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5年前、彼は突然去って行った。
いつも一緒に居て、あんなに仲良くしていたのに。
去り際、彼は言った。
『なんでいつもそうなんだ!なんでこういう酷い事ばっかりするわけ!?お前の良心どうなってんの!?この……この…横暴理不尽大魔王がぁぁ!』
今思い返しても、去り際に言い放つ言葉じゃねぇな…。
あの日から5年後、突然家にやって来た幼馴染は、ガチムチのマッチョになっていた。
変わらない金の髪、吊り上がった眉に、ツリ目がちの青い瞳。
整った顔面は変わらないのに、首から下がどうにもしっくりこない。
その顔でマッチョはない。
「………久しぶり」
テレテレと、背筋を丸めて小さくなりながら、恐る恐るといった様子でこちらを見てくる。
その姿は、5年前もよく見た。
あの頃は全然マッチョじゃなくて、どちらかと言えばガリガリで、筋肉なんてなくて、弱そうだったのに。あの頃なら美少年で、このポーズだって似合ってたのに。
「あぁ…うん…」
変わらない。
その事に懐かしさより、心配が勝る。
コイツ、騎士団の団長になったんじゃなかったか…?
なんか……弱そうだな…。
突然やって来た幼馴染は、名前をシフト・クレメンス。クレメンス侯爵家の次男であり、私の幼馴染であり、同時に弟弟子である。
私に名字はない。ただのネジ。それは、シフトは貴族、私は平民だという、明確な差だ。
母は自称、『この国一番の魔女』。だから貴族に生まれ、次男で、魔力も強いシフトは母に弟子入りした。
一方の私は魔女の娘なのに、魔力はゼロ。魔術なんて使えないし、使い魔も召喚獣もいない、ほぼ普通の人間ではある。
但し、私は魔力は無くても魔力持ちが絶対勝てない最強チート。
人はそれを、『魔力喰らいの卑しい白魔女』と呼ぶ。
「ネジ…俺のこと、覚えてる…?家、入っていい…?」
それはそれは不安そうにシフトは首を傾げる。これが可愛い女の子で、私が男だったら二つ返事で家に上げたかもしれない。
でも残念ながら、私は女だし、シフトは男。
私はにっこりと笑った。
「知らん。お引き取り下さい」
バタン、とドアを閉める。
途端にドンドンとドアが叩かれた。
「ちょっ…ネジ!?覚えてるよね!?わかっててやってるんでしょ!?ねぇ!?開けてってば!!!」
バンバン、ドアを叩いて大声で叫ぶ。
その行動、昔もよくやってた。
マジで変わってねぇーーーー!!!
「煩い。お前に用はない。帰れ」
ドアをほんの少し開けてジロリと睨む。
シフトは今にも泣き出しそうだ。
「酷い……!せっかく来た弟弟子に向かって…」
「足。挟んでるけど?」
ドアを閉められないように足を挟むなんて、どこのヤクザか。
冷ややかに睨むと、シフトは瞳を潤めてこちらを見てくる。
いや、やってる事と顔、真逆じゃん。
「だって、こうでもしないとネジ、家に入れてくれないじゃん!ねぇ…入れて?ネジが騎士団を呼んだんだよね…?」
「ご足労いただきありがとうございました。解決しました。お引き取り下さい」
にっこり笑って言うと、シフトはさっきまでの大型犬がしょんぼりした姿とは打って変わって、嫌そうに口をへの字に曲げた。
出たな本性。
「…チッ。せっかく合法で中に入るチャンスなのに」
「帰れ。ストーカーめ」
シフトはこの国の騎士団団長であり、クレメンス侯爵家の次男。
引く手あまたのこの男は、その実、ほぼ私のストーカーだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
本作はすでに**【全話執筆完結済み】**です!
明日からも気ままに更新していきますので、安心してお付き合いください。
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