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自分の二次小説があると知らされた僕。やる気を削がれました(2)

本当にやる気のない陽人君です

 僕は言うほどVtuberに詳しくはない。ごめん、嘘吐いた。中学の時はオタク色が強い人達と一緒にいたからVtuberにも二次創作にもそれなりに関心はある。と、僕の昔話はまた今度にして、恋紋さんに絶望的な現実を突きつけられ、現在────


「陽くん、全部話してくれるよね?」

「陽人、ちゃんと話してね?」


 リビングにて凛瑠葉さんと瑞樹さんによる尋問が行われていた。向かい側に座る二人の目には光がなく、助けを求めて隣に座る恋紋さんを見ると彼女は肩を竦めるだけ。当事者ですら理解不能なこの状況。第三者が理解できないのは当たり前


「話せと言われてもね……僕とアンジュのカップリング小説がいろんな投稿サイトに上がっていたとしか言いようがないんだけど?」


 二次小説に関しては僕に何の非もない。ネットのオモチャになるような事をしているアンジュが悪い。くっ付けられた方は災難でしかないけど


「陽人、それじゃ二人共納得しないわよ? ちゃんと一から説明しなさい」


 一から説明しろって言われても……何を話せばいいの? 僕が二次小説のネタにされましたってどう説明しろって言うんだか……


「一から説明しろって言われても……僕自身、戸惑っている部分が多いんだけど……アンジュ関係の小説はどこかで書かれるのではないかと思ってたけど、まさかブジャルとアンジュがカップリングされるとは思ってもなかったんだけど」


 ブジャルはただアンジュの配信を荒らしていただけ。カップリング要素など皆無だと思っていたんだけど……まさかねぇ? 二次創作────それも二次小説にされるとは思ってもみなかったから僕自身どうしていいか分からない


「本当はそれっぽいやり取りした事あるんじゃないの?」

「陽くん、人の妄想力を甘く見ちゃダメだよ?」

「二人の言う通りよ、陽人。少しでもそれらしい動きを見せれば妄想する事なんて容易なのよ?」


 三人が何を言ってるのか分からない。瑞樹さんの言う事に心当たりはなく、凛瑠葉さんの言ってる事はオタクなら誰でもデフォルトで持っていそうなスキルなんだけど……うん、分かんない。恋紋さんに至っては何と言うかその……考え方が腐女子の方々に近しいものを感じる。うん、理解不能だ。言える事はたった一つ


「ごめん、何言ってるか分かんない」


 中学の時、僕はオタク色が強い人達と一緒にいたから二次創作やVtuberに関心はある。カップリングも千差万別でNL(ノーマルラブ)BL(ボーイズラブ)GL(ガールズラブ)とジャンルが分かれるのも知ってる。NL、BL、GLに関しては二次創作だけじゃないんだけどね。オタク臭い趣味に理解はあるし、対象となる人同士がちょっとでも会話してると脳内変換でカップリングさせる事も特に気にしない。ただねぇ……瑞樹さん達から妄想を捗らせた奴が悪いみたいな発言を聞くとは思ってなかったよ


「「「分かりなさい!!」」」

「理不尽過ぎるでしょ……」


 何で僕が怒られたかは……聞くのが怖いから聞かない。女性陣の知りたくない新たな一面を目の当たりにしたところで時計を見ると“7:00”を指していた。僕はアンジュとカップリングさせられたショックで食欲がなく、女性陣は時間がないという事で朝食抜き。僕達は軽く身支度を済ませると大慌てで家を出た





「はぁ……」


 学校に着き、昇降口で凛瑠葉さんと別れた僕は教室へ着くとすぐさま自分の席に座り、窓の外をぼんやり眺めていた。偽ブジャルの一件が解決してないのに二次創作まで出るとは……僕の脳はショート寸前。偽ブジャルを潰そうとするは無理だっていうのは理解してる。一人の偽物を潰したところで第二、第三と現れたらキリがない。二次創作だって掲載されている各サイトで犯人を通報し、垢BANさせれば一応は解決する。だけど、文章をコピペして保存している人間はどこかにいる。一人を叩き潰したところで無駄。やったところで無意味に終わる。結論に達した僕は溜息を吐くしかなかった


 周りは昨日見たドラマや最新ファッションの話、麻子さんの配信の感想等で盛り上がってる中、僕の心は沈む一方。創作上の事とはいえ、嫌いな相手と結ばれて喜ぶ人はいない。僕も例に漏れず


「偽物も二次創作もどうしようもないんだよなぁ……」


 偽物がもたらした実害は新人や個人勢Vtuberへの誹謗中傷。二次創作は……僕の精神に多大なるダメージを与えたくらいだから目に見える実害はないけど、不本意極まりない


「偽物はボロが出るまで待つしかないか……」


 被害者達には可哀そうだけど、偽物はボロが出るのを待つしかない。というか、それしかできない。ゲームの世界に出てきたら実力の差を見せつければいいだけだから楽なんだけど、SNSという誰が何にでもなれるような場所では本物と偽物の判別は難しい。二次創作の方は……ブジャルがアンジュを嫌いだと多くの人間に認識させ、くっ付けようとすら思わないようにさせる他ない。またはブジャルと他の人がカップルっぽい事してるのを見せつけるしかない


「偽物は諦めるとして、誰とそれっぽい事をするかか……」


 偽物の事を頭の片隅へ追いやると二次創作の方へ考えを切り替える。ラノベやアニメの二次創作だと作中で少しでも絡んだり、カップルっぽい描写から妄想してってパターンだったりする。実在の人物を題材とする時は絡みから妄想するパターンが多い。アンジュとくっ付けられたのも絡む回数が多かったからと仮定すると答えは簡単でアンジュ以外の人と多く絡めばいい。問題は誰と多く絡むかなんだけどね


「よぉ、陽人。朝から辛気臭い顔してどうした?」


 誰とどう絡むか考えてると甲谷に声を掛けられ、そちらを向くと……


「君こそゲッソリしてるじゃないか」


 ゲッソリした甲谷がそこにいた。彼の少し後ろを見ると夢乃達が苦笑交じりにこちらを見ていた


「ま、まぁな……それより、偽ブジャルの事なんだけどよ……」

「あー……うん、それは偽物がボロを出すのを待つしかないよ。はぁ……」

「それしかないのか? もっと他に方法あるだろ? はぁ……」

「ないよ。誰かが警察に行かない限りはね。はぁ……」

「警察か……はぁぁぁぁぁ……」

「実害ないと警察は動かないから難しいよね……はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「「はぁ……」」


 僕と甲谷の溜息が木霊する。彼が僕と同じく何か頭を悩ませる事は察した。今の僕に何があったか聞く気力ないから聞かないけど





 溜息から始まった学校が終わり、珍しく甲谷達に捕まらなかった僕はどこへも寄らず真っ直ぐ帰宅。さすがに他のクラスメイト達も明らかに僕が沈んでたのを見て声を掛けなかったっぽい。と、クラスメイトの心情は置いとくとして、帰宅した僕は一直線に部屋へ戻り、カバンを適当な場所へ放り投げるとパソコンを起動させる。開くのはもちろん、某なんでも聞いたら教えてくれるブラウザ


「増えてたら嫌だなぁ……」


 憂鬱な気分になりながらも“ブジャアン”と検索をかける。増えてたら目も当てられない。さて、結果は────


「増えてたよ……」


 増えてた。トップに出てきたpixelのを見ただけで他のサイトはまだだけど、ここだけで増えてたのも結構ショックが大きい。主に害悪BBAと結ばれたという絶望感が……ね


「今度は結婚した話ですか……」


 朝はカップルになるまでの話だけだったのに今見たら結婚した話が追加されていた。何がどうしてこうなった? 僕が何をした? 創作は自由なんだけどさ……何て言うの? こういう事されるとさすがに萎える


「勘弁してよ……」


 例え創作上の話であってもアンジュと付き合うとか、結婚は勘弁。金に汚いオバサンと結ばれるだなんて絶望しかないでしょ。アイツの彼氏や夫に求める年収がいくらか知ってる? 年収一千万だよ? 普通に働いて一千万がどれだけ大変か知らないクセに……いや、僕も高校生だから年収一千万がどれだけ大変かは分からないけど、給料を得るって事がどれだけ大変か理解しているつもりではある


「本当さぁ……どうしてこうなるかなぁ……」


 創作は常識の範囲内でならある程度は自由だ。考え方は人それぞれだから咎めはしないけどさぁ……普通、配信を荒らされてる人と配信を荒らしてる人を結婚なんてさせる? させないでしょ?


「考え方は自由だとはいえこれはさすがに……」


 どうする事もできずただ頭を抱えた。偽物はボロ出すの待つし、二次創作は書き手の意識を変えさせる事にしよう。うん、そうしよう。直接言っても無駄だろうし。もしもこの人がブジャアン推しだったら……ね? 色々と面倒な事になる未来しか見えないし。本当にどうしてこうなったかなぁ……



















今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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