48 side:siki・makoto
ちょっといつもより短めです・・・
47と一緒にしてまとめようとしたのですが、さすがにそれでは長いと思い(+_+)
楽しんでくださると光栄です(*^_^*)
「で、俺に用事だったんじゃないの?お二人さん」
二人が気づくと、誠が呆れた顔で目の前に立っていた。
誠にしてみれば、またかというような、そんな気分だった。前回は優花と翔。そして今回は色と雄太だ。
色は恥ずかしくなってすぐさま雄太の腕から逃れて手を組みなおした。
「……誠君」
色は罰の悪そうな顔で笑った。
「久ぶり、色。元気そうで良かった」
「うん――。ありがとう」
誠が思いのほか優しく色に笑いかけてくれたので、幾分か落ち着きを取り戻した色は、今度は厳しい顔をして誠を睨みつけた。
「……どうかしたのか?」
誠は自分が知らないうちにでも何かしてしまったのかという気持ちになった。
「どうもこうもないでしょ?一体、柊ちゃんに何を言ったの?」
と、厳しい目でそういう色は、とても迫力があった。
「……は?」
と、誠は呆気にとられて色を見つめ返していた。
「柊ちゃん、麗先輩のお見舞いに顔を出さなくなったのよ。知らなかったの――?せっかく麗先輩が目を覚ましたのに、その途端なぜか避け始めたの。それに、誠君が絡んでるんでしょ?」
「どうしてそう思うんだ?」
誠のその問いに、色は間髪いれずに答えた。
「柊ちゃんの態度が変わる時は、絶対に誠君が絡んでいる時だもん。何年も一緒に居れば、そのくらい気づくわよ」
と、そう言って色はプイッとそっぽを向いた。
「そうか――。でも、俺は何もしてないぜ?麗先輩が目を覚ましたあの日、確かに俺は伊吹と会った。でも、会っただけだ。何も会話らしいものはなかった」
「……会ったの?」
色は目を見開いて誠を見つめた。
「あぁ……。でも、俺はその時他の女といたし――」
「他の女?」
色は息を飲んで誠に聞き返した。雄太は呆れたように頭を抱えている。
「他の女といたって言った?今――」
「あぁ。それがどうかしたのか?俺は別に誰とも付き合ってないし、何の問題もないだろ?」
誠のその言葉に色はひっぱたきたくなるのを必死にこらえた。
「何の問題もないって、本気でそう思ってるの――?あぁ、もう我慢できない!何考えてるのよ、あなたは。どうして好きでもない女なんかと一緒に居られるの?私とのことで懲りたんじゃなかったの?」
色は凄い剣幕で誠に詰め寄った。
「どうしてそんな事が出来るのよ!柊ちゃんはこの一年間、麗先輩が目を覚ますのを……淋しいのをずっとこらえてきたのよ?一人で、耐えていたの。それなのにあなたが悠々と楽しそうに他の女といるのを見て、柊ちゃんが傷つかないとでも思ったの?」
「俺が誰といようと、あいつに何の関係もないだろ?あいつは、俺の気持ちを踏みにじって捨てたんだぜ?」
誠は言われっぱなしなのにイラついて、思わず怒鳴り返していた。けれども色も負けなかった。
「とんだ馬鹿よ、あなたは!柊ちゃんはあなたの事が好きなのよ。小学生の時から、ずっと、あなたを忘れてなんかいなかったのよ?そんなの見ていればわかるじゃない!」
色は腕を振り回しながら叫んだ。けれど色のその姿は、もう誠の目には映っていなかった。
「……好き?」
と、誠が聞き返してきたところで、色は自分が何を口走ったのかに気付き、心の中で激しく自分を罵った。
「そうですよ。本当に気づいてなかったんですか?柊さんは、誠君の事が好きだったんですよ」
雄太はそう言って誠にほほ笑んだ。
誠はようやく柊の今までの行動の意味がわかったような気がした。どうして色の事にあんなにも怒ったのか。どうしてあんなにも困った様な、戸惑いの表情を自分に向けて来るのか。……そして、どうしてあの時自分にキスしてきたのか――。誠はその場にヨロヨロと座りこんだ。
「誠君……?」
そんな誠を、色と雄太は困った様な、憐みの目で見つめて来る。それが余計に誠を打ちのめした。
「柊ちゃんが好きなのは、麗先輩だけじゃなかったの。柊ちゃんは、二人の間でずっと悩んで来たのよ――。麗先輩だけを愛したいのに、誠君のことを忘れられなかったの」
色は悲しそうな顔でそう言って目を伏せる。誠は何も言えなかった。ただ、柊の事だけが頭に浮かぶ。けれど、自分の前ではいつも浮かない顔をしていた柊の表情しか思い出せなかった。それは色と雄太が帰った後も同じで、頭を占めるのは柊なのに、どうしてもその笑顔が思いだせない。誠は煮え切らない思いでいっぱいになった。




