プロローグ 罰ゲームの告白
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」
煌めく猫っ毛の金髪に長いまつ毛に縁取られた切れ長の太陽の瞳、甘いマスクにとろけるような微笑み。
学園一の美丈夫であり、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息からの告白。
純白の薔薇がこれでもかと咲き誇り、花弁の舞い散る学園の庭園は、国王陛下が身分違いの王妃陛下にプロポーズをしたことにより、身分違いの恋の成就へのおまじないの場所、所謂パワースポットであり、跪き差し出された右手と、左手に抱きしめられた純白の薔薇12本。
普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。
何故なら———、
(罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)
黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような波打つ漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。
そして、それは令息たちのお遊びの罰ゲームにて、大っぴらの場で告白し、恋人に選ばれるほどに、貴族にとってはそれはそれは酷い見た目であるらしい。
3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日、告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより、あわや没落寸前。
もちろん、辺境伯といえども、幸いなことにここ数十年戦争がない平和な世である現在、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。
(………実家の没落か、罰ゲームの景品か………………、)
迷うまでもない。
「———えぇ、喜んで」
全く喜んでないのが丸わかりな表情と仕草で、心揺れ動かぬまま、ベルティアは人生初の恋人を持った。
差し出された手に指を重ねた瞬間、僅かに強張る彼の身体に、罰ゲームで人の人生を踏みにじる彼らには不要である憐憫を抱きながら、ベルティアは、泣き出したいのはこちらだという台詞を飲み込み、彼が立ち上がるのを確認し、1歩下がった。
「………わたくし、これから勉強の時間ですので、失礼致します」
「え?あ、ちょ、ま、」
後ろで何かしらを言っているのを聞きながら、ベルティアは何の感情もなくハイヒールの踵を鳴らして庭園を去る。
薔薇の花束は受け取らない。
それが、ベルティアのせめてもの矜持だった———、
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完結はしていませんが、気になる方は覗いてみてください!




