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神の声を聞く少女2

 

「えっと……」

「あ、もしかして薬草摘みに来たのですか? 」

「まあ、そんなところです」


 僕より先にここで薬草を摘んでいたのは僕と同じくらいの年齢の少女だった。茶色くて長い髪の毛が特徴的な美少女。その少女は僕に気がつくと、声をかけてきた。


「そうですか…クエストで? 」

「はい、教会が出したクエストを受注しましたので……別の場所に移りますね」

「……!」


 ここでどうやら薬草を取っていたみたいなのでー彼女の横には採られたばかりの薬草が積まれているからそれは間違いないだろうー僕は場所を移動することにする。誰だって別の人間に荒らされたくないよね。


「別に構いませんよ」

「え? いいんですか? 」

「はい、私も同じ薬草を集めていたところなんです」

「そうなんですね」


 では、と僕は彼女から少し離れたところにしゃがみこむ。でも、どれをとったらいいのかわからないんだけど。すると、


「もしかしてどれが薬草なのかわからないのですか? 」

「すみません……実はそうなんです」

「そうですか、では教えますね」

「あ、ありがとうございます」


 僕はその少女から教えてもらう。なるほどね、これが薬草か。地球でいた時にみた蓬の葉に似ている気がするな。一回教えてもらったらその後は順調に摘んでいくことができた。


『どれくらい採るの?』


 ユラムが話しかけてきたけど、うーん、100本採るのが正解なんだろうけど、今日は移動とかで疲れているから50本ぐらいでいいかな。今からだとかなりキツイし宿を探す時間も必要だし。


『そうね……ところで気が付いてる? 』


 彼女のことだよね? なんでいるのかわからないんだけどさっき協会にいたの巫女のことだろ? 声が似ているから間違いないだろう。気になるけど聞いちゃいけない気がする。さっき教会の名前を出したときに動揺していたから。でも、なんか空気がかなり気まずい。黙っていてもしょうがないので僕は話しかけることにする。


「あの、あなたはどうして薬草を集めているのですか? 」

「え? あ、私も教会の仕事で」

「これも巫女の仕事なんですね」

『バカっ』

「あっ……」


 思わず口を手で押さえるも、もう遅い。巫女さんはこちらをかなり驚いた表情で伺っている。いや、別に怖がらそうとした訳じゃないんですよ。


「べ、別に僕は怪しいものじゃないですから!」

『それ怪しい人の常套句』


 そうだけど……こういう時ってつい、言ってしまうんだろうな。


「さっき、あなたに占ってもらったものです」

「そ、そうなんですね。そういえば見覚えがあるような気がします」

「ははは、そうなんですよ」


 どうやら僕の言葉で納得してくれたみたいだ……でも、なんか逆に騙しているみたいでこちらとしても罪悪感を感じてしまうんだけど。っと、気をとりなおして質問を続ける。


「それで……どうして巫女様が薬草採りを行っているのですか? 」

「カナデです」

「え? 」

「私の名前、カナデ、と申します」


 えっと……これはどういうことだ? ほぼ初対面の人に名前を教えているけどいいのだろうか。それがこの世界の常識と言われればそれまでだけど。


『あんたは自己紹介しないの? 』

「え、えっと、僕は……アカリです」

「アカリさんですね」

「はい、よろしくお願いします」


 なんとか無事にコミュニケーションをとることができた。いや、優しい人で助かったな。湊ではなく、朱莉の方を伝えたのはなんとなくだ。ただ、こういう美少女に名前で呼ばれたいという欲望がないとは言えないけど。


『はいはい』


 少しぐらいは夢を見たっていいだろ? その後は僕もカナデさんも淡々と薬草を集めた。ただ、


「はぁ……」

「どうかしたのですか? 」

「え? あ、その……」


 さっきからずっと、気になっていた。カナデさん、ため息の数が非常に多い。これって僕が来たからなのか?


『まあ箱入り娘っぽいし男に慣れていないのかもね』


 でも占いとかで出会っていると思うから大丈夫だと思っているんだけどなぁ……。ただ、僕はあくまでも男だしカナデさんとは価値観とかが違うだろうから決め付けたりするのは良くないと思うけど。それでも、僕が原因かもしれないのはなんか嫌なのでそれとなく聞いてみることにしよう。


「話したいことがあれば話してみてはどうですか? 」

「え? 」

「ほら、よく言うじゃないですか。誰かに聞いてもらったら楽になるって。僕でよければ聴きますよ」


 えっと、楽しさは二倍、苦しさは半減だっけ? どっちも半減だろって思ったけどよくわかんない根性論があったよな。言いたいことはわかるけどさ、感動を分かち合いましょう的なやつでしょ。そう僕は説明すると少し納得したのかカナデさんはゆっくりと話し始めた。これで僕が近くにいるからなんですなんて言われたら最悪だけど。


「そうですね……じつは私」

「うん」

「もう、巫女をやめたいんです」

「……」


 ごめん、ユラム、助けて。


『自分でなんとかしなさい』


 無理だよ。藪をつついたら蛇どころか大蛇が出てきたんだけど。とんでもなく想い内容がブッ込まれてきたんだけど。こんなの1高校生が解決できるわけないじゃないか。


『グダグダ言っていないでしゃっしゃと対応しなさい』

「わかりました」

「わかってくれますか! 」

「あ、や、その……なんで辞めたいのか説明してもらえると助かります」


 うっかり肯定的な発言を口にしたら食い気味にこられたけど次の僕の言葉にかなり落胆したようだった。いや、あのですね、別にあなたの言葉を聞いていなかったわけじゃないんですよ。


「そもそも……私、神様がいるのかわからないです」

「え? 」


 意味がわからないんだけど。あなたの能力って神様の声を聞くことができるってことだよね? なんで疑うの?


「一度も言われたことがないんですよ……私に語る声が自分のことを神様だって」

「えぇ!? 」


 そんなことあるのか? ユラムは普通に自分のことを神様だって言っていたよな?


『そういう神がいるのはいるけど、この子に関して言えば違うわね』

「えっと……」

「ただ、声が聞こえるんです。雨が降るとか、旅人が来るとか、あとは病に効く薬とかを教えてくれる声が」

「そうなんですね……あれ? 僕に言ったのは?」

「あれはよくわからないんです……急に聞こえたんです。あなたはこの土地にいるべきだって」

「え? 」

『多分あいつらの差し金ね…私のことまではわからないけどすごい存在があんたに取り憑いていると思われたんでしょうね』


 なんでそんな回りくどいことを。それじゃあまるで僕をこの街にとどまらせておきたいって風に聞こえるんだけど。その目的は?


『決まっているでしょう。彼女を助けて欲しいのよ』


 ごめん、ユラム、まとまらないから一旦カナデさんとの話に集中させて。僕が許容できる情報量をはるかに超えてしまっている気がする。


「そ、そうなんだ…ならどうして巫女なんてやっているの? 」


 そもそもそれだけのことがわかったのなら巫女として十分やっていけると思うけどなぁ。ダメなんだろうか。


「ギンガ様に言われたんです……私が巫女として活躍すれば……この村が発展すると」

「ギンガ様? 」


 そして今、村って言ったよな? ここってどうみても街なんですけど。


「はい、この街の領主様のことです。元々、ここは小さな村だったんです。とても貧しくて……冬とかになると日々生きていくので精一杯になるぐらい貧しい村だったんです」

「……」

「村での一番の脅威は突然くる雪です。それがあれば近くの街などに出稼ぎに行っても帰ってこれなくなったり薪の準備が遅れればそれは死につながりますから」


 寒さでやられてしまうってことなんだろうか。確かに北海道も冬場になるとどこの建物もずっと暖房をつけて冬を過ごすって聞いたことあるし。人間の活動できる温度があるのだろうな。


「でもある日、ふと、声が聞こえたんです。今から急に雪が降って気温が下がると……それを村人たちに伝えたら」

「本当に雪が降ったと」

「はい」


 それだけ聞いたら未来のことを聞いたってことにならないのだろうか。それが神様からのお言葉だと思われてもしょうがないと思うけど。


「そうなんです……私の話を聞いた人々は口々に私には神様の声が聞こえるんだと言っていました」

「それで……ギンガさんはどこに出て来るんだ? 」

「はい、ある日ギンガ様は私の村にやってきました。そして私の力のことを聞くと、私は巫女に成るべくして生まれてきたのだといい、こうして教会を建てられました」

「はぁ」

「そして近くの村や街に宣伝しました……神の声を聞く少女がいると。その結果、村には大勢の人が来るようになり、こうして街として発展するまでになりました」

「なるほど」


 ここまで聞いて特に彼女が辛くなるような内容は全くないんだけど。どうして辞めたいだなんて口に出したんだ?


「私に語りかけてくる声は万能ではありません……せいぜい、今後の天気や小さな探し物などが精一杯です」

「それで充分だと思うけど」

「従来の巫女みたいな回復能力や……それから今日あなたが聞いたみたいにちょっとした運勢などは無理です。ギンガ様にはわからないことは適当でいいと言われているのですけど」

「ああ」


 なんとなく見えてきた気がする。彼女の能力は神様の声が聞けるわけではなく、他の能力なのだろう。そしてそれに気がついたギンガとか言う奴が彼女を利用してこうして成り上がったわけか。それに薄々気が付いているのと、嘘を話すことが辛くて辞めたいと口に出した。


「でもやめたら今の発展がなくなると脅された……こんなところか」

「な、なんでわかったんですか?」

「……」


 ありきたりだから、ってことは言ってはいけないよね?


『当然よ…それで、どうするの? 』


 どうするって……決まってるでしょ。話を聞きながら、僕はずっと思っていたことがある。


「わかったよ」

「はい? 」

「僕が君を助ける……君を辞めさせてあげるよ」


 きっと…これは(異世界人)でしかできないことだろうから。僕をこの場所に止めさせた存在も、それを狙っているんだろう?


『当てにされてるの私なんだけど、ま、いっか』

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