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結婚したばかりの妻が離婚したいというので仕方なく離婚しました  作者: 雲乃琳雨


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1/3

1、離婚

 結婚した当初は良かった。しかし、すぐに妻とは仲が悪くなった。夜は共に寝るのに、朝になると私を睨みつける。昼は口も利かない。



 朝、目を合わせるとセレーヌは私に背中を向けた。私はベッドから起き上がった。


「何が不満なんだ。言ってくれ」


 私がそう言うと、セレーヌは起きてフンッと横を向くだけだった。


「もういい!」


 私は服を着替えると、少しくせのある焦げ茶色の長い髪を紐で束ねた。身支度を整えて部屋を出て行くと、ドアからすすり泣く声が聞こえた。ふぅ~。ため息が出る。理由を言ってくれればいいのに……。



 結婚前は仲睦まじく、上手くいくと思っていた。セレーヌと出会ったのは、国王が王子の花嫁選びのために開いた舞踏会だった。未婚の者と家族だけが参加できるので、私も結婚相手を見つけようと出かけたのだ。


 私は武骨な性格のしかめ面なので女性に人気がなかった。でも、当主として結婚したほうがいいだろうと思っていた。

 両親は十二年前に流行った風邪で亡くなってしまった。祖父母に育てられ、四年前に当主になった。



 舞踏会で私は、令嬢をダンスに誘っても連続で断られていた。


「ちょっと、お手洗いに行ってきます!」


 そそくさと行ってしまった。そんな言い訳までさせるとは……、この顰め面のせいか……?


 ダンスをしていない令嬢を探すと、ぽつんと壁の隅にセレーヌが立っていた。ドレスは、大きめの襟にネクタイ結びのリボンが付いていて、古臭く感じる。サイズも細い彼女にはブカブカで合っていなかった。


 変な令嬢だなと思ったが、控えめな顔は緊張して恥ずかしそうに少し下を向いていた。それが気になって、あぶれた者同士声をかけてみることにした。


「私と踊りませんか?」

「え? あ、私……ダンスが踊れないんです……」


 令嬢は恥ずかしそうに斜め下に視線を落とした。ダンスが踊れないとは、どういうことだ? ——嫌がっている感じではないな……。


「なら、私が教えて差し上げます」

「本当ですか! お願いします」


 令嬢の顔がパッと輝いた。私は思わず、顔を赤くした。私が手を差しだすと、彼女はうれしそうに手を乗せた。


 しばらく踊ってみたが、彼女は覚えが早く、すぐに踊れるようになった。


「お上手です」

「教え方が上手なんですよ」


 彼女は楽しそうに踊った。私も楽しかった。曲が終わり、私は名前を名乗った。


「ビクトール・マンス子爵です」

「私は、セレーヌ・ベッカー子爵令嬢です」

「今日は楽しかったです。ありがとう」

「私もです」


 同じ子爵家なら私が求婚しても問題ないだろう。私は翌日、彼女のことを調べた。彼女の家は複雑だった。


 子爵で父親のディックと継母ヴィリヤ、異母姉ガブリエラの四人家族。父親と継母は恋人同士だったが、親に反対されて結婚できなかった。ベッカー子爵家は資金繰りが苦しく、ギローム伯爵家のセレーヌの母と結婚した。


 だが、すでに身重だった継母は異母姉を出産。その後も関係は続いた。十二年前の風邪の流行で彼女の母も亡くなってしまった。それからすぐに、祖父母の了承を得て継母が後妻に入り、父親は子爵を継いだ。


 彼女は体が弱いことを理由に、一度も社交界に出ていなかった。今回は国王の招待だったために出席するしかなかったのだろう。

 あの身なりでは、いい待遇は受けていなさそうだ。私が求婚すれば厄介払いできるから、賛成してくれそうだが。


 ベッカー子爵家は相変わらず資金繰りがよくない。私は多少余裕がある。そこそこ結納金を詰めばいいだろう。資金援助は、領地経営を支援することでかわそう。



 私はベッカー子爵家に、彼女と会って結婚の話を進めたいと手紙を送った。後日返事がきて、会いに行くことになった。



 再会した彼女は、体に合った普通のドレスを着ていた。家族全員でにこやかに出迎えてくれた。——杞憂だっただろうか?


 応接室で求婚の話をし、彼女もうれしそうに了承してくれた。縁談は問題なく進んだ。

 夕食にも呼ばれ、ドレスの話を異母姉が話した。


「あのドレスは、この子の母親の形見だったんです。どうしても着たいってこの子が言うから。——この子は、ちょっと変わってるの」

「ダンスの授業もサボって、仕方がない子なんです」

「そうなんです」


 異母姉と継母の言葉に、セレーヌははにかみながら同意した。——そうだったのか。……それなら早まった気もしたが、二人で話している時の彼女はおかしなところがなかった。私たちは何回か会って、正式に婚約し、すぐに結婚した。



 一週間はとても幸せだった。二週間目からこの調子だ……。

 今日の朝食で、彼女が言った。


「旦那様、私と離婚してください」

「……結婚してまだ二週間しか経ってない。そんなに早く離婚する者はいない。何が理由なんだ?」


 そう言うとまた彼女は怒って、フンッと横を向いた。こんなことはおかしい、彼女はやはり変わり者なのか? まるで結婚詐欺に遭った気分だ。それともそうなのか? 家のために結納金を騙し取る手伝いでもしているのか?



 そうこうするうちに彼女は体調を崩した。体が弱いのは本当なのか……。

 医者に見せても一向に良くならなかった。彼女の部屋に見舞いに行く。彼女は目を瞑って言った。


「お願いです旦那様、離婚してください」

「……分かった」

「……ありがとうございます」


 日に日に弱っていくのを見ては、仕方がない。彼女は好きでもない男と結婚したのだろう……。それなら、かわいそうだった。私たちは離婚し、彼女は家に帰っていった。


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