ギルドと迷宮
「では迷宮の事についても詳しく説明いたします。」
受付の女性がそう言った。
「迷宮に入る際にはこちらで銀貨1枚を頂戴しています。その時にギルドカードをお預かりして迷宮内に入る旨を登録します。」
「そんなことが出来るんですか?」
「はい、このギルドのみの特別な手続きです。ハッキリ申し上げて迷宮に入って帰ってこないパーティも少なからずいます。こちらでは迷宮に入って7日以上お戻りになられない場合は死者の扱いとさせて頂きます。そしてお泊りになっている宿や、事前に伺っていた人へ手紙を出すようになっています。そう言った手間もありますので料金を頂いているんです。」
なるほど、そういう事か。そりゃモンスターが出る迷宮に潜って帰ってこれない人もいるだろう。宿屋の人も帰ってくるかどうかわからない人の為にずっと部屋を空けとく訳にもいかないしな。しかも死んだことを家族に伝えたりできるんだ。冒険者はモンスター討伐の依頼とか受けると、もしかしたらそこで死ぬ恐れもあるもんな。そう言った時は誰も家族や友人に知らせてくれることなんてほとんどないだろうけど、ここでは知らせてくれるんだ。
「後はどこの階層まで行けたかの証明もギルドで行います。
自分はどこどこの階層まで行けたからそこまで連れて行ってやるとか、そこの階層の情報を教えてやるから金を寄こせという方が残念なことにたまにいらっしゃるんです。
そう言った詐欺紛いの事がない様にギルドでどこの階層まで行けたかをカードに記載するようにしています。」
「そんなことがあるんですね。」
「えぇ、10階ごとに魔獣が出る部屋があります。そこで魔獣を倒すと武器や魔法具などが出ます。その時にもう1つメダルの様なものも出るんです。そのメダルには攻略した階層の数字が書かれています。
部屋には下の階に降りる階段と魔法陣が出てきます。魔法陣に乗るとそちらの扉の奥に戻ってこれます。」
受付の女性が指し示す方を見ると赤い扉があった。扉の前には2人男が立っている。中に入らない様に見張ってるみたいに見える。
「メダルをこちらの受付まで持ってきていただければ、その回数まで攻略したとこちらでギルドカードに記載します。後そのメダルを持ってあちらの青い扉を抜けて先にある魔法陣に入ればその階層まで直接行くことが出来ます。」
先程と同じように女性は青い扉を指した。その前にも2人男が立っていた。どこかのパーティが男に何かを見せて扉を抜けて入って行くところだった。メダルとギルドカードでも見せたみたいだな。
「例えばの話なんですが、30階まで攻略して20階にあの魔法陣で行くことは出来るんですか?」
少し疑問に思ったことを聞いてみた。
「えぇ、可能です。レベルを上げたい冒険者の方が戦いやすい階層に行くことは良くありますから。
魔法陣の前に台座の様な物がありますので、そこに行きたい階層のメダルを置くとその階層に行くように出来ています。」
えらい技術だな。それもキュクロさんが作ったんだろうか。神様だから何でもありなんだろうか。でも俺もスキルを使って色々やったらそれぐらいの事出来そうな気がする。
「それから迷宮内での注意事項です。
他のパーティの戦闘に参加するのは禁止とさせて頂いています。倒しかけのモンスターを倒して経験値だけを得るといった行為を避ける為です。ただ危険を感じた人が他のパーティに助けを求めていた場合は出来る限り助けてあげて頂きたいです。基本的にパーティ同士のいざこざに冒険者ギルドは口出ししません。合同で攻略をされる場合は事前にこちらで受付をした後にお願いします。
次に迷宮内での回復や食料、装備品の売買や譲渡については自己責任でお願いします。
そして迷宮内には10階層ずつに魔獣が待ち構える部屋があります。その部屋に入ると入口が閉まって魔獣を倒すまで出れなくなっています。魔獣を倒すか、パーティが全滅するかしない限り誰もその部屋には入れません。その為その部屋に1つのパーティが入っている時は部屋の前でお待ちださい。それから部屋に入る時には譲り合って1パーティずつ入って頂く様にして下さい。出てくる魔獣は同じですので先に入っても後から入っても特に利点はありません。
最後に決して無理をされない様にして下さい。
10階ずつにこちらに帰ってこれる魔法陣があるとしても途中の階層では戻るか進むかしなければ帰れません。無理をして途中の階層で動けなくなった場合は全滅の可能性が高くなります。聞いた話ですが迷宮内で亡くなった方は光の粒になって全て消えてしまうそうです。そのおかげで迷宮内には人の骨があったりってことはないんですが。ただ何も残りませんので遺品などを持って帰る事も出来ません。そうならない様に無理はしない様にして下さい。」
死んだら分解されるようにでもなっているんだろうか。それはやだな。でももとより無理や無茶をするつもりもないし、こんなところで死ぬなんてことは考えていない。
「一応この冒険者ギルドと迷宮についての説明は以上になりますが、何かご不明な点はありませんか?」
「はい、大丈夫です。ちょっとパーティで相談しますので、また迷宮に入る時にはこちらに来ます。」
俺はそう言って一旦カウンターから離れた。
「ダイザンのメンバーちょっと集合。」
俺はそう声を掛けてギルド内の端の空いているスペースに集まった。
「さて、どうやって迷宮を攻略していこうか?」
「どうやってですか?」
アリアが聞いてくる。
「うん、攻略しないといけないんだろう?だったらもうどうやって攻略するかを考えるだけじゃないか。」
「まぁそうですけれども。具体的にどうするかと言うお話でしょうか?」
「そうだね。ギルドから情報を買ったりするか、他の冒険者から情報を集めたりするかなんだけど。」
「それは別にいいんじゃないのか?お前のスキルがあったら事足りるだろう。」
ガイがそう言った。
「それはそうかもしれないけど皆迷宮に入るって不安じゃないの?」
「何を今更。お前と旅をしたらこんなことがあるだろうとは思っていた。」
ガイが言う。
「そうじゃな、主と一緒であれば大体の事はなんとかなるでしょうしのう。」
ブランも続く。
「そうですわね、ダイゴ様の力を考えるといつも通り普通に迷宮に入って簡単に攻略しそうですものね。」
アリアも同意見の様だ。
「シータ頑張るよ。」
シータは少しずれてる感じがするけど迷宮に対して怖いとかは思ってないんだろう。
「そうか、じゃあとりあえず10階ずつ慎重に攻略していこうか。難しいと思ったら一旦作戦を練ったり情報を集めたりしていこうか。俺達なら恐らくは50階ぐらいまでだったらなんとか行けそうだしな。」
俺はそう言ってどうやって迷宮を攻略するか決めた。
まぁいつも通りの行き当たりばったりな感じがするんだけどな。
ある程度の階層までは問題ないだろうが俺達は100階最後まで攻略しないといけないみたいだし、慎重に行かないとな。特に誰も行ったことのない階層なんてどうなってるかわからないし。しかし全部の階層クリアできるのはどれぐらい先の話になるんだろうか。
お読み頂きありがとうございます。
次話から迷宮攻略編になります。




