぞれ別行動をしていた。
ブランはキュクロさんの所に行って色々と教わっていた。
ガイと、シータ、アリアは一緒に行動している。武器作りに必要な素材集めだ。鉱物とかある程度流通していたりするが、モンスターが素材になる物は自分で手に入れるしかない。俺もスキルで色々な物は作れるんだけど、流石にモンスターの一部なんかは作れないしな。武器の繋ぎの素材だったりになるみたいだ。
ほぼ魔獣の素材になるみたいだけど3人が揃っていれば問題ないだろう。アリアがいるから何かあっても回復出来るだろうし。まぁその前にガイとシータにかかったらそこら辺にいる魔獣なんて一撃なんだろうけど。
結局そんな事を日々を2週間程繰り返した。武器に関してどういう武器が欲しいかって言うのは割と早めに出てきたので材料が集まった順番にブランには作り始めて貰っていた。
そしてやっと全員の武器が完成したと報告があった。さっそく俺達はキュクロさんの所へ行った。
キュクロさんの工房に到着すると机の上には俺達の武器だろう物が並べられていた。
「ブラン、それにキュクロさんもお疲れさまでした。」
「いえ、主こんな経験は初めてでとても楽しい日々を過ごすことが出来ましたわい。」
「そうだな、俺もこんな武器を作ったのは初めてだったから楽しめた。」
俺の言葉に2人はそう答えた。
「じゃあさっそくだけど見せて貰ってもいいかな?」
「えぇ、じゃあまずはガイの刀からご説明しましょうか。」
そう言ってバロンは机の上の一振りの刀を手にした。そしてその刀を持ったままガイの前に移動して手渡す。
ガイは手渡された刀を鞘から引き抜き刀身を見る。
「刀とは初めて打ってみたがこれほどまでに美しいものだとは思わなんだ。
初めて打ったものじゃが渾身の作と言えるじゃろう。」
「あぁ、凄いなこれは。」
ブランの言葉に答えるガイ。
「その刀は斬ることに特化しておる。刀とはそう言ったものらしいしのう。お主の戦い方と合っていると思うぞ。
それと主に言われたた様に魔石も組み込んである。」
そう、刀の鞘と柄の部分には魔石がはめ込まれている。
鞘の部分の魔石は刀の自動修繕の効果がある。もし刀が欠けても鞘に納めておけばある程度自動修復する。ポッキリと折れてしまったりしていては無理だろうけどね。柄の部分の魔石は刀の強度を上げたり、切れ味が上がるような支援魔法が仕込んである。後は気との親和性も図るような機能もついている。
正直この世界にある刀の5本の指にはいる程じゃないかと思ってる、それぐらいの業物だ。
ガイは刀を鞘に納め、腰に付ける。鞘と刀はそこまでゴテゴテした作りじゃないから目立たないだろう。
「その刀の銘はどうする?名前だな。」
キュクロさんがそう言った。武器に名前か、まぁあった方が分かりやすいか。
「主どうしますか?」
ブランが俺に聞いてきた。
「いや、ブランかガイがつけたらいいんじゃないか?」
「いや、わしはそう言うのは疎いもので。良い名など浮かびませぬ。」
「俺もだな。お前は刀ってものを知ってるんだろう。」
「う~ん、まぁね。刀か~。俺の世界で有名な刀の名前と言えば天叢雲剣とか天羽々斬とかかな。」
「いいじゃないか、じゃあこれは天叢雲剣だ。」
ガイがそう言った。ガイがそれでいいって言ったらいいんだけど。三種の神器の1つなんだけどな。
「次はシータか。」
そう言ってブランは先程と同じようにテーブルから2組のナイフを持ってきてシータに手渡す。
「これは主が考えたものじゃ。」
そう、シータの武器は俺が考えた。シータにどんなのがいいか聞いたけどわからないと言われたので俺が考えることにしたんだ。
シータは腰のベルトの背中部分に2本のナイフを差し、そして鞘から引き抜いた。
1本のナイフは刀身は綺麗な白色、もう1本の刀身は漆黒だった。
「それにも魔石を組み込んでおるんじゃ。」
シータが持つ2本のナイフにも柄の部分に魔石を組み込んでいる。
ナイフ自体の強度と切れ味を上げるのはもちろんの事、別の機能も付けている。それはそれぞれのナイフに特殊な効果を持たせているという事だ。
白い刀身の方は斬った敵を麻痺させる、黒い刀身は斬られると毒に侵されるというものだ。
ナイフはどちらかというか手数勝負になったりして、一撃で敵を倒すのが難しい場合もある。シータの場合は別だったりするが、ただそれでもかすり傷でも付ければ相手を麻痺させたり、毒にさせたりすることが出来るのであれば戦い方が更に広がる。少しでも傷付けたらいいことになるし。
問題は色々ある。麻痺無効や毒無効などのスキルだ。この世界にはそう言うスキルを持ってる者もいる。そう言った奴には効かない可能性がある。ただ毒の方はそういう訳でもない。今回の毒は色んなスキルを混ぜ合わせて作った。そんなことしてもいいのかと思ったけど作ってから気付いたので仕方ない。
毒だけど毒じゃない点、闇魔法も混ぜてみている。その点で体内の魔素に直接ダメージを与えたり、魔素を介して体に浸潤していくような感じになった。
作ってみてから怖くなった。毒無効を無効にする毒を作るなんて、どこのマッドサイエンティストだよと。一応試したんだよ、分身体を使ってね。分身体に毒無効のスキルを持たせた上でその毒を注入してみたんだ。普通なら何にも起きないんだけど注入したところから体が黒ずんでいって、HPとMPがドンドン減っていった。なにかの細菌兵器でも使ったのかと思い、見ていてトラウマになりそうだったな。
ただ生物以外は効かない。この世界には人形や鎧だけのモンスターなんてのもいるし。そもそもそんな奴らにナイフが効くのかっていう問題があるからその点は置いておいた。
それから万が一自分や仲間にその毒が着いた時、敵に武器を奪われたりした場合だ。
麻痺の方は支援魔法とかで解除できる。しかし毒の方は支援魔法なんかで解除できない。正確に言うと俺は出来る。毒を作った本人だからな。この毒は闇魔法も使われている、だからその闇魔法自体も解除するような感じで毒を消そうとしたらいいんだ。と言うかそうしないと解毒できない。しかしながら俺以外の人間がそれを知ってる訳はない。だからこの毒を取り除くことは出来ないだろう。ただ仲間皆には魔石を渡している。その毒の解除の魔法が封じ込めてある。万が一その毒が体内に入った場合はその魔石を飲んだら消えるようにしている、緊急用だ。
敵を斬り付けて解毒薬をチラつかせて情報を吐かすなんてことにも使えるかもしれない。ってどんな状況だ、どこのスパイ映画なんだ。
「それの名前は・・・。」
ブランはそう言って俺の方を見た。あぁ、また俺が名前を付けるって訳だね。
2本あるからな。
「じゃあ、白い刀身の方が天照で黒い刀身の方が月詠でどうだ?」
「うん、そうする。」
俺の名付けにシータは納得してくれたようだ。
「次はアリアかのう。」
そう言ってブランがアリアに手渡したのは棒状のものだった。直径2cmぐらい長さ15cmぐらいだろうか。色はなぜかピンクとブルーのストライプカラーだった。アリアの希望らしいけど。
アリアが軽く魔力を込めると先から水が湧き出てくる。太目の薔薇の蔦の様な形になる。
この武器は他の武器に比べて単純だ。棒状の部分に8個の水の魔石を組み込んである。そしてその魔石に【水の女王】などを封じてるんだ。
鞭の武器をどうしようかと思ったんだけど、【水の女王】も使えるんだからそのままでいいんじゃないかと思って設計した。
魔法を唱えなくても少し魔力を込めるだけで【水の女王】が発動して、水の鞭を作り上げる。消費するのも武器の魔石の方だから本人の魔力消費はない。他の魔石には【八岐大蛇】や【凍てつく庭園】なんかも封じてある。鞭の数を8本にしたり、巻き付けた相手を凍り付かせたり出来るようになっている。元々アリアは魔法として唱えられるからそこまで意味はないのかもしれない。でも例えば魔法を封じられるような場所であっても魔石に魔法を封じてるから恐らく使えるだろう。後はこの武器を使いながら別の魔法を使ったりも出来るはずだ。
後は他の皆の武器についている魔石もそうなんだけど、実はそれぞれのMPから作った魔石を使ってある。
魔石作成装置で魔石を作れるようになった。
そこで思いついたのが魔石を作る為にMPを使った人がその魔石を使った場合は、本人のMPを元にして作ったんだから効果が上がったりしないんだろうかってことだ。
思いついたんだから当然実験した。
アリアに協力してもらった。アリアの武器が一番簡単に作れるし。時間がかからないだろうってことだ。試作品として俺が作った魔石を組み込んだ武器と、アリアが魔石作成装置を使って作った魔石を組み込んだ武器を用意した。そしてどちらもアリアに使ってもらった。するとアリアが自分で魔石を作った武器の方が威力や持続時間のが上だった。何かしらの親和性というか、エネルギーの引き出す効率か、使う為の効率が違うんだろう。
そして更にもう1つの効果も発揮した。
魔石は基本使い捨てだ。封じ込めた魔素を使い切ったらそれで使い物にならない。しかしギルドカードに使われている技術に持ってる人の魔素を吸収するという技術があった。それを魔石に刻み付ければ周りの魔素を吸収しながら半永久的に使えるものが出来るんじゃないかと思った。しかしやってみたけど出来なかった。理由はよくわからなかったけど、吸収は出来るけど極々少量ぐらいしか出来ないってところだろう。
それがだ、魔石作成装置で作った魔石は不純物がなくて作った本人の魔素から出来ている。そこにさっきの技術を使ってみたらなんと成功した。
その魔石を作った本人から魔素を吸収するという機能を確立することが出来た。
普段使っていない時に魔石が使用者のMPを吸収して溜め込んで、武器使用時にそのMPを動力として使うという事が出来るんだ。これによって半永久的に本人が身に付けて使ってる限り魔石を入れ替えたりする必要がなくなった。
うん、なんかヤバい技術の様な気がする。ある意味半永久的に使える動力を作ってしまったってことだもんな。まぁ前から言われている様に魔石を作ったりできるのって俺たちぐらいなもんだから、俺達が使うようなものにしか使えないってことなんだけどね。
「それで名前は何と?」
ブランに言われる、またか。
「アリアは自分でつけなくていいのか?」
「そうですわね、武器に名前を付けろと言われても思い浮かびませんわ。」
う~ん、水で女性ってことか。
「アプサラスでいいんじゃないか?俺の世界で水の精とか天女とかの意味を持つ存在だったと思う。」
「まぁそれは素敵ですわね。それにしますわ。」
昔ネットで神様の名前とか色々検索していてよかった。
しかし武器の名前がかなり中二っぽくなってきたのは俺のせいか・・・。折角のファンタジーの世界にいるんだからいいとするか。
お読み頂きありがとうございます。
こういう武器だったり、スキルや魔法を考えるのが一番楽しい気がします。
いや、ホントはイチャコラを書く方がいいんですが、なかなかそんな場面は出てこないですね。




