表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された世界はスキルがものをいう  作者: 雷
【商業国家 エルバドス】編
110/237

迷宮攻略4

「お願いですか?」



 俺はキールに聞き返す。



「はい、怪我を治してもらった上に心苦しいんですが・・・。

 出来ればこの魔獣の部屋を一緒に攻略してもらえないでしょうか?」



 キールが頭を下げる。周りを見ると【青の開拓者】の面子も同じように頭を下げていた。



「しかし傷も治って、人数も8人もいるんじゃないですか。」



 俺が思ったことを口にする。



「俺達実は10人のパーティだったんです・・・。

 でもこの2つ前の階層で2人が・・・。それで引き返す訳にもいかなくてとりあえずこの階層まで進んできたんです。

 俺達にはもう回復薬もなくて、このままこの部屋に入っても倒せそうにもありません。

 だから、強いパーティがもしこの部屋の前に来たら頼んでみようって皆で話し合ってたんです。」



 顔を上げたキールが答える。

 そう言えばそうだよな。回復薬があったら使ってるよな。しかしこのパーティ2人も失っているのか。それはしんどいな。

 ただもしかして今言っていることが嘘だっていう可能性もある。ボス部屋をクリアして攻略報酬だけ貰おうとしてる可能性もあるんだよな。

 【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で全員のステータス確認しているけどCランクの上の方ぐらいのレベルとスキルだと思う。だから嘘をついてる可能性は低いんだけどね。



「えっと、その場合はこの階の攻略報酬は俺達の物にしてもいいんですか?」


「はい、こちらとしては無事に地上に戻れたらいいんで。」


「わかりました。少し仲間と相談してくるので待っていてください。」



 俺はこの階の報酬をどうするか確認だけしてガイ達の所に戻ることにした。



「あら、相談されるんですか?皆さんダイゴ様が決めたことに従うと思いますけれど。」



 俺の隣を歩くアリアが聞いてきた。



「まぁそうかもしれないけどね。そう思ってるから聞かないって言うのは違うと思うしさ。

 そうだとしても聞くだけ聞かないと、後で決められたことだけ伝えられるのってなんかやだろ?」


「お優しいんですね。」


「優しいのかねぇ。まぁ俺はタイプの人がいるから助ける分にはいいと思うんだけどね。」


「あまり見境なしなのはどうかと思いますわよ。」


「さっきのはそう思ったからか、一応そう言う貞操観念みたいなものはあるんだ?」


「人の事をなんだと思ってらっしゃるんでしょうか?ある程度お互いが想い合っていないと駄目だとは思っています。具体的には


 『はぁ、何故あいつと会ったら言い合いばっかりになるんだ。でも別に嫌いな訳じゃないんだけど・・・。どちらかと言うと好き・・・。いやいや、ないない。何言ってんだろ、俺。俺達男同士だろ、そんな訳ないじゃないか。

 でもあいつが女の話とかすると、なんかこう、ムカムカっとしてつい喧嘩腰になっちゃうんだよな。俺の方があいつの事良く知ってるのによ。何年一緒にいると思ってるんだ。って言うかあいつもあいつなんだよ。俺と言うものがありながら他の女と仲良くしやがって・・・。あいつだっていつも俺と一緒にいる方が一番だとか、俺の事を嫁さんだとか言ってるのに。って俺はまた何考えてんだ。

 でもこれってもしかして・・・俺、あいつの事・・・。』


 というのが最高ですわ。」


「うん、別に具体的には聞いてないから。」



 そうか、忘れていたよ。アリアはアリアだったね。

 そんなバカな話をしていたらガイ達の所に帰ってきた。



「何変な顔してるんだ?」



 ガイにそう言われた。そんな変な顔していたんだろうか。人の妄想聞くと疲れるんだよ。



「いや、ちょっとね。

 ブラン達も聞いて欲しいんだけど。

 向こうにいるパーティ【青の開拓者】って言うんだけど、俺達と一緒に魔獣の部屋に入りたいんだって。

 仲間2人やられてて自分達では攻略できないと思って俺達に助けを求めているみたい。

 今回の攻略報酬もいらないんだって、どうする?」



 俺は側にいたブランやシータに聞こえるようにそう言った。



「どうするもこうするもお前の好きにしたらいいじゃないか。」

「そうじゃの(あるじ)が選べば良いと思いますぞ。」

「今度はシータが倒してもいいんだよね?」



 シータ以外はいつも通りだな。



「わかった。見殺しにするのもなんだか嫌だから一緒に連れていこうと思う。

 それからシータ、今回は任せるけど無茶だけはしないようにね。」


「わかった、大丈夫。」



 俺が答え、シータにも釘を刺す。



「俺とアリアで【青の開拓者】を守るから攻撃はシータとガイとブランでお願い。」


「シータ1人でも大丈夫だよ。」


「そうか、でもどんな相手かもわからないからガイとブランはいつでも手を貸せるようにしておいて。

 それでも何かあったら俺も戦闘に加わるから。じゃあそう言う事で扉の方に行こうか。」



 今回のボス部屋での動きも伝えたのでさっさと中に入ろう。こんなところでウダウダしててもしょうがない。後はボス倒して地上に帰るだけなんだしな。

 俺達は全員で扉の前に行った。



「確認しました。一緒にこの部屋を攻略しましょう。」



 俺はキール達にそう伝えた。そしてガイ達を紹介した。すると【青の開拓者】も全員自己紹介をしてくれた。



「ただすいませんが戦闘はこちらでやらせてもらいます。

 急に一緒に戦おうと思っても連携が取れないので余計危険になるかも知れません。

 俺が守るので【青の開拓者】の方達は最悪の場合まで手出しはしない様にお願いします。」



 俺は扉に入る前にそう伝えた。

 正直変に魔法とかを打たれたり、突っ込んでいかれたらフォローできない気がする。だから一応言っておいた。そして俺は全員に支援魔法の【魔術装甲(マジックアーマー)】をかけた。これでいきなり攻撃が来ても死ぬことはないだろう。

 そうして俺達はボス部屋に足を踏み入れた。


 シータとガイ、ブランが先に入って、続いて【青の開拓者】の面子、最後に俺とアリアが部屋に入った。俺とアリアが入ってから部屋の扉は閉まった。変な時に扉が閉まって分断されたらどうしようかと思ったが大丈夫だったようだ。


 部屋の中に入るとこれまでのボス部屋と違ってかなり広いスペースだった。前までの部屋の倍以上はありそうだ。ただ作りは同じ様なもので石の床と壁際に柱も並んでいる。

 俺は進んで【青の開拓者】の面子の前まで出る。今まで後ろにいたから気付かなかったがこの部屋の魔法陣も以前の部屋の倍ぐらいの大きさがあった。ってことは出てくる魔獣も大きいってことだろうか。


 そんなことを思っているとすでに魔法陣には光が灯り、魔獣が姿を現してくる。

 その姿は見たことあると思ったんだがそれは最初だけだった。

 魔法陣に姿を現したのは一見すると【ヴィオラバイト】の様だったが、決定的に違う所があった。

 頭が2つ付いてあった。1本の蛇の様な胴体から、これまた蛇の様な頭が2つ生えているんだ。そして全長がかなりデカい。前に戦ったことのある奴の2倍はあるだろう。

 果たして頭が2つあるだけなんだろうか、それ以外にも何か特殊なスキルを持ってたりするんだろうか。

 俺が後ろに目をやると【青の開拓者】の面子は青い顔して双頭の蛇を見ている。なるほど、青と青ってことか。いやいや、そうじゃなくて【鑑定眼(アナライズ・アイ)】でステータスの確認しておいた方がいいだろう。シータが戦うんだから。



「行ってくるね。」



 俺がそう思った矢先にシータが俺達にそう声を掛けた。

 そして腰に付けてあるナイフをそれぞれ両手に持って双頭の蛇へ向けて駆け出す。

 しかし駆けたのも数秒にも満たない時間だけ、一気に距離を詰めたシータが床を蹴って飛び上がる。そして双頭の蛇の1つの頭と交差する。交差したと思ったらシータが空中を蹴ってもう1つの頭の方へ突進して、その横を通り過ぎ地上に降り立つ。

 地上に降り立ったシータは手にしたナイフをしまいながら俺達の方に歩いてくる。

 双頭の蛇は微動だにしていなかったが、シータが背を向けて歩き出したので好機と見たか2つの頭をシータの方に伸ばそうとする。そして2つの頭を動かした瞬間にポロッとそれぞれの頭が胴体から離れて地面に落ちる。頭が地面に落ちる前に胴体と共にスッと消えた。


 この階層でも一撃か。いや、今のは二撃ってことかな。

 先程シータは気配を消して風を纏い突進した。蛇にはシータの姿は見えなかったんだろう。そして飛び上がって1つの頭と交差する瞬間にナイフを振るっていた。普通であればナイフを振るったぐらいでは直径1m以上ある頭を落とすことは出来ないだろう。恐らくシータはナイフに風を纏わして長さを変えていたんだ。

 前にガイが必殺技を作っていた時にシータも一緒に修行していた。ガイは気を剣に纏わして切れ味を良くしたり、気を使って剣を大きくしたり長くして攻撃範囲を広く出来るようになっていた。それを見たシータがやりたいという事だったんだがシータには難しそうだったので風の精霊にナイフを風で覆ってもらって同じ様な事をしたらいいと教えた。そうするとシータもナイフに風を纏わせて切れ味を良くしたり、攻撃範囲を伸ばしたり出来るようになった。今回はそれを使って頭を落としたんだろう。

 そしてその後風で壁を作ってから蹴り、もう1つの頭に向かって同じ様にナイフを振るった。それを数秒で行ったんだ。相手も斬られたこと自体にも気付いていなかったみたいだな。後ろを見ると【青の開拓者】の面子も口を開けてポカーンとしていた。何が起こったか見えてなかったんだろう。




「お疲れ様。」


「シータ疲れてないよ。」



 戻ってきたシータに声を掛けたらそんなことを言われた。いや、そうかもしれないけどね。



「倒したみたいなんで先に進んで地上に戻りましょうか?」



 俺は振り返って【青の開拓者】の面子にそう言った。



「いや、今何が起こったんですか?」



 キールが驚いた表情のまま聞いてきた。



「えっと、かなりのスピードで魔獣の首を斬り落としたって感じですかね。」


「そうなんですか?」


「そうなんです。」



 一々説明するのも面倒なので簡単に説明する。



「とりあえず先に進みましょう。もし後ろから違うパーティが来たら中に入れないでしょうしね。」



 俺はそう声を掛けてまだ固まったままの【青の開拓者】の面子に進むように伝える。

 渋々ながら皆次の部屋へ進んでいく。

 俺もこんなに簡単に終わるとは思ってなかったんだよ。流石に30階層だしもう少し手こずるかと思ったんだけどな。こんな感じでもいいのかね。後でいきなりドラゴンとか出てこないよね。


 皆で次の十字型の部屋へ行った。しかし今回は人が多いからちょっと狭いな。

 【青の開拓者】の人には少し待ってもらって俺達は宝箱の方に行った。今回も宝箱の大きさは同じぐらいだった。開けてみる30階層と書かれたメダルとナイフが入っていた。この階から武器が出るのか。迷宮の武器を売って生計を立てる冒険者はここを攻略して出たナイフを売ってたりするんだろうか。

 ナイフを手に持って【鑑定眼(アナライズ・アイ)】で鑑定してみると『神が作った適当なナイフ』と出た。いや、それでいいのか?適当とかになってるけど。そりゃ鍛冶の神が適当に作ったものでも凄い物なんだろうけどさ。【鑑定眼(アナライズ・アイ)】ではそれ以上の事はわからないからな。残念ながら攻撃力とかはわからない。かなり切れ味が良かったりするんだろうけどね。特別な効果とかはないみたいだけど。



「シータ、報酬でナイフが出たけど使う?」


「うん、シータが使う。」



 ナイフと言えばシータだろうと思って聞いてみると使うそうなのでシータに渡す。今の使ってるのもドワーフが作ったものだからそれなりに良い物だろうけど、流石に神が作ったものと比べられないだろう。最近は風を纏わせているみたいだから切れ味とか関係ないかもしれないけどね。それでも受け取ったシータが喜んでいるしいっか。もう1回ここにきてもう1本とってもいいかと思ったけど全部攻略したら全員新しい武器を作ろうと思ってるからいいか。最近皆武器に気を纏わせたり、魔法を纏わせたりしていて刃こぼれとか全くしないしな。



「お待たせしました。」



 得るものも得たし俺達は待ってもらっている【青の開拓者】の人達と合流する。そして皆で魔法陣に乗ってギルドへ戻った。ギルドに戻ると【青の開拓者】の人達は皆ホッとした表情を浮かべていた。



「今回は本当にお世話になりました。」



 キール達全員が俺達に頭を下げた。



「いえいえ。」



 俺が答える。



「しかし皆さんはなぜあんなことが出来るんでしょう?」



 キールが聞いていた。



「あんなことって高レベルの回復魔法や魔獣を一瞬で倒すってことですか?

 そうですね、時間があるようでしたらエデバラの街の冒険者ギルドに行けばいいと思います。あそこは冒険者を鍛えてくれるんです。俺達もお世話になりましたから。」


「そうなんですか?だったら俺達もエデバラに行って強くなります。この迷宮から帰ってこれなかった仲間の為にも、もっと強くなってきます。」


「はい、頑張ってください。では、縁があればどこかで。」



 俺はそう答えてカウンターの方へ向かう。なんか俺エデバラの冒険者ギルドの広報活動してるみたいだな。でもそれで冒険者が集まってくれたらエデバラの街も賑わうかもしれないしな。そんなことを思いながら今回も受付で30階層の攻略の登録をして貰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ