迷宮攻略32
「さてと、ゆっくりも出来たし。迷宮攻略の続きと行きますか。」
俺はそう言って立ち上がった。
いろんな話も聞けたし、自分の事も見つめ直すことが出来た。今なら簡単に迷宮を進んでいけそうな気がする。
俺の言葉を聞いた皆も立ち上がって頷いた。
俺達は休憩所から出た。休憩所は元通りの地面に直しておいた。
とりあえず目指すは89階層だな。
さっきまでの敵の配置やら数を見てくるとこの先も大変な気がするが気持ち的に全然違う。
今なら何でも出来そうな気がする。俺も単純だな。でも単純な方がいい時もあるってことだ。気持ちが前向きになると活力が違ってくるしな。ハッスルできそうだ。そう言えば迷宮に入ってから全然そんな話も出てこない、バロンさんに迫られたくらいだろうか。いや、まぁあれは別の意味で迫られただけなんだけど。
そう言えば【分身体】を別の姿にすることは出来ないんだろうか。確かスキルで【変身】ってあった気がする。それを持たせればガイとかブランとかの姿になれるんだろうか。試してないな。そうしたらもしかすると・・・。いや、やっぱりだめだ。どう考えても寂しすぎるだろう。しかも誰かにそんなところ見られたら俺の人生詰むだろう。そんなことしたら絶対にアリアが気付くはず。どんなに秘密裏に動いても勘付きそうだ。女子の直感を甘く見てはいけない。うん、やめておこう。
「じゃあ次の階に進もうぜ。」
バロンさんがそう俺に声を掛けた。また考え事をしてしまってた。心に余裕が生まれたんだろうか、前だったら心配事や不安事しか出てこなかったけどこんなバカバカしいこと考えられるなんてな。
「そうですね、行きましょう。」
俺はそう言って魔法陣に足を踏み入れた。
ついた階層も今までと変わらず溶岩と岩の世界だった。
【索敵】を使って確認をする。
なるほどね。
この階層はそこまで広くはないみたいだ、今までの距離の半分ぐらいで次の階層まで到着できそうだ。ただ問題はモンスターが一新されてるみたいだ。
【索敵】で確認できるモンスターは今までの階層にいなかったモンスターだ、少し集中して確認して詳しく確認する。
姿は馬鹿デカい鳥だな。いや、恐竜のプテラノドンと言った方がいいのか。身体よりも翼の方が大きく、翼膜みたいなので滑空して飛んでるみたいだ。体長は様々で1~5m位ある奴もいるみたいだ。そんなのがうじゃうじゃこの階層にいるみたいだ。
スキルを見ると【火炎ブレス】があった。空から炎を吐いてくるのか。これはナマズモンスターよりも厄介だな。この階層には隠れられそうな場所とかもないし、寄ってたかって空から火炎ブレスを吐かれたら避けようがなくなるだろう。普通はな。
【遠視】も持ってるのかすでに何匹か俺達の方に飛んできてる。
そこまで一体ずつ強くはなさそうだ、弓とかでもなんとか落とせるかもしれないけどここは・・・。
「ここはちょっと俺に任せてくれないか。」
俺は皆に言う。
「お前またそんな事を。」
ガイが少し呆れたように言ってきた。
「いや、別に俺が何とかしないととかじゃないよ。なんかさっきの事で物凄くスッキリしたんだ。
それでちょっと思いついたことがあるから一発ドカンと俺もやってみたいかなって。
初めてだからどうなるかわからないけどね。
後は任せる、討ちもらしたり、俺が動けなくなった時は魔法陣まで運んでくれよな。」
俺はそう笑って言った。
「まぁ、そういう事ならな。」
ガイは納得してくれたみたいだ。他の仲間も問題ないみたいだった。
よし、ちょっとばかり羽目を外してみるか。
俺は体の中の魔力を集中し、頭の中にはあるイメージを固める。【魔法作成】といくつかのスキルを組み合わせる。今回は【無詠唱】は使わない。言葉の力も使う。
「大気に満ちし風よ
その大いなる力を持って我が前の敵に裁きを下せ
全たる力を持ち かの地より顕現せよ
【風神降臨】」
俺の言葉を受け、頭上に風が集まる。その風は3m位の球体の様な物を形作る。そして風の球が弾け、中から人が現れる。
身長が170cm位で普通体系の黒髪。顔はかなりの美形でアイドル顔って言えばいいか。服装は和装、神職が着てそうなのを纏っている。両手にはそれぞれ形の違う扇を持っていた。正確に言えば人ではないんだけどね。
俺が作った偽の神とでも言えばいいのか。
さっきバロンさんと話をして適した気の使い方を聞いて考えていたことだ。
魔法に関しても言える話だ。風の魔法を使う時にも風の力を使って相手を斬るという時には、風の刃をイメージしたものを作る。凍り付かせたい時には水魔法で氷の槍なんかを作って相手にぶつける。そう言う物理的な法則からのイメージもあるんだろう。
ある程度イメージが固まっていれば魔法なんかも作って運用できる。それに高い効果を発してくれる。アリアが使った【八岐大蛇】もそうだろう。
そこでだ、この世界で一番強いものを具現化してみたらどうだろうって思った。そしてそれは何だろうって考えた。そして思いついたのはこの世界での神の存在だ。この世界では神は普通に認識できる存在だった。俺も普通に会ってるし。
その上とてつもない力を持ってることはわかってる。人にスキル与えたり、こんな迷宮作れるんだ。だったら神を召喚というか降臨というか呼び出して、一緒に戦ってもらえれば敵なしだろうと思った。ただキュクロさん曰く神は人の世界に干渉は出来ないみたいだ。ってことは呼んだところで手を貸してはもらえないかもしれない。だったら俺が疑似的な神を作ることは出来ないかと考えた。
少し違うが人形を作る時に疑似的な意識を作ったりはすることが出来る。その応用で神と言う意識を持つ何かを作ることが出来るんじゃないか?この世界には色んな神様がいるみたいだから俺が作り上げた今回の風の神だが、元々いるかもしれない。だがそれは別として俺の想像した神を作り上げてみることにした。その時に元々の神さまの力とかを少しでも貸してもらえないかなって思って、スキルには【言霊】や他の神職なんかがもってそうなスキルも付けてみた。
正直今俺の頭の上をプカプカ飛んでいるのが風の神かどうかはわからない。多分違かも。でも要はイメージで、神の様な力を持った何かを呼び出したってことだ。そのイメージさえ持ってれば何とかなると思った。誰かが信仰して神になるという話もあったような気もするし、俺が神だと信じればそれは本物になる気がする。
それに呼び出すのに俺のMPはごっそり持っていかれた。その事を考えても頭上の存在はただ者じゃないのが分かる。
周りにいる仲間が俺の上の【シナツヒコ】を見てる。そりゃ驚くか。
しかしモンスターはそうでもなかった様だ。そう言えばモンスターがこっちに近付いて来てたとこだった。
何体かのモンスターがこちらに翼を広げ滑空したまま突っ込んでくる。
その姿を見た【シナツヒコ】が手に持った扇をふわりと振るった。
すると近づこうとしていたモンスターが全て真っ二つになって地面に落ちながら姿を消していく。
今のは風の刃で斬っていったのか?正直俺でも何が起こったかよくわからなかった。結構ヤバいもの作り上げちゃったのかもしれないな。
そんなことを思っていると【シナツヒコ】は今度は扇を両手に持ってくるりとその場で一回転し、舞うように扇を振るった。
すると大気が震え、俺達から数十m離れた所にいくつも竜巻が出来ていく。最初は数m位の竜巻がどんどんその大きさを増し、数十mの高さになっていく。それが俺達の周りにいくつも出来上がる。しかし俺達の周りにはその竜巻が起こした風は届かない。一応俺達が被害にあわないようにはしてくれてるんだろう。
数十m規模になった竜巻がこの階層を蹂躙していく。
空を飛んでるモンスターなんて逃げるすべなどない。竜巻に吸い込まれ、バラバラにされて消えていくだけだ。
目の前で凄い光景が広げられている。【白虎】が作った竜巻がいくつもあるようなもんだしな。風の最上位魔法にも竜巻というか嵐を作る魔法があるが、それとも比べ物にならない気がする。ここだから使える気がする、こんなの外で使ったら災害だろうな。1つの街ぐらい簡単に潰せる気がする。いや、やらないけどね。
俺がこれをやろうと思ったら出来るんだろうか。いくつも竜巻を作って制御しないといけないしな。かなり大変だろう。出来なくはないって感じか。しかし【シナツヒコ】は涼しい顔してやってるし。
そんなことを考えていると竜巻達が徐々にその大きさを小さくしていく。
【索敵】で確認するとこの階層の敵全てを倒したみたいだ。なるほど、必要なくなったから消してる訳か。ってそう言うのも判断してるんだ。疑似的な意識を作った場合でも俺のある程度の判断が必要になるんだけどな。水龍や人形だったら目に付かないところまでの敵全てを倒した、という判断までは出来ないだろう。今回も思い付きだけで行動したけど、やっぱり大変なものを作り上げてしまったのかも。
竜巻が全てなくなり、【シナツヒコ】はクスリと笑ったような顔をした。そしてその場でクルッと一回転すると風が逆巻き、その姿を消した。
戻る時唐突だな。まぁもうして貰う事はないから問題ないけど。
辺りが少し涼しくなった気がする。
溶岩が風で全て固まってた。上の部分だけが固まっただけで、またその内下から溶岩が湧き出てくるんだろうけど。
「あの、さっきのは・・・?」
全てが終わって我に戻ったのか、アリアが聞いてきた。
「え~っと、風の神を自分で作ってみちゃった。テヘペロ。」
「いやいやいや、そんな訳ないじゃないですか!」
自分でも大変な事になったなと思って軽い感じで舌を出して、頭をコツンと叩いて言ってみたけど、アリアに偉い剣幕で突っ込まれた。
「むぅ、アリアは一応神官だから気になっちゃうよね。」
「いや、そうじゃないですってば。なんですか、神を作るとか。そんな事出来るんですか!?神とか作るなんて出来たらポンポン神様増えるじゃないですか。」
アリアの口調がいつもと違う。そこまで驚いたみたいだな。
「いや、神って言ってもホントの神とは違うかもしれないよ。う~ん、神に近い何か、とでもいうのかな。ただ俺がイメージしてそうしただけだし。ただ力を見るともしかするとって思っちゃうね。
でもね、俺の元いた世界だと人が神として奉られたりすることもあるんだよ。誰かが信仰すれば人でも神になるってね。だから俺が信じれば、俺が作ったものでも神にもなるってことかな。神の定義がどうあるかだけどね。」
「いえ、それにしても。他の神が良い気をされないのではないでしょうか?」
アリアが落ち着いたのか、元の口調で言ってきた。
「あぁ、そうかもね。そう言う事もあるか。勝手に神を名乗ったものを作るって言うのは駄目なんだろうか。今度キュクロさんに聞いてみるか。勝手に神作っちゃったんですけど大丈夫ですか?って。」
「本気で仰ってるんでしょうか?」
「キュクロさんなら良いって答えてくれそうだけどね。他の神がいい気しないかもしれないけどね。神っぽい何かってことにしておこうかな。」
「そこは問題ないんじゃないか?」
そう言ったのはガイだった。
「どういう事?」
「本当の神以外でも、神を名乗ることはあるってことだ。剣の凄腕の使い手は剣神と呼ばれたり、鬼と呼ばれる一族は、その強さから鬼神と呼ばれたりした。本当の神でなくても、その強さや偉大さから神と言う名前を冠することもあるってことだ。」
「そっか、なるほどね。神位の力を持ってるぞって感じか。俺の場合もそうなるかな。ひと時だけ呼び出す事になるし、俺の望むことしかしないしね。誰にでも分け隔てなく力を与えるとかそういう存在でもないしね。」
ガイの説明に俺も納得する。
「ってかこの世界に鬼っているんだ?」
「あぁ、かなり強いらしい。出会ったことはないがな、俺の技の名前はそこから取ってる。」
やっぱり鬼っていたんだな。
まぁ多分問題ないよな、俺がこれからも使っても。ただ一回キュクロさんには帰ってから聞いてみようっと。質問することがいっぱい溜まってきたな。
「そういう事だ。」
「腑に落ちない事は多々ございますけど、何を言っても仕方ありませんわね。」
俺の言葉にアリアはあんまり納得してないみたいに言った。
「まぁ普通の人には無理じゃないか?俺でもMPの大半削ってやっとだったしな。」
「当たり前です。神を顕現しようなんて普通考えませんから。」
「そうなのかな~。そんな人いてもおかしくないと思うんだけど。」
神を作ろうなんて話はこの世界ではないのか。実際に存在が確認取れるんだったらそうなのかもしれないな。元いた世界はで会ったことないから会ってみたいとか、いて欲しいって思って勝手に創造したりするんだろうか。
そう思ってると今まで黙っていたバロンさんが口を開いた。
「おい、さっきの奴と戦ったりは出来ないのか?」
う~ん、ここにも普通の考えを逸脱した人がいたよ。
お読み頂きありがとうございます。




