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勝手にコラボ配信に出演させられる事が決定してる僕。今回は特別です(1)

陽人、コラボ配信出演決定

 瑞樹さんにお世話になってから早一週間。四月も終わり今日から五月。その間、僕の生活には特別これといった変化はなく、甲谷達が騒がしい以外は平凡で穏やかな日々を過ごしていた


「陽人~」


 穏やかな朝。ソファーで紅茶を啜っていると間延びした僕を呼ぶ声。振り返るとこの家の主である瑞樹さんが立っていた


「何?」

「今日の配信なんだけどさ」

「うん」

「いつも通りUWОをするのは確定なんだけど」

「うん」


 瑞樹さんが今日の配信で何をするかなんて僕にはどうでもいい。配信でゲームをしようと歌を歌おうと、雑談しようと決めるのは配信者。誰とコラボしてどんな配信をしようと水越みかを推すどころかリスナーですらないから全く関係ない。僕は紅茶を一口啜った


「ブジャル君ありで美南海(みなみ)ちゃんとコラボする事になった」

「ブッー!!」


 瑞樹さんのこの一言で僕は紅茶を盛大に噴き出した。瑞樹さんは何て言った? ブジャルとコラボ? できるわけないじゃん! ブジャルは僕だ。SNSのDMにメッセージでも来ないかぎ……り?


「だ、大丈夫!?」

「ゲホッ! ゲホッ! う、うん……そ、それより、さっき言った事もう一回言ってもらっていい?」

「だ、だから、ブジャル君ありで美南海ちゃんとコラボする事になった」


 聞き間違いじゃなければ彼女はブジャルとコラボすると言っていた。美南海ちゃんって言うのは今の口振りからしてVtuberだろう。事務所に所属してないVtuber同士のコラボなんて珍しい事じゃない。仮にどこかのサークルみたいなところに所属してても関係ない。コラボする時はするし、しない時はしないらしい。っと、Vtuber同士の繋がりなんてどうでもいい。問題はどうしてブジャルとコラボする事になってるかだ


「そ、それはさっき聞いたよ……そうじゃなくて、ブジャルって人は配信者なの?」

「違うよ。でも、コラボしてくださいって青い鳥がシンボルのSNSにメッセージは送った。返事はまだ来てないけど」


 DM……そう言えば……昨日の夜になんか来てたな。イタズラだと思って無視してたけど……もしかしてアレの事?


「そ、そうなんだ……ところでさ、そのDMって何時頃に送ったとか覚えてる?」

「当たり前でしょ。スマホに記録残ってるんだから。ほら」


 瑞樹さんが見せて来たスマホの画面にはブジャル宛に送られたDMがあった。アカウントは間違いなく僕のもので彼女が送ったメッセージは未だに返事なし。え? 返事なしなのにもうコラボする事になってるの? 嘘でしょ? 


「確かに送られたのは昨日の夜だけどさ、これってコラボする事になるの?」


 ブジャル宛に送られたメッセージに書かれていたのは名前とコラボしたいという旨の文。最後に明日……正確には今日の十三時に配信する旨が書かれていた。これってコラボ確定じゃないよね? っていうか、コラボ相手が返事すらしてないのにコラボするって決めちゃっていいの?


「なるよ。ブジャル君からまだ返事貰ってないけど、美南海ちゃんとは前々から今日の配信でコラボする約束してたから」


 あ、なるほど、ブジャルとはコラボ確定じゃないけど、美南海ってVtuberとは前々から話し合ってコラボする約束してるからコラボ配信は一応、成立するんだ。言葉って難しい。で、彼女は僕に何が言いたいのかな?


「美南海ってVtuberとコラボするのは分かったけど、ブジャルって人はどうするの? まだ返事来てないんでしょ?」

「うん……」

「何時から配信する予定なの?」

「お昼過ぎから……」

「お昼過ぎか……」


 僕はリビングに掛かっている時計を一瞥。ちょうど十時を指していた。お昼過ぎという事はおそらく十三時開始だろう。でもなぁ……ブジャルは今のところアンジュの配信荒らしであって配信者じゃない。瑞樹さんも今回コラボする美南海って人も何を考えているのやら……配信荒らしとコラボするだなんてよくもまぁ、バカげた事を思いついたものだ


「美南海ちゃんがいるからブジャル君なしでもいいんだけど……その……当の美南海ちゃんがブジャル君に一度でいいから会いたいって言ってるんだよ」


 いや、知らないよ。会いたいなら会えばいいじゃん。アンジュの配信に合わせて配信するとブジャルに会えるよ? とは眉尻を下げる瑞樹さんには言えなかった。っていうか、先週の一件で分かってるはずだから言う必要はないんだけど


「アンジュって人の配信に合わせてUWОにログインすれば会えるでしょ。なんだってわざわざDMまで送ったの? ブジャルは配信者でも何でもないんでしょ?」


 配信者同士がコラボするのは珍しくない。けど、今回みたいな事は珍しい


「素のブジャル君を見たかったから……」

「意味分かんないんだけど……」


 瑞樹さんの言葉に僕は頭を抱える。素のブジャルが見たいとか言われましても……ねぇ? ブジャルの素なら今見てるでしょ? 貴女の目の前にいる五味陽人がブジャルの素ですよ?


「アンジュさんが絡んでない時のブジャル君ってどんな感じなのかな~って……」

「どんな感じなんだろうって中身の人の話じゃないよね?」

「違うよ。どんな感じでゲームしてるのかなっていう話」

「あ、そっちね」


 どんな感じでゲームしてるのかって言われてもやってる事はアンジュの配信内でしてる事と全く同じ。適当にPKしてるだけ。気が向いたら任務もするけど、基本はPKしてる


「うん」

「ブジャルって人もゲーマーならいつもは普通にゲームしてるんじゃないの? 任務とかしてさ。とにかく、お昼過ぎに配信があるのは分かったよ」


 僕は紅茶を一口飲み、立ち上がった


「どこ行くの?」

「授業で必要なものを確認したいから部屋に戻るんだよ」


 僕はそれだけ伝え、部屋に戻る。授業で必要なものの確認なんてない。確認するのは瑞樹さんからのDMだ



 部屋に戻り、すぐさまスマホを取り出し、SNSのDMを開く。メッセージに通知が一つ。考えるまでもなく瑞樹さんもとい、水越みかからだとのは解る。送り主本人から見せられたから今更確認するまでもないんだけど、僕がブジャルだと知らないだろうから返事は一応、返しておこう。今の時間は十時十分。配信開始時間である十三時まで十分に時間はある。昼食をゆっくり食べる時間はある。問題は配信終了時間。夕食の準備があるから六時間耐久とか言われたら困る事しかない


「抜ける時に適当な理由付けて抜けるしかないか」


 瑞樹さんの中でブジャルとのコラボが決定している以上、僕はそれに応えなきゃいけない。身内且つ彼女だから尚更。身内じゃなかったら絶対に断ってた


「今回だけは特別だからね」


 誰にするでもない言い訳が部屋全体に響く。本当、僕は誰に言い訳してるんだろう……


「“十三時からですね。分かりました”っと」


 僕はメッセージを送り終え、スマホを仕舞い部屋を出た




「何してるの?」


 リビングに戻った僕の目に飛び込んできたのは瑞樹さんの姿。家の主がどこにいようと自由だからそこはいいんだけど、問題は彼女の行動だ。どうして彼女は僕が飲んでた紅茶のカップに口を付けようとしてるんだろう?


「え、いや、えっと……」


 瑞樹さんは冷や汗を掻き、目を逸らす。彼女が何をしようとしてたかはバカでも分る。口に出して言うのは憚れるけどね


「えっとじゃなくてさ、何してるの?」

「いや……その……そう! ちょっと喉が渇いてちょうどいいところに陽人の飲みかけがあったから一口貰おうかな~と……」

「そう。でも、別に僕のじゃなくてもいいよね? 自分で入れるとか、冷蔵庫にあるお茶でも適当に出して飲むとか」

「それは……そうだけどさ、洗い物増やしたら悪いと思って……」


 言ってる事はそれっぽい。けど、目が泳いでるせいで全く説得力がない


「はいはい。僕と間接キスしたかったんだね」

「なっ────!?」

「図星なんだ……」

「……………はい」

「キスならマウストゥマウスでしてるのに何で今更間接キスしようとしたのやら……」


 いい二十歳超えた女性が今時男子中学生でもやらない行動しないでよ……マウストゥマウスでキスしてるのに間接キスで恥ずかしがる意味が解らないよ


「だ、だって……私達、付き合ってから一回もデートした事なかったし……それに、間接キスしてみたかったんだもん……」


 剥れる瑞樹さんをみて一瞬、心臓が跳ねた。アホな行動さえなければ彼女の願いを全力で叶えてあげようと思ってしまう程度には


「今度ファミレス行こうか? デートも兼ねてさ」

「うん!」


 この後、僕達はたくさんイチャイチャした




 昼食を終え、現在時刻は十二時五十分。後十分で美南海ってVtuberと瑞樹さんのコラボ配信の時間。僕も本(・)当(・)は(・)行きたくないけど、特別にコラボ配信にお邪魔させてもらうから準備しなきゃならないんだけど……


「陽人、今から配信するんだけど一緒にいてくれるよね?」


 瑞樹さんの発言により予想外の事が起きた。とは言っても取るに足らない問題だけど


「そうしたいのは山々だけど、課題やらないといけないから無理だよ。ごめんね?」

「え~! 課題なんて後でいいじゃん!」


 大人の貴女がそれを言うんですか? 大人なら課題あるって言われたら引き下がるところですよ?


「問題集三冊分あるんだから今日の内に済ませておきたいんだ」

「ぶ~! ケチ!」

「ケチで結構。それより、そろそろ準備しないと約束の時間に間に合わないんじゃないの?」

「あっ! ヤバッ! 私部屋戻る!」


 そう言って瑞樹さんは自分の部屋へ足早に戻って行った。ドアが閉まる音を確認し、僕も足早に部屋へ戻る。




「ブジャルとコラボとか余計な事を……」


 屋に戻った僕の第一声は愚痴。バレる事はないと思うけど、ゲームとリアルじゃ口調が違うから瑞樹さんも甲谷達も僕=ブジャルだという公式は立てないだろうとは思うけど、用心に越した事はない。今日のコラボにお邪魔させてもらうのは本当に特別


「はぁ……」


 割り切っていても溜息は止まらない。どうして配信者でもない僕とコラボなんかって不満はある。僕には配信者の気持ちが全く理解出来ないよ……
















今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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