ガールズ ザ パンドラ2
学園内をぼーっとしながら、名莉はとことこと歩いていた。特にすることもない。普通の日。しかも今日は土曜ということもあり、学園にいる生徒も疎らだ。
いつも通りの普通の休日・・・のはずなのだが、名莉はすごく寂しい気持ちになっていた。
高等部に上がってからは、デンに入り、休日は狼への練習に付き合ったり、みんなで取り留めもないない話をしている事が多かったのだが、今日は狼がいないということもあり、久しぶりに、何もやることない休日になったのだ。
「やっぱり、狼がいないとダメ・・・」
胸に手を当てながら、名莉はそう呟いた。
そしてその呟きと同時に、一つの疑問が生まれる。
自分はいつから狼がいないとダメになったのだろう?小さい頃から知っている真紘や希沙樹でもなく、ましてや同じメンバーの根津や鳩子、季凛でもない、狼がいなければ嫌だと感じるようになったのは。
どうして自分がこんな気持ちになるのか、分からない。
確かなのは狼と一緒にいると、楽しくて、嬉しくなるということ。そしてこの気持ちはとても温かくて大切な気持ちというのも分かる。
真紘の事は大切で好きだとも思う。
では、狼のことは?
真紘への気持ちとは少し違う狼への気持ちは、いったいなんなのだろう。
一人でそんなことを考えていると、向かい側から鳩子がアイスを口にしながら、やってきた。
「あれ、メイっち?こんな暑いところで何突っ立てるの?」
そう話しかけてきた鳩子に名莉が視線を向ける。
鳩子はどうなのだろう?
やはり、自分と同じように狼がいなくて寂しいと思うのだろうか?
「鳩子は今寂しい?」
心の中の疑問をそのまま口にした名莉を、鳩子が少し不思議そうに見ていたが、すぐに何かを思ったように、「ふむ」と頷いた。
「あー、鳩子ちゃんの場合は寂しいっていうより、退屈かな。狼がいないとさっ」
そんな鳩子の言葉に名莉は目を丸くさせるしかない。
「あ、どうして狼のことって分かったのかでしょ?」
「うん」
名莉は素直に頷く。
すると鳩子は少し肩を上下させて、短く息を吐いた。
「ずばり言うけどさ、メイっちって狼のこと好きでしょ?しかも、異性として」
鳩子の愚直なまでに、ストレートな言葉に名莉は息が詰まるような感覚になった。
何か返事をしなければ、いけないのに言葉が出てこない。
そんな名莉の様子に、鳩子は目を細めている。
「あー、メイっちもネズミちゃんと一緒で気づいてなかったパターンか。おっと」
そう言いながら、少し溶けだしたアイスを慌てて鳩子は口に運ぶ。
「別に違うって言うんならそれでも良いけどね。鳩子ちゃん的にはそっちの方がありがたいし」
「それは、どうして?」
やっと出てきた言葉を鳩子も投げる。
すると鳩子はアイスを口元から離し、あっさりと
「狼の事が好きだから」
そう言いきった。
「鳩子が狼を好き?」
「そっ。鳩子ちゃんはメイっちやネズミちゃんみたいに、自分の気持ちに疎くないから、認めますとも」
自身満々の笑みを浮かべる鳩子。
「それはダメ・・・」
小さい声で名莉はそう呟いた。
「へぇー。じゃあ、メイっちとは仲間でもあり、恋のライバルでもあるわけだ」
恋のライバル。
その鳩子の言葉に名莉は、すごくしっくりと来てしまった。
ならば、この狼への気持ちは恋なのだろう。
名莉はそう確信すると、鳩子に目線を合わせて力強く頷く。
すると、鳩子は少し目を見開いたが、ニヤリと笑みを作っている。
その鳩子を見て、名莉は初めて意地悪そうな笑みだと思った。そしてそれと同時に自分も満足な笑みを作った。
「鳩子と話せてよかった」
「そう?あたしはライバルが増えて残念だ」
再びアイスを食べ始めた鳩子が、冗談っぽくそう言った。




