迷宮攻略37
とりあえず俺は第二段階に作戦を移行させるためにブランに声を掛けた。
「ブラン、やっぱり俺の考えた通りだった。相手の数は減っていない。このままなら前線を押し上げていくのは難しそうだ。やっぱりプランBにする。」
「あい、分かりました。」
ブランが頷く。
そしてその声に反応して戦場にいる岩の巨人が動いた。
今までは後ろにいた岩の巨人がその場から走り出した。途中にいるリザードマンは気にせずに突進する。岩の巨人は今回は10m程の大きさだ。前回火龍と戦った時に比べて小さくなっているが、込められた魔力量は変わらない。出力が上がっていたりするという事だ。それが全速力で駆けだす。ぶち当たったリザートマンはぶっ飛ばされて行った。
とりあえず岩の巨人には特攻してもらいリザードマン・キングの所に行ってもらう。
俺は俺で岩の人形達の命令を変更する。今までは基本的な動きを決めて、敵を倒す様に命令していた。今回は近くにいるリザードマンの足止めを命令した。
走っていった岩の巨人の後を追わない様にと、こちらに攻め込まれない様にってことだ。
リザードマンは倒してしまうと恐らくキングの近くで復活するみたいだ。今も向こうからリザードマンが戦場に参戦しに来ている。
ただ今の戦場にいるリザードマンを倒さず足止めしていればキングの近くには全体の3割ぐらいのリザードマンしかいない。倒しやすくなるだろう。
岩の人形達は壁の様に並んでリザードマンが拠点に戻らない様に塞いでいる。リザードマンもこちらの意図をわかったのか拠点に戻ろうとするが、そのリザードマンを掴んで投げたり、殴りつけたりしている。一応俺が後から作り出した岩の人形も戦場に向かっているから前と後ろから挟撃出来るようになるだろう。後は周りをぐるっと囲んで動けない様にしたらいい。
ただ怖いのが復活する為にリザードマンが同士討ちを初めて、復活するして拠点に戻る方法を思いついた時だな。そうならない為にもさっさと勝負を決めないといけない。
岩の巨人が全力で走るとかなりのスピードが出るみたいだ。
後少しでリザードマン・キングの所へ到着するだろう。途中向かってくるリザードマン達は轢いて行っている。何体ものリザードマンが固まって壁でも作られていたら止められていただろうが、まだそこまでこちらの動きについて行けていないみたいだ。
岩の巨人とキングの距離が100mをきった。
キングは周りにリザードマンを集めて身を固めていた。まぁ当然だよな。
30体前後のリザードマンにキング、岩の巨人単体では倒せるかどうかはわからない。だがこちらの作戦はまだまだこれからだ。
100mの距離も岩の巨人にとっては数十秒もかからない。
走り込んだ勢いのまま手に持った棍棒を振るって目の前に固まっていたリザードマン達をぶっ飛ばした。
3体のリザードマンが吹っ飛んだ。
奥にはキングの姿を見える。実際には【索敵】の中の【千里眼】を使ってみてるんだけど。
キングは他のリザードマンと違い分厚い鎧を着ていた。体格も段違いに大きく3m位の背丈がある。王っていうより騎士って感じなんだが。騎士王か。手にはバスターソードとタワーシールドを持っている。
とりあえずここだな。
そう思って俺は岩の巨人の影から飛びだした。
正確には【追跡者】のスキルで岩の巨人の存在に潜んでいたのを解除したんだ。
岩の巨人が拠点を出る時からすでにスキルを使って潜んでいた。
そして飛び出た俺は【分身体】で作った分身の方だ。
「目標補足、【決闘場】」
分身体が魔法を使う。
光の輪が出来、キングを中心に広がっていく。光の輪は直径15m位に広がってから、地面に落ち固定される。
光の円が完成すると中にいたキング以外のリザードマンが苦しみ出だす。地面に這いつくばったり、その場から走り出し光の円の外に逃げ出す。キングはその光景を見て困惑している様子だった。
【決闘場】は今回用に作ったオリジナルの支援魔法だ。
【退魔陣】を元にしている。【退魔陣】自体は発動すると、その光る円の中にモンスターを寄せ付けないという魔法だ。それを変更して目標として設定をしたモンスターはその効果を除外するようにしてる。しかしそれ以外のモンスターには【退魔陣】の効果が強くなる様にしてる。かなりの力を持っていないモンスター以外は【決闘場】の中にいるとほとんど力を出せないだろう。キング以外のリザードマンは【決闘場】の中で倒れて動けなくなっているか、範囲外まで出て行った。
この魔法はタイマンを張る為の魔法といってもいいだろう。
今【決闘場】の中にはキングと俺の分身体、そして何体かの動けないリザードマンがいる。その円の周りには激怒した様子のリザードマン達が取り囲んでいる。
とりあえずの奇襲は成功した。
キングを取り巻きから離すことが出来た。後はキングを倒すだけだが、俺の分身体はキングを相手するようなスキルは持っていない。【追跡者】のスキルや【支援魔法】、【目標補足】【目印】【結合】のスキルを持たせている。【決闘場】にもかなりのMPを割いている。【退魔陣】にはない魔法の障壁も発生するようにしている。対象のモンスターは外に出れないが対象外モンスターは外には出れる、一方通行だがな。そして外から中にちょっかいをかけられないようにする為だ。
「後は任せた。」
俺が声を上げる。分身体ではないの方の俺だ。
その次の瞬間にはキングと相対していた分身体の影からガイ、バロンさん、シータが飛び出した。
「わかってる。」
「今回は楽しめそうだ。」
ガイとバロンさんが楽しそうに声を上げた。
俺は【影移動】を使った。
影から影へと移動できるこの魔法、目に見える範囲の影にしか移動できない。俺は一応【千里眼】のスキルがあるから遠くても何とか移動は出来る。ただ距離が離れれば離れる程消費するMPは比例して大きくなる。作った砦からキングの影に転移することは出来ないかもしれない。ただその場合は俺1人が行くことになって、なおかつほぼMPがなくなる。そんな状態で俺1人がキングの所に行ってもボコられて終わりそうだ。【決闘場】は確実に使えないだろう。
そうして考え付いたのが仲間を【影移動】でキングの所に送るってことだ。奇襲作戦の要だな。一気に戦力を送れるんだ、こんな奇襲の仕方、他にないだろう。
【影移動】自体俺以外の人物でも移動は出来る。この魔法を作った時にモフモフラビットを突っ込んだら、設定したブランの影から出て来て生きてたし。最初に【影移動】で皆を一気にキングの元に送り届けることは思いついたが、俺はMPを使い切ってしまって何もできなくなる。奇襲で一撃でキングを倒し切ることが出来れば問題ないだろうが、それが可能かどうかはわからない。もし一撃で倒せなかったら周りには他のリザードマンもいるだろうし何かあった時に戻ってこれない。死地に送り込む様なものになってしまう。
そこで分身体を使う事を思いついた。分身体は俺と同一存在といってもいい。【倉庫持ち】も共有しているし。
だったら分身体の影も俺の影ってことじゃないだろうかって思ったんだ。
そして試したら距離が離れていても【影移動】でのMPの消費は変わらなかった。自分の影から影に移動してるってことだ。全員が通るまで魔法を継続して使わないといけない分のMPが増えるだけで大したことはない。分身体を行かせた場所なら普通に使う【影移動】と同じぐらいの消費MPで使えるってことだ。
うん、どこ〇もドアだな。
ただ拠点の砦に本体の俺がいないとこちらには戻ってこれない。だから俺がキングの元に行くことは出来ない。キングを倒すのはガイ達に頼んだんだ。
これでキング対ガイ達3人、他のリザードマン達は手出しできない状況は作れた。なおかつ分身体の俺がいるのでその影に入ればこちらの砦にも戻ってこれる。何かあっても大丈夫だ。
そこで俺の分身体は【隠匿】を使う。今の分身体はほとんどMPがない。狙われないようにする為にも【隠匿】などのスキルも付けている。ホントに後はガイ達に任せるしかない。
「とりあえず俺からだな。」
そう言ってキングに斬りかかっていったのはバロンさんだ。
今回ガイとバロンさんにキングを倒すのをお願いしてからずっと上機嫌だった。今も楽しそうにキングに向かい突っ込んでいった。
剣に気を纏わせてキングに飛び掛かる。上段から一気に剣を振るう。
しかしキングは慌てず持ってるタワーシールドを目の前に掲げ、バロンさんの一撃を受け止める。そしてそのまま盾を一旦引いてから押し出してバロンさんを吹き飛ばす。
バロンさんの一撃を綺麗に受け止めた、そしてそこまで力を入れていないように見えるのにバロンさんを吹っ飛ばすなんてパワー型の奴の様だ。
「闘気解放・斬の型。」
今度はガイがキングに向かって行く。剣に赤い気を纏わせて、斬りかかる。キングはガイにもきっちり反応しタワーシールドを構える。闘気解放してるからタワーシールドも簡単に切り裂くかと思ったが、キングはガイの剣を受け止めた。斬り付けただけだった為キングは体勢を崩していないようで、持っている剣でガイに斬り付ける。ガイは後ろに下がってその剣をかわす。周りに風が出来る程の勢いで剣が振られた。ガードしていたらバロンさんよりも吹っ飛ばされていただろう。
そこでガイとバロンさんも剣を構えて再度キングと対峙する。
闘気解放をしたガイの剣を受け止めるか・・・。
あの盾ってもしかしてキュクロさんが作ったんじゃないだろうか。一応表面には少し傷がついたようだけど。かなり固いみたいだ。キングには気を扱う様なスキルはなかったはずだし、盾の性能だろう。もしかして体を覆っている鎧も同じような感じなのか?アリアも一緒に行って貰って魔法で攻めた方が良かったか。
そこでキングが何かに小突かれたように頭を揺らした。
キングが振り向こうとしたら、キングの後ろからシータが大きく跳んでガイとバロンさんの近くに着地した。
「鎧の隙間に刺したけど、シータのナイフだと鱗で止められちゃった。」
シータがそう言った。多分気配と姿を消して、後ろからキングの鎧の隙間からナイフを刺したんだろう。しかしキングの鱗にナイフが弾かれたみたいだ。【金剛鱗】ってスキル持ってたもんな。かなりの業物じゃないとキングの鱗は突き通せないのかもしれない。鎧の隙間から刺すってホントにただ刺すだけだから大した威力にならないだろうし。
「俺とガイで何とかするしかないな。」
「そうだな。俺達の力の見せ所ってことだろう。」
バロンさんとガイが楽しそうに話してる。
いや、何でそんな楽しそうなんだろう。俺と話をする時もそれぐらいの笑顔で話してくれるとテンション上がるんですけど。
「そこまで時間はないと思うんでお願いするよ。」
俺は【念話】で2人に伝える。
【決闘場】の外では周りにいるリザードマンが【決闘場】の魔法の障壁を攻撃している。何とかこの魔法を解こうとしてるんだろう。ブランの岩の巨人がそのリザードマン達を蹴散らしていってくれてはいるんだけど。それにしてもずっとは【決闘場】も発動していられない。発動してる間MPは消費してる、そして発動してるのは分身体だからMPの回復は出来ない。長時間は使っていられないんだ。
「わかってる、任せとけって。」
バロンさんはそう言ってとびっきりの笑顔で剣を構えた。
お読み頂きありがとうございます。
迷宮攻略の話ももうすぐ40話か・・・。
このままのペースなら攻略終わるまでに50話行きそうです。




