これからの話
俺が飯を食べ終わった後に皆でバロンさんを訪ねてギルドにやってきた。
ギルド内は興奮冷めやらない感じか、多くの冒険者が酒場というか受付の前まで溢れかえっていた。
「すいません、バロンさんって今何されてますか?」
酒場には姿が見えない様なので受付の人に聞いてみた。
「ギルドマスターは自室に戻っていらっしゃいます。先程までこちらにいらっしゃったんですが。」
受付の人はそう答えた。さっきまでってことは寝ずにずっと騒いでたってことか。
まぁ偉業を達成したってことだしな、それぐらいの騒ぎになるか。
「少しお話したいことがあったんですが、出直した方がいいですかね?」
受付の人にもう一度確認する。
「いえ、パーティのメンバーの方がいらっしゃったら直接部屋に通す様に聞いています。
ですからどうぞ上がっていってください。」
受付の人はそう言ってくれた。バロンさんにも挨拶行くことは伝えておいたから、ちゃんと受付の人とかにも言っておいてくれたんだろう。
俺達は階段を上がってギルドマスターの部屋を目指した。
しかし昨日から寝てないんじゃないのか?大丈夫なのか?
そんなことを思いながらドアをノックしたが、帰って来たバロンさんの声は割と元気そうだった。
「失礼します。」
俺はそう言って部屋の中に入った。後から皆もついてくる。
バロンさんはソファに座っていた。しかし部屋の中に酒の匂いが充満している。
「【浄化】」
俺は勝手に魔法を唱えて部屋の中の空気を綺麗にした。
「おぉ、すまんな。」
バロンさんが手を上げてそう言った。
「いえ、昨日は俺達はバロンさんに後の処理を任せて帰ってしまいましたし。あのままだったら俺達もそうなっていたってことでしょう。」
バロンさんの顔を見てそう言った。寝てないからか少し目の下にクマがあって、顔が少し赤い。
「いや~、流石にここにいた奴から勧められた酒を全部飲んでたらな。」
「全部飲んだんですか?」
「まぁな。しばらくは使い物にならんだろう。でももう迷宮攻略も終わったししばらくはやることないからな。」
「それはそうですね。酔い覚ましましょうか?解毒の魔法で多分アルコール抜くこと出来ると思いますよ。」
「素面で聞いた方がいい話か?」
「どうでしょう。一応お別れの挨拶ですけどね。」
「じゃあ、頼む。」
俺はバロンさんに頼まれたので支援魔法の中の解毒の魔法をバロンさんに掛けた。すぐにバロンさんの顔の赤みは消えた。
「すまない、助かった。」
バロンさんは座り直してそう言った。俺達も目の前のソファに座らせてもらった。
「改めて、今までお世話になりました。バロンさんのおかげもあって迷宮を攻略することが出来ました。」
「いや、俺の方こそ。まさか迷宮を完全攻略する瞬間を一緒に味わうことが出来るとは思わなかった。
礼を言う、ありがとう。」
「それで一応これからの予定なんですが。俺達はザールに戻ってキュクロさんに迷宮の攻略したことを伝えて武器の作り方を学ぼうと思います。恐らくはブランに任せることになるでしょうが、しばらくはザールに留まる予定です。その後魔法大国のスラグスルへ行って知識の神に会おうと思っています。」
「スラグスルへ?あそこに知識の神がいるのか?」
「えっ?えぇ、そうみたいです。アリアが知っていたので。バロンさんはご存じなかったんですね。」
「あぁ、スラグスルには行ったこともないし、国の中の話もあまり聞かないからな。あそこは冒険者ギルドもないし。」
「そうなんですね。」
「おう、あるのは魔法師ギルドだ。必要があればそっちに頼んだりしてるんじゃないか。
だから冒険者も国の中にほとんどいない。冒険者として国には入れないみたいだしな。
そう言えばどうやって入るつもりだ?」
「えっと、それはアリアが伝手があるって。」
俺はそう言ってアリアの方を見た。
「えぇ、私は回復魔法を魔法大国スラグスルの魔法学園で習いましたの。その為国の中もそれなりに知っています。
ダイゴ様が国の中に入る方法としてはいくつかあるとは思います。
1つは勇者であることを公言して、知識の神に会いたいと直接伺う。
ただこの場合でしたら勇者であることでスラグスルに取り込まれる可能性もありますわね。知識の神に会わせるから自国に属するようにとかでしょうか。ダイゴ様にはお勧めいたしませんわね。
2つ目は勇者であることを隠して、魔法師として国に入るという事ですわね。
ダイゴ様はほぼどんな魔法でも使うことが出来るようですし問題ないでしょう。ただ普通に魔法が使えると言っても魔法師ギルドに入るなどしか出来ないでしょう。そうなっても知識の神には会えないかもしれません。」
「そうなのか?」
「えぇ、知識の神は国の中枢である国立図書館の一番深い所にいらっしゃるというのが、私が聞いたお話ですわ。国立図書館へ入館できるのは一部の者だけ。魔法師ギルドに登録したからと言っておいそれと立ち入れる場所ではありません。」
「じゃあどうするつもりだったんだ?」
「私の考えといたしましてはレスティア教からの推薦としてダイゴ様を魔法学園に入学させる方法でしょうか。」
「はぁ?魔法学園に入るの?俺が?」
「左様です。魔法学園は魔法を習得する以外にも新たな魔法の開発や、新しい利用方法などの研究もしています。そこで認められれば国立図書館への入館も認められるようになるのです。図書館には研究に必要な本などがございますからね。」
「いや、しかしな。俺が学園にねぇ。」
「他の方法があればよろしいんですが、私が思いつく中ではその案が一番妥当かと思いますわよ。
勇者であることも隠せますし、変に波風立てなくて済むかと思うのですが。」
「でも認められるまでにはかなりの時間がかかるんじゃないか?」
「どうでしょう?ダイゴ様ならさほどかからないと思いますわよ。今での色々な魔法を作ったりされていますし。それをいくつか伝える様にしたら直ぐではないでしょうか?
ただ私も確実なお話は出来ません。私も学園では回復魔法を習っただけなので、図書館へ行けるような一握りの人間ではありませんでしたもの。」
「そうだよな、やってみないと分からないか。
そう言えばレスティア教会から推薦してもらうって、俺の事教会の人間は知ってるのか?」
「いえ、存じてないと思います。私は直接神託を頂いたので知っておりましたが、他の者は知らないでしょう。」
「うん?アリア他の人に神託受けたこととか言ってないの?」
「えぇ、伝えて信用されるかどうかもわかりませんでしたしね。」
「じゃあ、どうやって教会から離れたんだ?」
「私の一存で、という事でしょうか。勝手に出てきたと言った方がよろしいでしょうかね。」
「それって教会で失踪扱いになってないか?」
「なっているかもしれませんけど問題ありませんわ。」
「どうして?」
「こうして勇者様にお会いすることが出来て、一緒に行動させてただいているのですもの。
レスティア教では勇者様はレスティア様に次いで位の高い方なんですよ。
ですからその勇者様の為に教会を離れたってことを伝えれば問題ないという事ですわ。」
「だったらいいんだけど。でも教会に紹介してもらうってことは俺の正体も言わないといけないってことだよな?」
「それは申し訳ないですがそうなるでしょう。しかし勇者様の意向を無視することはありませんから、正体を秘匿にして欲しいと仰ればその通りにするでしょう。一部の人間だけが知るだけですわ。」
「そうか、まぁまだ恐らく先の話になるだろうし、また別の時に話をしよう。
すいません、バロンさん。こちらで勝手に話をしてしまって。」
「いや、気にするな。お前たちがどうするか気にはなるしな。一時と言えでもパーティのメンバーだったんだ、俺に出来ることがあるんだったら遠慮なく言ってくれ。」
「ありがとうございます。それで、やっぱりバロンさんはこのまま・・・。」
「あぁ、ここでギルドマスターを引き続きやっていく。
色々とやらない事も出来た。一応最終階層までの内容も俺はわかってるから、迷宮に挑む冒険者の奴に色々とアドバイスできるしな。後は最終階層にはもうお宝がないことも知ってるのは俺ぐらいになるだろうし。」
「そう言えば【青龍】も迷宮から離れるって言ってましたもんね。そうなると最終階層の攻略報酬はなくなったままなのか。」
「そうだな、それは流石に可愛そうだからそこまで行きそうな奴には事前に伝えてやらないといけないだろうし。まぁ俺たち以外に60階層以降を攻略していける奴なんてほぼいないだろうがな。
ここで迷宮を攻略しようとしてる奴の面倒を見てやることにする。」
「そうですね、またこの町にも訪れた時にはよろしくお願いします。
奴隷契約の方は破棄しますね。」
「何?」
「いや、流石にパーティにいる間だけでしょう。ずっと俺の奴隷ってことになってる訳にもいかないでしょう?それにもうしてなくても戦い方も確立したみたいだし。」
「ん~、しょうがねぇな。まだまだ何か得るものがあると思ってたんだけど。」
「しょうがないなんですね。奴隷契約解除しようとしてそんな事言われるとは思いもよりませんでした。
じゃあ。」
俺はそう言って右手をバロンさんに向ける。するとバロンさんの体から光の粒が溢れて、俺の右手に集まってくる。集まった光の粒は一枚の紙になった。俺とバロンさんの奴隷契約の時に交わした用紙だ。俺はそれをビリッと破った。すると破れた紙は散り散りになり光の粒を残して消えていった。
「これで契約は解除しました。師弟契約のも破棄しておきますか?もうガイとさほどスキルのレベルも変わらないでしょう。」
「そうだな、こいつが師匠って言うのもな。」
「てめぇ。」
「こんなとこで剣を抜かないでくれよ。」
俺はそう言ってガイを止めてからもう一度バロンさんに右手を向けた。右手に現れた紙をガイに渡す。師弟契約はガイとバロンさんが行ったものだから俺は破棄できない。ガイは渡された紙を破る。先程と同じように紙は光になって消えた。
「これで一応全部済みましたよね。
じゃあ俺達はそろそろ移動しますね。また何かあったら訪ねてきます、お元気で。」
俺はそう言って立ち上がり。右手を差し出す。
「あぁ、お前達もこれから色々大変な事があるだろう。何かあったら力になる、連絡してくれ。」
バロンさんはそう言って俺の右手と取り、固く握手しながら言った。
「あぁ~、なんだ。お前といて退屈はしなかった。しかし、ここに残るだなんてな、可哀想だな。俺はこれからまだまだ強くなっていくっていうのによ。」
ガイがそう言う。
「そうだな。お前ならまだまだ強くなれると思う。頑張れよ。」
「なんだ?いつもと違ってそんな事言うなんて、気持ち悪いな。」
「強くなるって点でお前は人生経験が全く足りてない。その点もうちょっと考えていけよ。」
「うるせぇ。」
「お前のとこには悩める若人がいるんだ。しっかり支えてやれるような大人になれよ。」
「うっ、わかってる。」
バロンさんからの言葉にそっぽを向いて答えるガイ。ホントに仲いいな、この2人。
「世話になった、お元気でのう。」
「色々とありがとうございました。」
「バイバイ、またね。」
ブラン、アリア、シータは意外にあっさりとした挨拶だった。
「それからダイゴ。」
「はい。」
「神様が言ったことはあんまり気にするなよ。今は無理でもお前だったらきっと魔王にも勝てるようになる。一緒にいた俺が保証してやるから頑張れよ。」
「ありがとうございます。」
バロンさんはやっぱり凄いなぁっとちょっと思った。
そうして俺達はクレタの町からザール向かう事にした。
お読み頂きありがとうございます。
今後の話でスラグスルの魔法学園の話が出てきました。
皆さん分かりますよね?そう、学園モノです。
ただもうちょっと先の話になると思います。色々とその間のお話も結構考えてあるので。




