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第1話 入学

桜が満開である。


ここ都内にある高校も入学式を迎えている。


希望に満ち(あふ)れている者。


楽しみで仕方のない者。


新しい環境に不安な者。


それらの中に、まったく違う動機で入学式を迎えた者がいる。


我妻向日葵(あがつまひまわり)


彼女の目的は、14年と少し前にこの学校で亡くなった母の死の真相を探ることだった。


彼女の母親である愛美(まなみ)は、屋上から飛び降りて亡くなったのだ。


警察は自殺として、早々と事件を終わらせた。


しかし、向日葵は納得していない。


母親の死の真相が知りたい。


彼女はそう思って入学したのである。



向日葵は、母親のことを何も知らない。


母である愛美は、高校2年になると登校しなくなり、夏に向日葵を産んだ。


そして翌年亡くなったのだ。


父親は不明である。


向日葵は愛美の両親によって育てられた。


親の愛情を知らずに育ったのである。



向日葵が育つにつれ、自分は周りと違うんだというのが分かり始めた。


両親がいない。


周りからそのことを言われたこともある。


その度に色々と耐えてきた。


自分は父から見放され、母には育児を放棄された。


ずっとそう思って生きてきたのだ。


ある時、母が使っていた部屋の奥から、日記のようなものが出てきた。


日記と言うと大げさだ。


メモ用紙といったところか。


そこには、向日葵のことが書かれていた。


そして大切な命を授かった子供を、幸せにしてみせると。


そして向日葵への愛情が書かれていたのである。


そんな母親が突然身投げをするだろうか。


向日葵は納得していない。


だから、母と同じ学校へ入学をしたのだ。


入学して最初にしようとしたのは、母が飛び降りた屋上を調査することだった。


職員室で鍵を借りようとしたが、断られた。


学校行事で必要な場合以外は貸せないと言われた。


鍵の近くにいた先生は「昔は誰にでも貸してあげたけど、ある事件があってね。それからむやみに貸すことは無くなったんだよ」


その事件って私の母のことですよね。


向日葵はそう言うか迷った。


言わないで去ろうとしたが、どうせ教師一人ひとりに聞くつもりだった。


「その事件って私の母親が飛び降りた事件ですよね」


職員室が一瞬静寂に包まれた。


「えっ?」


その先生は言葉に詰まった。


他の先生も私に注目する。


少し経ってから「私はそのことはよくわからないんだ。当時この学校じゃなかったからね」


注目されたのだから、思い切って言う。


「私は我妻向日葵と言います。だれか母である愛美のことを知ってる人はいますか?」


すると年配の先生達は「あなたが娘さん」と言ってきた。


「母のことを教えて下さい」


私は、知っていると思われる先生たちに尋ねた。


しかし、みんなよくは知らないと言う。


そして当時担任の先生は、もう辞めてしまったという。


「その先生に合わせて下さい」


「何分、辞めた人だからね。さらに引っ越しもしたらしく、連絡先はわからないんだ」


「そんなあ……」


それから有益な情報は得られなかった。


やっとたどり着いたと思った。


母が最後に通った学校。


何か残っていると思った。


でも何もなかった。


母と同じ学校へ来れば何か分かるかも知れないと思っていた。


しかし、毎日何かしらするが、全くわからない状態だった。


14年も経って今更、何か分かる訳はない。


向日葵は諦めかけていた。



放課後になって、向日葵はどうしようか困っていた。


もう探す場所が無くなった。


そんな時に隣の席で男子生徒が「進倉(しんくら)お前ミステリー研究会なんだろ。部活楽しいのかよ」


「ああ、楽しいよ」


「どんな活動してるんだ?」


進倉と呼ばれた生徒は困って「落とし物を探したことがある」


「それが楽しいのか?」


「現実の世界では事件なんて滅多にないよ。探偵事務所だって浮気調査ばかりだろ?」


「そんなことは知らないよ。お前が楽しいならいいけどさ」


そう言って会話をしてた1人が去って行く。


残った生徒、進倉と呼ばれた人も立ち上がり、教室を出ようとしたので「あの!ミステリー研究会の人なんですよね」


「そうですが」


「私の依頼を聞いて下さい!」

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― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 母の死の真相を探るために同じ高校へ入学するという動機付けが強く、学園ミステリーの導入として引き込まれました。育児放棄されたと思っていた向日葵が、日記で母の愛情を知る場面が物語の…
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