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序
昔から、少女向け、女性向けの小説や絵物語を読むたびに見かける言葉がある。読んでいる時は「おなじみのフレーズ」とばかり思っていたそれを、自身が心で呟くことになるとは、私はそれまで思いもしなかった。
視線が向くのは金の髪を背中に流し、顔の両脇に細い三つ編みを作っている女性。海のように鮮やかな碧の双眸は輝かしく、白い肌は陶器のように滑らかで、頬はいつもふんわりとしたピンク色で彩られている。可愛らしい唇から言葉が放たれることはないが、いつでもそれは弧を描き柔らかな表情を浮かべていた。美しい外見とは裏腹によく動く活気の良さと面倒見の良さで、職場での人気は高く、彼女目当てに訪れる客は後を絶たない。私もまた、そのひとりだ。
そう。
私は、彼女に恋をしている。