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精霊の担い手  作者: 天剣
1年時
20/261

第11話 決着

「いっよー、元気か~!」


やたらと陽気な叫び声が学園の一室から入ってきた。彼が入ったその一室とは、この学園のーー


「遅いわよこの馬鹿」

「ふがっ!」


陽気な叫びを上げた男性が、その一室に元からいた一人の女子生徒にグーで殴られた。それも、顔面を。そのままバタンと床に倒れ込んだそれを見て、その場にいた少年がため息をついた。

ーーこの学園の生徒会室である。

つまり、殴られた男子も、殴った女子も、そしてその周囲でため息をついている連中も皆、生徒会の一員である。

本来この生徒会を取り締まる人物ーー会長だが、その会長が殴られた赤毛の男子、ギリ・マーク。三年生であり、学園内ではとても優秀な人物として知れ渡っている。が、それは表面上だけで実際はかなりちゃらんぽらん。良い意味での不良会長と言っても差し支えはないだろう。

と言うか、会長イコール優秀という構図のせいで皆誤解しているだけである。


「くっ、中々良いパンチをするようになったじゃないか。よし、お前には会長自ら”凶暴グーパンチ”という呼称を与えーー」

「いらないわよアホ」


皆まで言わせず吐き捨て、彼の腹部にドスッとヒールで踏みつける女子生徒ーーセシリア・フライヤ。銀髪なのか白髪なのかわからない色素が抜けたような髪を長く伸ばしている。生徒会副会長であり、その美貌から学園の男子達からの告白が数多いという。

ギリは腹を踏み続けられていて、苦しそうにうめき声を出している。が、ふと目をそらすと、ある物が目に入りかけた。


「おお……く、あ……あと……あともう少し……!」

「っーー!」


彼の呟きを聞き、セシリアは顔を赤らめ、そのまま目にも止まらぬ速さで彼の側頭部に回し蹴りをたたき込んだ。……ミニのスカートでそんなことをすれば、中が見えてしまうのだが、彼女は構わなかった。実際、気絶したギリも、気を失う瞬間何かを見た気がするが、せいぜいその程度である。

床にゴツンと頭を打ち、白目をむいて倒れ込んだ彼を前に、セシリアはまくし立てる。


「あ、アンタはそうやっていっつもいっつも……! 少しは反省しなさい! この大馬鹿ァ! ド変態ィ!」

「……聞こえてないと思うんだが……」


眼鏡をかけた大人しそうな少年ーーフォーマーが呟いた。かなりの童顔で、見た目よりも遥かに下に見えるが、これでも生徒会のもう一人の副会長である。ちなみに名字はない。

その彼がずれた眼鏡をクイッと持ち上げ、気絶した会長を尻目に、


「と言うか、我らが会長殿は何の用で来たんだ?」

「あ……」


フォーマーの言葉に、そう言えばという表情を浮かべ凍り付くセシリア。時計の針を刻む音がはっきりと聞こえるほどの静寂の中、二人は目線を交わしーーやがてフォーマーがはぁっと深いため息をついた。


「ま、しょうがない。どうせ大した用事でもないだろ」

「そ、そうよね! 大した用事でもないし、私がこいつを殴ったのは単なる事故だし! ね!」


あくまで自分のせいではないと言い張るセシリアに対し、適当に相づちを打っておく彼の姿は、どこか諦めにも似た何かがあった。


 ~~~~~


マモルの火とアイギットの氷が激突、そのままジュウッと蒸気が上がる五月蠅い音が第二アリーナに響き渡った。だがそれは、一度や二度ではない。何度も何度も、少なくとも十以上は鳴っただろう。

やかましい音が演奏を奏でる中、タクトとアイギットは互いの剣をぶつけ合っていた。


「ヒュッ」


短く鋭い呼気と共に刀を振るい、タクトは相手のレイピアを弾く。そのまま流れるような動きでがら空きになったアイギットの胴を切り払う。

無論、斬るつもりはない。その証拠に、彼の証は刃を変形させ、それを潰している。そして、刃を潰しているのはアイギットとて同じであった。もとより彼は、相手を痛めつけるつもりだったのだ。下手に流血沙汰になるとこちらも只ではすまなくなる。


「くっ!」


胴を切り払おうとした一撃に対し魔法陣を展開。盾となった陣がその一撃を防いだ。が、それはある意味悪手でもあった。

防がれた、その瞬間にタクトは瞬歩を”二度ほど”使い、相手の背後に回り込む。


「っ! このっ!」


一瞬で背後をとられたことを悟ったアイギットは苦々しげに顔を歪ませ、そのまま前転。刀の一撃をきわどく回避する。

避けたことを内心でほっとしつつ、アイギットはすぐさま体勢を立て直すとそのまま後ろへと斬撃を放つ。が、相手はそれを刀で受け止め、そのまま斬り流した。タクトは斬り流した勢いをそのままに、今度は袈裟斬りに振り切る。


「っ……!」


こちらの攻撃のほとんどを無力化されたことに顔をしかめ、アイギットは振り下ろされた斬撃を後ろに下がって回避する。


(まずい……!)


率直な感想だった。自分と相手との剣の差は歴然としている。このまま斬り合いになったら、間違いなくこちらがやられる……!

だからこそ、あちらは使えず、こちらが使える”魔術”を!

そして、あいつの”弱点”を!


「ーーー」


早口で呪文を唱え、アイギットはそのまま手を伸ばす。伸ばした手のひらから青い魔法陣が展開。そしてタイミングを見計らいーー氷塊を作り出した。


「前、前!」

「やばっ!」


今度はタクトが慌てる番だった。

相手と開いた差を瞬歩で一気に詰めようとして、それを使用した直後だった。タクトは、そのままアイギットが作り出した氷塊に、”自分から突っ込んで”ーー


「死んでたまるかっ!」


ギリギリのところで再び瞬歩を使い横へ移動。氷塊へ特攻コースからなんとか外れる。


「危なかった……」

「お前は神風か」


マモルがふうっと安堵しつつ、タクトに近寄りそう呟く。

彼が回避したその様を見ていたアイギットはやっぱりと頷いて見せた。


「やはり瞬歩……。”まっすぐ”にしか進めないようだな」


その言葉にタクトは頷いて見せた。


「そうだよ。……でもこんな早くに見破るなんて……。流石はエリートだね」

「それはどうも」


隠す気もないのであっさりと肯定したが、内心でははらはらしていた。何せ、まっすぐにしか進めないことを見破り、それに対して対処して見せたのだから。

アイギットの背後へ回り込む際、瞬歩を二回程使用したのはそのせいであった。そして、まっすぐにしか進めないのなら待ち構えていればいい。そのことに気づくことが出来たアイギットは、はやり才能を持っている。


「弱点はわかった。もう、瞬歩とやらのアドバンテージはない」

「……ホントにそう思っているのか?」


彼の言葉に応えたのはタクトではない。マモルはアイギットの方をじっと見つめながらそう言った。


「何?」

「確かに瞬歩のアドバンテージはなくなった。だけどーー」


そう言うなり、マモルは手を伸ばし、銃を突きつけた。


「”二対一”と言うアドバンテージはなくなっていない」


銃口に魔法陣が展開され、その陣が金色に輝き出す。金ーーそれは属性変化で言えば、雷を表す色彩。

驚愕に目を見開くアイギットを見て、マモルはニヤッと意地汚く笑って見せた。


「チェックメイト?」

「……なんで疑問系?」


タクトが首を傾げながら呟くのと同時に、マモルは引き金を引いた。

銃口から放たれた弾丸が金色の陣を通過。その瞬間ーー


ーー弾丸が、雷を纏ったーー


雷を纏った弾丸は矢の如く突き進み、アイギットへと向かう。


「っ!」


雷が纏う瞬間を惚けたように見ていたアイギットは、すぐさま我に返り、その一撃を横に飛び込むことで何とか避ける。雷をまとった弾丸をやり過ごし、ほっとして二人のほうへ向けを向けた途端、


ーー風が舞ったーー


室内で吹くはずのない風を感じ取りーードッと腹に衝撃が来た直後、衝撃で意識が飛んだ。視界が完全に真っ暗になる前に見たのは、タクトが持っている刀が腹に当たっているところだった。

やっとタクト&マモルVSアイギットが終わったよ……


次からは序盤で出た三人組と、タクト達のその後です(多分

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