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召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
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迷宮攻略38

「じゃあ、行くとするか。」


「そうだな。」



 バロンさんが声を掛けガイが答える。

 そして2人同時にキングへと向って行った。

 バロンさんが先行する。



「【龍尾閃(りゅうびせん)】」



 剣に気を溜め、今度は横から斬り付ける。

 キングは反応して盾をバロンさんの剣に合わせる。

 龍の尾を模した気を纏った剣がキングの盾にぶち当たる。リザードマンを一撃で吹っ飛ばし、倒した技もキングに防がれる。

 しかしその後ろからガイがキングに向かう。

 盾でバロンさんの攻撃を受け止めたキングは直ぐに態勢を変えることは出来ない。

 ガイがキングの側面に回って縦に剣を振った。狙うは盾を構えているキングの左腕だ。

 ガイの剣はキングの左腕の肘の内側を狙っている。可動部で他の部分に比べて頑丈そうな鎧は覆っていない。

 しかしキングは腕を動かし肘の部分でガイの剣を受ける。

 ガイの剣は肘を守っている部分に防がれた。やっぱり鎧もそれなりの強度を持ってるみたいだ。

 剣が通用しなかったのが分かったのかガイとバロンさんがキングから一旦距離を取る。



「鎧も盾と同じようにかなりの強度があるみたいだ。ただ盾ほどではない様だがな。」


「なるほどな。」



 ガイがバロンさんにそう告げた。

 ガイの剣を受けたキングの肘の部分は、盾に付いた傷よりも少し大きな傷がついていた。



「しかもあいつ関節部で受けようとはしなかった。やっぱり鎧の関節の所は他の部分より脆いんだろう。そうじゃなかったら庇わないはずだからな。」


「予想どおりは予想通りだが。関節部だけ狙うって難しくないか?」


「それはそうだが他に方法でも?」


「試してみたいことはある。」



 ガイが分析したことをバロンさんが聞いて何か思いついたみたいだ。



「それは面白そうだ。なんかダイゴみたいだな。」


「そうかもな、まぁやってみるさ。」



 ガイが笑うとバロンさんも笑って答えた。



「俺はどうしたらいい?」


「ちょっくら気を溜めるからしばらく相手しておいてくれや。」


「わかった。」



 ガイはバロンさんに頼まれ、キングに向かって突っ込んでいった。

 ガイは【瞬行(しゅんこう)】を使ってキングの傍に一瞬で現れて剣を振るう。正確に膝裏や肘の内側などの鎧が薄い部分を集中的に狙う。

 キングはガイの狙いが分かるのか腕を身体に寄せ、膝をくの字に折り、体の内側に向ける。そしてガイの動きを見て体を動かし狙いをずらしていく。

 【瞬行(しゅんこう)】で移動しているのによく反応できるな。

 しかしガイは斬り付けた次の瞬間には別の場所に移動しているのでキングも反撃をするとまでは行かない様だ。ずっとガードに回っている。



 その間にバロンさんは正眼の構えを取っていた。

 かなり集中して剣に気を込めている様だ。剣から気が目に見えて溢れているのが分かる。



「よし、ガイ行くぞ。」


「おう!」



 バロンさんからの声がかかる。

 ガイはそれに答え一段階ギアを上げたようだ。

 今まではキングの事を斬り付けていたが、今度は周りを【瞬行(しゅんこう)】で移動し始めた。

 ガイが移動したところに赤色の光る線が残る。

 これって以前に見たことがある。

 赤い光る線はキングの周りを取り囲む。今回は天井はないみたいだが、最終的には格子状の光る壁がキングを取り囲んだ。



「【赤光刃・斬鬼牢しゃこうじん・ざんきろう】」



 キングの四方に現れたガイが剣か4つの剣撃を放つ。剣撃が光る格子状の壁に当たると壁は動き出し、キングに向かって押し寄せる。

 キングはその場から動けずにガードの体勢を維持し、迫りくる光の壁を押し止める。ガイの技だけではキングを動かない様にその場に繋ぎとめるだけの様だ。しかも光の壁に少しずつヒビが入る。



「任せとけ。」



 バロンさんがそう言って正眼に構えた剣を上に振り上げる。



「【奥義・双龍咬破おうぎ・そうりゅうこうは】」



 バロンさんが叫び剣を振る。

 するとバロンさんの剣からは2匹の龍を模った気が放たれた。

 一方は白。もう片方は黒。

 2匹の東方で見られる蛇の様な姿の龍が、バロンさんの剣から現れてキングへ向かう。

 2匹の龍はそれぞれ左右に別れてキングに向かって突っ込んでいく。

 キングは赤い光の檻に閉じ込められてまだ動けないでいた。

 そのキングに向かい体長2m程の白と黒の龍が襲い掛かった。

 2体の龍はまるで鎧などないかの様な感じで、キングの体の中へスルリと姿を消した。

 すると、キングの体がドンッと大きく脈打つように揺れた。

 何が起こったんだ?

 俺はそう思ったが、それよりも驚くことが起きた。

 まるで積み木が崩れる様な感じでキングの体が崩れ落ちた。

 盾と剣が地面に落ちて倒れた。そして鎧の腕や足、胴体、そして兜も全てが宙に放り出されたように地面に落ちた。

 リザードマン・キングを倒したってことか?あの鎧は魔素を作って固めたものじゃなかったからキングが倒れても後に残ったってことなんだろうか。

 俺は【索敵(レーダ―)】でこの階層を全て確認する。だがキングについての反応はどこにもなかった。すると今まで周りにいたリザードマン達もその姿を消していった。キングを倒すと他のリザードマン達も一緒に消えていくってことか。

 どうやらこの階層も攻略出来たってことだ。とりあえずガイ達の所へ向かおう。



「ブラン終わったみたいだから、ガイ達と合流しよう。」



 俺は直ぐ側にいたブランに声を掛けた。



「わかりました。では先に行っておりますわい。」



 ブランはそう言って俺の影に飛び込んだ。分身は既に【隠匿(インビジブル)】とかのスキルを解いている。【影移動(シャドームーブ)】で移動できる。

 俺はそれから砦の入り口のところにいたアリアの所へ【影移動(シャドームーブ)】で移動し、アリアも影に入って貰ってから最後に俺も移動した。



「お疲れ様。」



 分身体の影から出た俺は目の前にいたガイ達にそう言った。



「いやいや、あれぐらいは軽いってもんよ。」



 バロンさんが剣を担ぎながら笑ってそう言った。



「しかし最後のはどうやったんだ?」



 ガイが気になっていたのかバロンさんに聞いた。



「うん、それは俺も気になった。どうやってキングを倒したんですか?」



 俺も気になっていたのでバロンさんに質問する。



「ん?あれか、あれはだな簡単に言うと内部破壊技って言えばいいか。

 前に言っただろ、【気功術】ってフランドベルドでよく使われていたって。」


「そうですね、聞きました。」


「それでフランドベルドでは気を使って色んな敵に対しての戦い方の研究ってのも進んでるんだと。」


「宗教国なのに?」


「宗教国だけどな。まぁそこは俺も良くは知らん。

 ともかくだ、その敵の種類の中には分厚い鎧を着た相手も含まれるんだ。」


「なんだか、それって・・・。」


「俺も思う所はある。ただ今はそれは置いとくぞ。

 でだ、分厚い鎧を着ている敵をどう倒すかって話だ。それは気を鎧の中に通して、中で爆発させるんだと。」


「なるほど、何となくわかりました。」


「確か光魔法なんかは物はすり抜けるんだろう?」


「まぁそうですね。」


「で、気も魔法とそう大差ないってことだ。じゃあ鎧とかを通り抜けることは出来るはずだ。それで俺の作った気の龍は鎧を通り抜ける。ただ通り抜けても意味ないから2匹の龍がかち合ったところで持ってる気の力を爆発するようにしてた訳だ。」



 バロンさんが説明してくれる。そう言えば前に気は魔法と大差ないって話した時に光魔法とかの話も一応しておいたんだっけ。



「それでそんな技を思いついたんですね。」


「あぁ、さっきな。」


「さっきですか?」


「そうだ、戦ってる時にな。」


「えっと・・・、それは。」


「いつもダイゴもそうだろ?なんか思いついたことがあるとか言って色々やってるじゃないか。」


「そうかな~。」



 俺がそう言うと皆うんうんと頷いてる。あれ、そう言えばそんな感じだっけ。

 


「しかしよくそんなの思いつきましたね。」


「お前、俺の事バカだと思ってるだろ?」


「いやいや、そんなこと思ってませんよ。」



 俺は慌てて否定する。戦闘狂(バトルジャンキー)だとは思ってるけど。



「【玄武(げんぶ)】では役に立てなかったからな。外が硬い奴を倒せるようにならないとな。」



 バロンさんがそう言った。そう言う事考えてたんだ。



「そうだな、俺も何か考えておこう。」



 バロンさんの言葉を聞いてガイが言った。



「そうそう、俺みたいに頭を柔らかくしてだな。」


「ダイゴの真似だろ?」


「なんだと?」



 ガイの台詞にバロンさんの額に青筋を立てる。



「次の階に行く前にちょっくら揉んでやるか。」


「俺も大して疲れてないしな、相手してやろうか。」



 そう言ってバロンさんとガイが剣を構えようとする。

 いやいや、さっきまで楽しそうにキングと戦ってたじゃないか。



「いや、ちょっと先に進みましょうよ。」



 俺は2人に声を掛けるが、俺の言葉を無視して2人は剣を合わせた。

 どうなってるんだとオロオロしてたのは俺1人だった。

 ブランやアリア達はヤレヤレと言った感じで静観している。



「2人を止めないと。」



 俺はブラン達に言う。



「いつものことですじゃ。」



 ブランが答える。



「そうですわね、最近よくある光景ですわね。」



 アリアもそれに続く。



「そうなの?」



 俺がアリアに聞く。



「えぇ。最近事ある毎にこんな感じでしたわ。御2人で気の戦い方を一緒に修行し出してからは。

 新しく色々なことが出来るようになって楽しんでいらっしゃるんじゃないでしょうか?

 同じぐらいの力を持ってらっしゃる方も他にいらっしゃらないみたいですし。」



 なるほど。ライバルってことなんだろうか。あの2人ぐらいの力を持つって人間はなかなかいないもんな。しかも同じ様な戦い方だし。ブランやアリアはどちらかというと魔法主体だし、シータも戦い方は全然違うし。


 しばらく剣を打ち合せていた2人が剣を収めて肩を組んで俺達の方に戻ってきた。

 なに、この青春の1ページみたいなの。爽やかに2人で笑ってるし。



「あの光景とかは好物ではないの?」



 俺はアリアに小声で聞く。



「悪くはないのですが・・・。やっぱり片方にでも、少しは友達以上の感情を持って頂いていなくては。」


「そうか・・・。アリア自身男性に興味ないの?前に着替えしていないかと思って俺達の部屋に入ってきたりしてなかった?」


「それは、違いますわ。あの場では着替えをしているガイ様やブラン様を、ドキドキしながら見てるダイゴ様を見たいが為に行ったのですわ。そしてその光景を私がドキドキして見るのが良いのではありませんか。勘違いなさらない様にして下さいまし。」


「いや、うん。謝りたくは全くないんだけど一応言っておく。なんか御免。

 アリアの事を見くびっていたよ。」


「どういう意味かは分かりませんし、聞きたくもございませんので謝った理由についてはお聞きしません。」



 駄目だこんな話をしてる場合じゃない。

 次の階層に行ったらゆっくり休憩できるだろうか。次はいよいよボス戦っぽいしな。

お読み頂きありがとうございます。

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