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瑞樹さんに甘えられた僕。彼女にキスしました

陽人君がクズです

 買い出しと昼食を終え、午後の穏やかなひと時を過ごす僕、五味陽人。ソファーに座ってブラックコーヒーを飲むと少しだけセレブの気分を味わえるのは何でだろう? 


「陽人、今日は一緒に寝ようね?」


 前言撤回。ちっともセレブ気分を味わえない。この抱き着き虫と化した瑞樹さんのせいでちっとも穏やかじゃない。立ち直ったなら離れてほしいんだけど……


「僕明日学校あるから早起きしないといけないんだけど……瑞樹さんだって仕事あるでしょ」


 アンジュのオバサンとは違って僕には学校が、瑞樹さんには仕事がある。学生である僕と社会人である彼女。生活パターンが違う。一緒に寝たとして、僕の方が早めに目が覚め、今みたいに瑞樹さんに抱き着かれてたら身動きが取れない。次の日が休日だったら承諾してもよかったんだけどね


「えぇ~! 今日ぐらいいいじゃん!」

「よくないよ。言ったでしょ? 僕は明日学校があるし、瑞樹さんにだって仕事があるでしょって。明日が休日だったらいいけど、お互い学校と仕事があるんだから駄目だよ」

「むぅ~、陽人のケチ」

「ケチで結構」


 不満気な顔をする瑞樹さんは実年齢よりもずっと幼く見える。大体、僕は健全……とは言えないかもしれないけど、多感な男子高校生。対して瑞樹さんは立派な大人の女性。従姉だからとはいえ、大人の色香を感じる女性と同じ布団で寝るってのは……色々とマズいでしょ


「ずっと一緒にいてくれるって約束したのに……」

「それはそれ、これはこれだよ。僕も性欲を持て余した男子高校生だからね。理性が吹っ飛んで瑞樹さんを傷つけるわけにはいかないの。解かる?」

「解かんない! 陽人にだったら手を出されても構わないもん!」

「えぇ……」


 従姉弟だから法律的には結婚できるよ? ただ、親戚がなんて言うか解らないけど。というか、瑞樹さん? 手を出されても構わないとか気軽に言うのはちょっと……本当に手を出しそうになりそう


「自分の世話を甲斐甲斐しく焼いてくれる陽人の事が従弟としても男の子としても好きだから手を出されたって構わないもん!」


 瑞樹さんは抱き着く力を強める。僕は彼女の言葉をどう捉えればいいの? 異性からの告白と捉えればいいのか? それとも、血迷った従姉の戯言として受け流せばいいの? ねぇ? 僕はどうすればいいの?


「えっと……今のって……」

「好きな人への告白だもん!」


 わお……今のは愛の告白であらせられましたか……こんなヤケクソ気味の告白なんてされた事ないよ


「僕はどう反応したらいいの……?」


 普通なら突然の告白に戸惑うか恥ずかしがるところなんだろうけど、駄々っ子みたいな感じでの告白は反応に困る。雰囲気が雰囲気なだけにYESともNOとも言えない。別に夕日の綺麗な海辺で~とか、夕日が差し込む放課後の教室で~とか、夜景の見える綺麗なお店で~とかは望んでないけど、告白するならもうちょっとムードのある場面でしてほしかったよ……今の感じだと自分の要求を通そうとしてヤケクソになったって感じで本気とは思えないから


「ハイかイエスで答えればいいんだよ!」

「それ実質選択肢一つだよね?」

「そうだよ!」


 開き直らないでよ……はぁ……。とは言え、今のところ瑞樹さん以外からは告白されてない。他に好きな人もいない。彼女の告白をOKしても構わないんだけど、こちらに好意がないのに付き合うというのは相手に失礼過ぎる。な~んて言うと思ったぁ~? 大人の女性────それも配信者に告白されるだなんて絶好のチャンスを逃すわけないでしょ! 失礼? ざんね~ん! 僕は利用できるものは何でも利用する質なんですぅ~! でも、言葉では伝えないよ? 後で言った言わないの水掛け論になるからね


「はぁ……僕に選ぶ権利はないのね……」

「当たり前でしょ! 私が責任持って幸せにするから! 陽人は家事と私を癒してくれればそれでいいよ!」


 無茶苦茶過ぎるでしょ……


「あのねぇ……僕だって外に出たいんだけど」

「いいよ! 最後にはちゃんと私の元へ帰ってきてくれるって約束してくれるならね!」


 瑞樹さん、貴女の中ではもう付き合ってる事になってるんですね。僕、ビックリです


「もう付き合ってるみたいな感じで話進んでるのは気のせい?」

「気のせいじゃないよ! 付き合ってる前提で話してるから!」


 僕まだ返事してないんだけど……まぁいいか。どうせ言葉で返事返す気ないし


「気が早すぎるでしょ……全く……」

「いいじゃん! いいじゃん! 大人の女性からの告白嬉しいでしょ!?」

「それは……まぁ……年上の女性から告白されるのはドキドキするけど」

「ならいいじゃん!」


 年上の女性から告白されるのはドキドキするけど、受け入れるかは別。他に好きな女性がいたら断るし、誰とも付き合う気がないなら断る。告白されるって事にはドキドキなんだけど、付き合うかどうかは別の話。まぁ、僕は絶好の機会を逃さないけどね


「はぁ……瑞樹さん────いや、瑞樹はいつから強引になったのやら……」

「え? 今なん────」


 僕は瑞樹さんの唇に自身の唇を押し当てた。 ファーストキス? 何それ? 美味しいの? 僕は五味陽人だよ? 利用できるものはなんだって利用するに決まってるじゃん。たとえ自分に寄せられる好意でもね


「ぷはぁ! はぁ、はぁ……は、陽人、な、何を……」


 目を丸くして頬を赤く染め、息を整える瑞樹さん。何ってキスなんだけど


「付き合ってるんでしょ? 僕達。だったらキスの一つしても問題ないよね?」

「そ、それは……そうだけど、いきなりはビックリするよ~」

「返事はハイかイエス以外認めないって言ってた割に不意討ちのキスはビックリするとか純情過ぎない?」

「う、うるさい! 突然のキスは好きな人からのでも驚くの!」

「はいはい」


 そっぽを向く瑞樹さんに僕はそっと溜息を吐く。告白した時の開き直りはどこへ行ったのやら……


「────いして」

「はい?」

「────かいして」

「え? なんて?」

「もう一回してって言ってるの!」

「何を?」

「キス……」

「いいよ」


 僕達は再度唇を合わせた。彼女の唇はしっとりしてて柔らかかったと言っておこう




 キスが終わった後、瑞樹さんの部屋へ移動。二人でベッドに寝転がっていた。一人用のベッドだからどうしても密着しちゃうんだけど……一(・)応(・)付き合っているから別にいいか


「幸せってこういうのを言うのかな?」

「さぁ? 瑞樹さんがそう思うならそうなんじゃない?」

「むぅ~! 陽人!」

「何?」

「瑞樹さんじゃなくて瑞樹でしょ? 私、陽人の彼女なんだから」

「あ、えと……ごめん」


 面倒臭いなぁ……外堀を固めるような事しといて


「謝れって言ってない。瑞樹って呼んでって言ってるの」

「う、うん。瑞樹……」

「よろしい! ところで陽人……」

「何?」

「キス……して……」


 上目遣いでキスを強請る瑞樹さん。本当にキスが好きだなぁ……


「はいはい」


 断る理由が特になかったからいいんだけどキスマークを付けるのは勘弁してほしいと思う


「はいは一回」

「はい」

「よろしい。じゃあ、はい」


 僕は今日何度目かになるキスをした





 あの後、僕は瑞樹さんと二人で寝て過ごした。五分に一回のペースでキスしてたような気もするけど……回数なんて最初の二回くらいを境に数えるのを止めたから何回したかは覚えてない。そんなこんなで時刻は午後五時


「夕飯何にする?」

「陽人♪」


 瑞樹さん? 僕は夕飯のメニューを聞いたんですけど? どうして僕の名前が出てくるんですかねぇ


「僕は夕飯のメニュー何がいいって意味合いで夕飯何がいいって聞いたんだけど? どうして僕の名前が出てくるのかな?」

「だって陽人が食べたいんだもん!」


 リビングに瑞樹さんの意味不明な主張が響き渡る。僕が食べたい────つまり、瑞樹さんはガニバリズムの趣味があると、そういう解釈でいいのかな?


「僕は食べ物じゃないよ。真面目に答えてくれなきゃ一人分の夕食しか作らないよ?」

「え~!」

「え~! じゃないよ。当たり前でしょ。こっちは真面目に聞いてるんだから」

「ぶ~! ラーメンでいいよぅ」

「それって外食したいって事?」

「うん! 今日はひと時も陽人と離れたくないからね!」


 何度も言うけど、年上の女性に甘えられるというのは非常に嬉しい。けど、女性の外食チョイスにラーメンというのはどうなんだろう? 味気ないというか、漢らしいというか……本人がそれでいいならいいんだけどさ


「ご飯作る時くらいいいでしょ……」

「ダメ……今日は陽人の側にずっといるって決めてるんだもん。本当はお昼の時だって離れるの嫌だったもん」


 頬をプク~と膨らませる瑞樹さん。アンタは子供か……。これじゃトイレや風呂まで一緒がいいとか言い出しそうで怖いんだけど


「ご飯作る時くらい勘弁してよ……」

「ダメ……とにかく、今日は外食以外認めないから」

「分かったよ……」


 駄々っ子モードの瑞樹さんに勝てる気がせず、僕が折れる事で夕飯問題は解決。僕達は準備を整え、家を出た。向かうは前回も行ったラーメン屋。札駅に近いからラーメン屋含めて飲食店はたくさんあるんだけど、お値段が……ね? 




 夕食を終え、帰宅。僕は────


「は~る~と~」


 瑞樹さんの部屋で夕食前と同じくベッドで横になり、彼女に抱き着かれていた。リビングで抱き着かれ、ここに来て抱き着かれ……今日だけで何回抱き着かれたかな? 覚えてないや……理性が崩壊しなかったのを褒めてほしいくらいだ


「抱き着きすぎでしょ……」


 本当なら年上の女性に甘えられているという優越感に浸るところなんだろうけど、甘えられすぎて優越感すら感じない


「彼女が彼氏に甘えて悪い~?」


 キスしただけで彼女面とは……チョロすぎるよ……。とは言っても他に好きな人いないし瑞樹さんみたいな女性が僕の理想だから悪い気はしない。利用する目的だったけど、本当に彼女にしてもいいと思えるくらい。本当に付き合っちゃおうかな


「悪くはないけど……理性が崩壊しそうだよ」

「いいよ? 崩壊しても。むしろ推奨!」

「いやいや、さすがに未成年だからダメでしょ」

「えー!」

「えー! じゃないよ。バレたらマズい」


 僕達は従姉弟だからいいけど、赤の他人でバレたら捕まるのは瑞樹さんだ。オマケに僕はまだ高校生。万が一の事があって困るのは瑞樹さん。その辺りはキッチリしとかなきゃいけない


「マズくないよ! もしもの事があったら私が在宅ワークに切り替えればいいんだから!」


 在宅ワークに切り替えてもマズいんだよなぁ……


「子育てと仕事を両立させるのって大変だと思うんだけど……」

「成せば成るよ! お仕事しながら子育てしてる人なんてたくさんいるんだから!」


 その自信はどこから来るのやら……とは聞けず、僕は彼女の頭を撫でた













今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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[気になる点] 「解かる」ではなく「解る」では? [一言] (陽斗の方が)くそチョロくて草
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