表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

end A おまもり

「ミルクが、魔法練習してるの知ってますよね」

シルキーはぽつりと話し始めた。

「自分の力より上の魔法を練習して、覚えても、一人前に認めてくれないって、言ってました」

「な…何…」

「俺はその手助けをしました、魔力の制御を少し解放してあげる代わりに、ちょっとだけ魔力を頂く呪詛を刻みました」

「……貴様…!!」

「彼女は強くなりました。でも、あなたは家に閉じ込めたままだ」

リートは口を紡ぐ。

「どうして、彼女を認めてあげられないのですか」

「……それは」

リートは胸が苦しくなってきた。

「それは、ミルクまで、こんな事に、巻き込みたくなかったから…」

「それです、ミルクはそれで苦しんでいます。混ぜて貰えない事が不服、ただそれだけなんです」

シルキーはつまらなそうに言った。

リートは、その緑色の瞳に涙を溜めた。

「私は…私は…ただミルクを護りたいだけだ…」

「…それが、ミルクを苦しめているだけなんです」


「シルキー!!」


ミルクの声が響く。

どこからかと思ったが、上空で風が渦巻いている。

真っ赤なワンピースで、ゆっくり下りてくる。

「シルキー!!」

もう一度、その名前を呼ぶ。

「ミルク…どうしてここに」

「シルキー、生きてて良かった!討伐するなんて、お姉ちゃんがっ…あっ……」

ぼろぼろと泣きだすミルク。

触れたいが、魔力を吸ってしまうのでそのまま、見つめた。

リートの氷魔法を解除し、ミルクの目線に合うようしゃがみ込んだ。

「ねぇ、ミルク」

「……うん……えぐっ」

「泣かないで、俺も生きてるし、お姉さんも生きてる」

「……うん…」

「だから、泣かないで」


解放されたリートは、その場にへたり込んで、それでもシルキーを睨みつけた。

「貴様、一つ答えろ。…呪詛って何だ」

「え、あー…」

シルキーは困った。

ミルクにはおまもりとしか言っていない、あの呪詛の事だ。

「…シルキー、いいよ、私、何でもシルキーの事なら何でも。…ねぇ、教えて」

ミルクの無垢な声に、シルキーは一つ溜息をついた。

「前、お守りしてあげたでしょ。それはミルクの魔力を大きくしてあげる代わりに、少し俺にも魔力が入ってくるっていうヤツなんだ」

「貴様ぁぁ!!ミルクに手を出したなあぁぁぁ!!」

リートは這ってでも討ちたいと言わんばかりの殺気で立ち上がる。

「リート姉様、違うよ」

ミルクはツタの魔法でピタリ、とリートを縛り付ける。

それを見て、シルキーは城へ走り出した。

「ミルク!お前何をするんだっ!!」

「…シルキーを傷つけないで、お友達なの。お願いだから…」

「だって、お前、その、呪詛を刻まれたんだろう」

「知らなかったよ。痛くもないし………ちょっとくすぐったかったけど」

ミルクは靴下を脱ぐ。

「このね、足の甲に……あれ?」

ミルクの足の甲から、呪詛は消えていた。

「…ないじゃないか……まさか、もっと別の所か!?」

瞬間的に怒りがこみ上げる。


「違います!消えたんです!」

シルキーは走って戻ってきた。

「さっき呪詛の内容を教えたから、もう効果はないんです」

「じゃあ風で浮いていたミルクと、このきっついツタは……」

「正真正銘、ミルクの実力です」

「………そうか……ミルク、強くなったな」

ミルクはそのツタをほどいた。

「…シルキーのおかげだよ」

その当人は、頬をほんのり赤く染めて、リボンの包装をした包みをミルクに見せた。

「これ、もらって」

「?」

「ぬいぐるみ。作ってみたんだけど…」

ミルクは包装をほどいた。

「わぁ!可愛い!うさぎさんに羽根もついてるー!」

「よかったら、もらって。新しいお守り、ね」

「うん!ありがとー!!」

「おい!そのぬいぐるみに変なもの仕込んでないだろうな!」

すかさずリートは大声を出した。

「入ってません!もう、一々煩いなぁ……」

「煩いだと!?もういっぺんやるか!?」

「もー!二人とも静かにしてよー!!」



ホワイトとヒューリーはやっとの思いで到着した。

「あれ…なんか、終わってるというか」

「…痴話喧嘩…みたいですね」

よく見るとリートに傷が付いている。

「ちょっとは仕事がありそうで良かったわ」

「…でもあまり出番ではなさそうですね、先に帰ります」

ひゅう、と口笛を鳴らすと大きな鳥がやってきた。

「では。…姉さんは大丈夫ですよね」

「まぁね、じゃあと宜しく」


マリスは夕暮れの眩しさに起きた。

外の橙色が、彼の仕事を始める合図だ。

「……あれ、何だっけ。タイマンするんだったか」

ぼんやり起きて、廊下に出るとメシィがいた。

「もう終わっちゃったよ」

「……あ、そう」

「仕事にでも行ったら?もうなんだかハッピーな感じで見ていられないよ、外」

「………ん。今日は行かないと」

マリスは未だぼんやりとしながら、部屋に戻った。

それを見届けると、メシィはうきうきして城の階段を駆け降りた。

「シルキーの回収ついでに白昼堂々ホワイトが見れるなんて、最高の気分よー!」



ミルクの部屋には、ホワイトが入れた書き置きがそのまま、ドアの隙間で所在なさげに放置されていた。


『ミルクへ

 これからブラッドリー城に行ってきます。

 絶対にあなたのお友達は助けるから、安心してね。

 この件が終わったら、私のお友達も紹介してあげる。

 悪魔なんだけど、イイ奴だから安心してね。

 ミルクのお友達も、きっとイイ子なんだと信じてるわ

                ホワイト』



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


end BとCを誠意製作中です。

個人的にハッピーエンドだけじゃ満足できません←

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ