Kの企み
その後も何度か実験と称して、いろんなところに出ては部屋に戻るを繰り返した。そして私は、なんとなく扉を出すこつを掴んできた。
「・・・主様、これは美波さまの能力開発のための実験ではありませんよ」
「あぁ、わかっている・・・が、僕の他にこの部屋に自由に出入りできる人間なんか珍しいだろう?」
「なぜか嫌な予感がいたします。私はKの決定に意見する立場ではありませんが、いまお考えのことはおやめになったほうがいいとおもいます」
2人がなんのことを話しているのかはよくわからないし興味もないが、Kが怪しげな笑みを浮かべてこちらを見ているので嫌な予感はする。
「君、僕に雇われる気はないか?」
「はぁ!?」
おもわず本気で聞き返してしまった。雇うといったって、こんなよくわからないところで私ができることなんかあるのだろうか。
「君がもしよかったらだ。君のように扉を出入りできるのは珍しい。僕はこの部屋を維持するために外にはでないし、エルドも僕の補佐として仕事をするから、なかなか部屋を開けることができない。つまり、買い出しや外にでてやらないといけないような作業をする人員が必要だ」
「つまり、パシリが欲しいんですね」
「それは違う。雇うのだから給金はちゃんと支払いをする。こんな特殊な場所での雇用だ。もちろん給金はそのあたりでバイトをするよりいいと保障しよう」
私は少し考えたが、お金はあっても困らない。しかし他に掛け持ちしているバイトがあるため簡単に返事をすることはできない。
「ゆっくり考えるといい。今後の働きによるが、高校を卒業した新卒がもらえる社会人の給金くらいあるとおもってくれていい」
「やります」
給料につられた。それだけもらえるなら、母親に持っていかれる給料を貯めているバイトだけ残して、あとはやめてもいい。
「決定だ。エルド、美波に仕事を教えてやってくれ」
「主様・・・私は忠告いたしましたよ。美波さまが、今後依頼が入った際にどんな反応をなされるか・・・」
「そのときはそのときだ。美波はそんなに気にしないと思うがな」
Kがふっと口角を上げた。笑ったら背後に花が咲くんじゃないかというほどまぶしい。
「よろしくお願いします・・・?」
「なぜ疑問形だ」
「よろしくお願いいたします、美波さま。困ったことがあればすぐに私におっしゃってください」
この日は、これからはじまる日常が、私の想像をはるかに超えたものだとは思いもしなかった。
人間の心の脆さ、醜さを目の当たりにし、私は少しずつ変わっていくことになる。




