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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
148/237

迷宮攻略42

「話があるってどういうことですか?」



 俺は今ギルドマスターの部屋にいた。

 目の前にはバロンさん、周りにはガイ達仲間もいる。

 90階層を攻略して、宿で手に入れたレシピを使って魔石を作る為の装置?というか道具作りをしていた時にバロンさんから呼びだされた。

 その為俺達は皆でバロンさんの所へ集まったんだ。



「いや、何。一応お前の耳に入れておいた方がいい情報を手に入れたんだよ。」


「はぁ、情報ですか?」


「そうだ、一応俺もパーティの仲間だからな。出来ることはやってるってことだよ。」


「ありがとうございます。それで一体どんな情報なんですか?」


「それがな、【軍事王国 カスト】って知ってるか?」


「一応の知識としては。国で軍隊を保有してるんですよね?国民の大部分も何らかのその軍に携わった仕事をしてるとか。」


「そうだ。その国がな、魔王討伐の為に軍隊を【クリプス】に派遣したってことだ。」


「えっ!?」



 俺はあまりの事に言葉を無くす。



「それってどういうことですか!?」


「言った通りだ。一応知ってる限り順を追って説明してやるよ。


 お前が勇者だってことを俺は知ってるから、念の為勇者や魔王絡みの情報が入ったら俺に知らせる様に知り合いの奴には伝えておいたんだ。」



 そうだったんだ。バロンさんがそんなことしてくれてるなんて知らなかった。



「でだ、俺達が迷宮の攻略をしてる間に【軍事王国 カスト】が他の国にも大々的に魔王討伐に向かうっていう事を公表したらしい。」


「なんでそんなことに?」


「まぁ色々と思惑はあるんだろうがな。

 勇者が召喚されたことはグラントの国王が公にしてる。

 ただいつまで経っても魔王討伐に動いているとかなんて話も出てこない。」


「なんかすいません。」


「いや、別にダイゴを責めてる訳じゃないぞ。

 その他にも2人いるんだろう?勇者って奴が。」


「そうですね、俺も面識はあります。」


「で、グラントの国王は今はまだ勇者は力を付けている最中だって言って他の国には何の情報も渡さない姿勢でいるらしい。

 それに業を煮やしたカストの国王がだったら自分の国の軍隊で討伐させるってことを言いだしたらしいぞ。」


「そんなことが本当に出来るでしょうか?」


「さぁな。正直カストが持つ軍隊って言うのがどれほどの強さかって言うのはわからないからな。表だって国同士が戦争したりってのはないし。だからどれだけの力を持ってるのかってことは見たことがない奴ばっかりだろう。強力な攻撃用の魔法具だったり魔法なんかを開発してるって話は聞くが、それが他国に出回ることはないしな。情報統制がしっかりしてるみたいだ。」


「しかしいくら自分達に力があるからって言ってもどんな力を持ってるか分からない魔王に立ち向かうなんて。」


「そこら辺は推測でしか言えないけどな。

 カスト自体が結構最近に出来た国なんだよ。まぁそれでも100年経ってないぐらいだけどな。

 ただ前の魔王が勇者に倒されたのってそれより前って話だ。

 だからカストの奴らは実際の魔王や勇者がどれぐらいの強さを持ってたか知らないんじゃないか。」


「そうだったんですね。」



 俺も一応の知識はあったが城にいた時に少し習ったくらいだ。建国何年とかは知らない。



「国としての思惑もあるんだろうけどな。いや、国王としてのか。」


「どういうことですか?」


「今の世界はそれなりに国同士の均衡は保たれてる訳だ。昔は色々あったみたいだけどな。

 そこで軍隊を持ってる国があって、国民殆どが軍事関係の仕事しかしてない。

 どうやって国としてやっていく?」


「あぁ、そう言えば。」


「しかも自分達が作った技術はほとんど外部に漏らさない様にしてる。それじゃ他の国から金を得たり、食い物なんかをどうやって手に入れるんだ。今は自分の国にある資源で何とかなってるかもしれないが、その内尽きるかもしれないだろ。

 そこでだ、大っぴらに攻め込めるところが出てきたってことだ。」


「クリプスの大陸自体を手に入れようとしてるってことですか?」


「あぁ、俺はそうじゃないかと思ってる。

 魔王を討伐して、後の魔族も掃討すれば自分達の物に出来るだろう。他の国も文句なんて言えないだろう、魔王を倒したんだ。あの大陸は手付かずと言われてるから色んな資源なんかもあるかも知れない。当然、魔族なんかが使ってたものは戦利品として全部頂戴するんだろうな。」


「そう考えるとそうかもしれませんね。」


「推測だがな。ただ実際に軍をすでにクリプスに向けて送り出したみたいだぞ。

 お前も勇者なんだしこのことは伝えておいた方がいいと思って今日呼びつけたんだ。」


「そうだったんですね。ありがとうございます。」


「で、どうするんだ?」



 バロンさんに聞かれた。



「どうするですか?」


「一応聞いておこうかと思ってな。」


「今のところは何もしないってことしか言えないですかね。

 いきなり俺が勇者だって公言してその軍隊に参加するって言うのも違うと思いますし。逆にカストからしたら今勇者が出てきて欲しくないんじゃないですかね。」


「そうかもしれないな。」


「正直なところ俺はそのカストの軍が魔王を倒してくれればそれはそれでいいんですけどね。」


「そうなのか?」


「えぇ、別の俺が魔王を倒したいと思ってこの世界に来た訳じゃないですし。この世界の人で事が済むならそれでいいと思います。ただ。」


「ただ、なんだ?」


「多分魔王を倒すのは無理なんじゃないかなって思います。」


「ほぉ、それは一体どうしてだ?」


「単純な話ですよ。この世界の人が持ってる力で魔王が倒せるんだったら、わざわざ俺が召喚されることはないかなって思っただけですよ。俺が召喚される時には神レスティアもカストって国が軍を持ってることぐらいは知ってたでしょうしね。でも俺は特に何も聞かされずに、レスティアに魔王を倒す様に言われましたから。」


「なるほどな。」


「まぁ俺が召喚されてから大分経ってますし、その間にカストの軍が力を付けたって可能性はありますけどね。

 結局俺は今俺がやるべきことをするだけですかね。ここの迷宮を全部攻略したらこの後どうしたらいいか何となくわかる気がしますし。」



 俺はそう言ってアリアの顔を見た。この迷宮を全て攻略するようにと言ったのはアリアだ。正確にはアリアを通して神レスティアが言ってるのかもしれないけど。

 アリアも俺が言わんとすることが分かってるのか俺の言葉に頷いた。



「じゃあまぁ、俺達のパーティはこれまでと変わらず迷宮攻略をするってことだな。」


「そうですね。」



 俺はバロンさんの言葉に頷いた。



「良かった良かった。」


「何がですか?」



 バロンさんが笑顔でそう言ったので、俺は聞いた。



「いやな、この情報を知ってお前に言おうかどうしようか考えたんだよ。

 もしかしてこのことを知ったお前が迷宮攻略を中断して、魔王討伐に向かったらどうしようかってな。」


「あぁ、そういう可能性もあったってことですね。」


「そうしたら折角ここまで攻略してきたのにもったいないだろ?後10階層どんな敵が出てくるのか楽しみじゃないか。いや、もし魔王討伐に向かったお前について行った方が歯ごたえのあるやつと戦えたってことか・・・。」


「どうでしょうね、軍隊と一緒に戦うんだったら命令されるんじゃないですか?こうしろ、ああしろって。」


「そうか、その可能性もあるか・・・。それは面倒だな。」



 いや、バロンさんのその戦闘狂(バトルジャンキー)的な考えの方が面倒です。どんだけ戦いに餓えてるんだよ。って迷宮攻略した後ちゃんとギルドマスターに戻れるのか?このまま俺達に付いてくるとか言い出さないよな。それはそれで心強いかもしれないけど。



「じゃあまぁ俺達はこのまま迷宮攻略を続けるってことでいいんだな。」


「そうですね。とりあえず100階層まで攻略するのが目標ですね。」


「そう言えば、91階層からはいつから攻略を始めるんだ?様子も見に行ってないが。」



 バロンさんにそう聞かれた。

 そう言えば90階層で出たレシピに驚いて91階層の様子を見ずにギルドまで帰って来てしまっていた。90階層からどんな階層かはまだ確認していない。



「正直どうしようか考えてるんです。

 今の皆の力ならそのまま進んでもいいんじゃないのかと思ってるんです。今更何か準備しないといけない様な物はない気がするんですよね。

 俺が手に入れた魔石を作るレシピも必要になる物も結構あって今の段階では作れるようにはならない気がするんですよね。

 仮に作れるようになっても現状新しい魔法具を作るって言うのも・・・。思いつかないんですよね。魔法が封じられる階層じゃない限り魔法具を作るよりも普通に戦った方がいいと思います。」


「そうなのか?そう言えば100階層で待ち受けてるのって・・・。」


「俺の予想は四神最後の【青龍(せいりゅう)】だと思います。」


「【青龍(せいりゅう)】って強いのか?」


「どうでしょう、一応俺の世界では水だったり海を司るとか言われてます。多分それになぞらえてると思うですけど。今までの幻獣を見てきたパターンだと水を操ったりするってことでしょうか。」


「じゃあ今までの幻獣とはそう大差ないのか?」


「そこなんですよね。四神がどれが強いとかの差は特になかったと思うんです。でもそれだったらわざわざ最後の100階層なんかに配置しないとは思うんです。だから別の何かがあるとは思ってはいるんですけど、何かまではわからなくて。」


「まぁ龍となるとな。この世界では最強クラスの力を持ってるとされてるからな。」


「そうなんですね。」


「あぁ、この世界で神を除いては一番強い存在だとはされているな。色んな種類もいるし、長く生きているやつもいるからな。だから俺も気を龍の形を取らせてるんだからな。」



 そう言えばバロンさんも結構最初から気を龍にまつわる形を取ってたりしてた。他の生物とはかけ離れた強さを持ってるんだろう。

 しかしあまり【青龍(せいりゅう)】がどんな力を持っているかって想像がつかないんだよな。というかスタンダードな感じしか思い浮かばない。水を操るとか、爪とかで引っ掻く、鋭い牙で噛みつくとかそんな感じ。それが迷宮最後のボスって言うのもなんか違う気がするんだよな。

 でもこればっかりは実際に戦わないと分からないし。

 そう言えば91階層からも特殊な階層かもしれないか。水系だったら階層一面水で足場がないとか。だけどそれだったら前に作った【水駆(みずかけ)】で何とかなりそうだし。



「とりあえず今度は皆で一度91階層に行ってみましょうか。それで攻略していけそうならそのまま進んでみるってことで、どうでしょう?」


「そうだな。何かあれば皆で攻略方法考えたらいいだろう。ダイゴばっかりが頭使わなくてもいいだろう。」



 俺の提案に頷くバロンさん。他の皆もそれでいいみたいだ。



「じゃあ、明日にでも91階層からの攻略を始めましょうか。」



 俺はそう言って話をまとめた。


 ただ心のどこかでさっきのバロンさんの話が引っかかってる。

 もしかして俺が勇者であることを公表していたらもうちょっと違う事になってたんだろうか。

 今は考えても仕方ないか。今は迷宮を攻略することだけ考えることにしよう。

お読み頂きありがとうございます。

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