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11 王宮へ行こう

お待たせしました。11話です。

 一晩明けて、ルーシア達の泊まる宿に情報管理局から局員がやってきてきた。

 用件を聞くと、昨日ローズが話した『監視対象指定』についてと、それに指定されたルーシア達がどのような立ち位置にあるか、その処遇は?等の説明に来たということだった。

 早速、例によってルーシアの部屋に集まり、局員から詳しい話を聞くことになった。


 局員の口から少々早口ながらも一般的な監視対象指定とは、という話を聞かされる。

 それほど難しい説明でもなかったので、3人は直ぐに納得した、というように頷く。

 それを確認した局員は、「ここからが本題です」と前置きをした上で、ルーシア達がどのような立場になったのかを説明する。


「単刀直入にいえば、貴方達は監禁状態です」


 その唐突になんの慈悲も無く放たれた一言に、ルーシア達はどう反応していいか、というように顔を見合わせる。


「そうはいっても、街の中での行動は保証されていますので、どこかの部屋に籠りっきりということではありません。ですが、冒険に出ることは禁止されます」


「ちょ、ちょっとまってくれ!?冒険者が冒険出来ないってのは納得がいかんぞ!」


 リッドが大声でそういいながら椅子から立ち上がる。


「お気持ちはわかりますが…。滞在中の宿の費用や食事代は王宮側で負担することになっていますので、一般生活には支障ないはずです。多少の贅沢をするくらいの余裕のある生活は出来るくらいの額ですよ」


「わ、それはラッキーかも?」


 局員の言葉にルーシアが目を輝かせる。


「馬鹿!確かにそりゃ魅力的ではあるが…っと、ダメだダメだ!大体、いきなり勝手に指定されて、その上冒険も出来ないだと!?俺達の今受けている依頼はもう3日後には期限になっちまうんだぞ」


 ルーシアを一喝してから再び局員に食って掛かるリッド。


「その依頼のことでしたらご安心下さい。謎の大爆発で巣穴もどこかに吹き飛んでしまったので調査はなしになりました。依頼を受けている方は違約にもならないそうですよ。よかったですね」


 淡々と語る局員。

 語られた事実は確かに喜ばしい話ではあるが、その淡々とした態度がなにやら気に食わないリッドは更に大声を上げる。


「よかったですね!じゃねぇっ!!大体、いつまでこの街に監禁されるんだ!?」

「そうですね…。早くても一ヶ月、遅ければ半年、といったところでしょうか」

「えぇ!?そんなに!?」


 ネネシアが驚きの声をあげる。

 先程の基本事項の説明では大体、監視期間が数週間が相場であったのに、最低でも一ヶ月という単位である。その上、最長でも半年ということは、平均的に考えれば三ヶ月は何も出来ない生活が続くということである。

 1~2週間程度であれば骨休め程度には、と思っていたネネシアだったが、さすがにそのような長期間じっとしていられる性格ではなかった。

 ルーシアにしても同様で、さすがに三ヶ月もダラダラとした生活をしていくのは、彼女の本来の目的からしてもあまり好ましくない。


「なんだってそんなに掛かるんだ?」


 リッドがイライラしながら質問する。

 先程から自分の想定外かつ悪いケースにしか話が転がらないので、苛立ちが募っている。

 大声を出すようにして発散しているのだろうが、その直後に新たな苛立ちの種が耳に入ってくるので、あまり発散の効果はないどころか、どんどん溜まっているものの方が大きくなっているようである。


「例の謎の爆発の調査が片付くまで、というのが理由ですが、実際もう現地の調査は殆ど終わっていて何もわかっていないというのが実情です。しかしあれだけの事件ですから、何もわからないまま放置、というのは国としては出来ない訳です。ここからはあの時間帯で起こった出来事全てを精査して、証言を得て、一つ一つ関連性の有無や審議を潰していってある程度予測がつく範囲までにはしないといけません。そして予測か仮説かわかりませんが、その内容が皆に納得をいかせるようなものであったとき、ようやくとりあえず保留、または対処というお話になって初めて事件が一息つくのです。つまり、その為の時間です」


「予想通りに事が運んで報告書作って、それが一発で通る。その時間が一ヶ月、ということか?」

「その通りです」


 リッドが「お役所仕事がああああ!」と叫びながら地団太を踏む。

 そんなリッドを華麗に無視してルーシアは質問を局員にぶつける。


「なんで私達が指定されたの?」

「さぁ…そこまでは私には。局長の勘、とでもいうんでしょうかね」

「ただのカンで監禁だぁぁぁあ!?」


 リッドの堪忍袋の緒は切れる寸前である。


「局長のカンは非常に精度が高く、もう何度もその実績と成果を残していますから…。この国では立派な理由になり得るんですよ」


 局員は相変わらず淡々と続けた。


 リッドもネネシアもルーシアも言いたいことはまだまだあったが、このまま局員に質問や怒りをぶつけ続けても何も解決しないことは判っていた。


「で、とりあえず俺たちはじっとしてりゃいいのか?」


 考える時間はたっぷり出来てしまった。大人しく監禁され続けるにしろ、抜け出すにしろ、3人で相談する時間は欲しかった。


「いえ、実はこの後、2時間後くらいに少しお時間を頂きたい」

「尋問か何かですか?」


 ネネシアは不安げに局員に聞いた。

 それを聞いた局員は多少笑いながら言った。


「まぁ…そうとも言えるかもしれませんね」


 返答を聞いたネネシアは顔を青くしたが、リッドはまたイライラを募らせた。


「はっきりいえ、脅す意味はないだろう!」

「失礼しました。実は直接お話を聞かせて欲しいという方がいらっしゃいまして…。王宮にきて頂きたいのです。」

「「「王宮に!?」」」


 3人の声が重なる。

 わざわざ王宮に出向いていかなければならない、ということは立場上、王宮からは出てこれない立場の人間が呼んでいるということが考えられる。デルガデルフでは比較的、立場に対する拘束力が薄いことが有名で、王宮の重鎮を街中で見かけることもある。そういったことを考慮したうえで該当する立場にある人物というと、最早王族しか考えられなかった。


「ある方、といっても国王なんですけどね」


 サラリと局員は答えを暴露する。


「王が!?」


 目を丸くしてリッドが驚愕の声をあげる。


-もう、この人のリアクションの大きさが楽しみで仕方ありませんね~-


 一方でルーシアはそんな事を考えていた。


「何を聞きたいのか、何のためか。そこまでは私も知らされてはいません。が、必ず連れて来い、との厳命ですのでお時間を頂ければ、と」


 要するに時間を貰えないと力づくでも、ということだった。


「…仕方あるまい」


 リッドは腹を括るように、そう呟いた。

 ネネシアもその言葉に首を縦に振る。

 ルーシアもそれに続く。


「ご理解頂けて良かった。礼服などの準備はいりません。いつもの格好で良いとのことです。時間になったらこちらに迎えを送りますので、それまで気楽に待っていてください」


 局員は一方的にそういうと、一礼して部屋を出て行ってしまった。


「王様に呼び出されてるのに…気楽に待てって言われても…」


 若干、涙目で訴えるネネシア。

 リッドは呆れたとばかりにやれやれと四肢を投げ出してベッドに倒れこんだ。


「もうなるようにしかならん…。全く…ある意味退屈しなさそうではあるがな」


 リッドはため息をつきながらそういうと、横目でルーシアを見た。


「お前と出会ってからほんとに退屈しないもんだ」

「お褒めに預かり光栄ですっ。てへっ☆」

「褒めてねぇよ!!てへっ☆じゃねぇよ!」


 閃光のようなツッコミが入る。


-元の世界では少なかったツッコミ要員でしたけど…リッドなら完璧ですね!-


 元の世界に戻れるならば是非、ツッコミ要員としてリッドにも戻ってもらいたい、そう思うルーシアだった。




 なんだかんだとボケたりツッコミを入れたりを繰り返すうち1時間半くらいが経過した。

 ネネシアがうつらうつらとし始めて、リッドもツッコミ疲れが出てきた頃、部屋の扉がノックされた。


「王のご命令で皆さんをお迎えに上がりました」

「あぁ入ってくれ」


 リッドが迎えを中に入れる。

 入ってきたのは年のころが13~15歳くらいの双子と思われる男女だった。


「私はデルガデルフ王宮直属、魔術師団特別小隊隊長のミリィです」

「僕は同じく魔術師団特別小隊副隊長のビリィです」


 髪は二人とも肩まで伸ばしたセミロング。顔も背格好も殆ど同じ。

 二人が双子であることは一目瞭然で、男女の違いが判るのは服装の違いと、ミリィの少し自己主張を始めた胸部であった。それでも、服装を同じにしたら二人とも女の子と間違えていたかもしれない。


「お二人は…双子…なんですか?」


 ネネシアが双子に尋ねる。

 まず間違いなく双子の二人にそのような質問をするのもおかしな話である。確認の意味合いもあるとはいえ、ルーシアはネネシアの態度に違和感を覚える。

 そのルーシアの雰囲気を察したリッドが小声で答えを伝える。


「知らなさそうだから伝えておくが…。双子ってのは珍しいんだよ。それも魔術を使える双子っていうのはとびきりの希少種だ。普通は生まれてくる時に片方が魔力を吸収して、もう片方は魔力が無くなる。つまり魔術師になれるのはどちらか一人だけ。双方に魔力がある場合、それはかなり強い魔力を持っていることが多い。原因はよくわからないがな」


「へぇ~、だから魔術師隊の隊長なんですねぇ」


 ルーシアは納得したようにうんうんと頷いた。

 そして双子の片割れ、ミリィがリッドの発言をなぞるように答える。


「ええ。私達は双子ゆえに大きな魔力をもって生まれました。その結果、特別小隊という形で王宮直属の魔術師になることが出来ました。といっても私と弟のビリィしかいない隊なんですけどね」


 少女らしい笑顔を浮かべながらそう答えるミリィ。


「で、君達が俺たちを迎えに来た、と?」

「そうです。僕達が暇…(ドスン)ぐっは…。もとい、次の仕事までの合間に迎えにいくように言われまして。場合によっては強制的な連行という形でも構わないということでしたから、魔力の高いものが候補とされており、結果として僕たちに白羽の矢がたった、というところです」


 暇、といった辺りでミリィの結構腰の入った一撃が、ビリィのわき腹をえぐった。

 傍目からみてもかなり痛そうな一撃だったが、すぐに持ち直したところをみると、威力が弱いのではなく、ビリィがやられなれているようだった。


「ま、逃げる気も抵抗する気もない。大人しく王宮までエスコートされるさ」

「助かります」


 リッドがやれやれ、といった雰囲気を出しながらゆっくりと立ち上がる。


「で、本当にこのままでいいのかい?」


 自分達の格好は冒険するような装備のままである。といっても他に着るものは特に無いのだが。


「ええ、普段通りでお連れして構わないとのことですので」


 ビリィの答えにリッドが頷く。


「んじゃま、いくか」

「はい」「お~っ」


 やけに気合の入ったルーシアの声に、リッドとネネシアは新たな不安を覚えたのだった。





さて、次の話がターニングポイント。

二つの展開があるんですが…どっちの話が面白いのだろうか。

ご都合主義か、はたまた反逆か…。

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