濡れ衣を着せられた僕。甲谷がブジャルに会おうと言い出しました(3)
アンジュさん・・・・マジっすか・・・・
麻子さんが使ってるであろう怪獣型の機体が降り降り立ち役者が揃ったところで今日の本題……とはいかない。当然だ。今いるのは配信者のアンジュ、水越みか、園田綾の三名とそのリスナー達。個々のリスナーは少なくとも三人合わせるとクラス二つか三つ分くらいにはなる。この状態で議長もいないのに話し合いになると思う? ならない。だから僕は配信者達を除く全員をミュートにして……
「配信者諸君! サラバだ!」
宇宙へとトンズラこいた。プリンチが何のアクションも見せなかったけど、取るに足らない事。気にするだけ時間の無駄だ
『ブジャル逃げるな!!』
『待って! ブジャル君!』
『お、お待ちください!』
アンジュ、瑞樹さん、麻子さんの制止も虚しく画面が地球から宇宙に変わる。場所を移動しても通信で話せるんだから止める意味が僕には解らない。雰囲気かな? まあいいや
「待ちませ~ん! オレ用事あるから落ちるわ。バイチャ~」
『待ってよ! ブジャル君! 話があるの!』
『お待ちください! ブジャルさん! わたくしお聞きしたい事がございますの!』
ブジャル君────瑞樹さんに君付けで呼ばれると薄ら寒いものを感じる。麻子さんは直接話した事はないけど、直接話してるアンジュと瑞樹さんを除くとお嬢様口調のが麻子さんだっていうのは嫌でも解る。でね? 僕がログアウトすると思った~? ざんね~ん、ログアウトなんかしませ~ん!
「話ならアンジュのオバサンとごゆっくり~」
『『ま────』』
瑞樹さんと麻子さんの制止虚しく僕は捨て台詞を残すとすぐさま帰還。ログアウト────ではなく、モードからステルスモードを起動させた。このゲーム実はステルスという機能がある。簡単に言うとソロプレイを楽しみたい人の為にある機能なんだけど、これがすごく便利で相手にはステルスを使用している人間の声は一切聞こえない。けど、相手の声はバッチリ聞こえる。当然、特定の相手をミュートするのも可能。それだけじゃなく、さっきみたいな不意討ちをしてもされた側のキルログにした側の名前は表示されないし、他のプレイヤーからも一切狙われないというオマケ付き。まさにステルス。不意討ちし放題。欠点は一端音が途切れるところだ
「さて、静かになったところでアンジュ達は何を話すんだろう?」
瑞樹さんと麻子さんの本命は僕。だけど、僕は最初から話し合いに応じるつもりは全くない。ネットの世界なんだから他の配信者が僕に誹謗中傷されたとか、アンジュが言ってたように命令されて誹謗中傷されたと言いがかりをつけられても証拠や確証がなければちゃんとした証明をするのは不可能。話し合って自分じゃないと主張したところで信用性に欠ける。つまり、話し合っても時間の無駄なのだ。僕の持論よりもアンジュ達が話している内容だ。そっちの方が気になる
『アンジュさん、どうしてわたくしの枠を荒らしたんですの?』
『綾ちゃんの言う通りです。私も貴女に枠を荒らされる事をした覚えはありません』
『アンジュは荒らしてません~! それはアンジュの偽物ですぅ~!』
麻子さんが切り出し、瑞樹さんが便乗する。で、アンジュがみっともない言い訳をする。泥沼化する予感しかしない。当事者同士で話し合いするのは大切なんだけど、アンジュの言い訳が全く違うからなぁ……話し合いにならないだろう事は火を見るよりも明らかだ
『さっきもそうだけど、この前もブジャル君に命令されて荒らしたって言ってたじゃん。言ってる事違うよ?』
『そうですわ。先程のお話は分かりませんけど、この前はブジャルさんに命令されてやってると仰ってたじゃないですか。それが何ですか? 今になって偽物がやりましたって言い訳がまかり通ると思っておいでですの?』
麻子さんと瑞樹さんが鋭い質問を投げる。これは面白そうな事になりそうだ
『アンジュは何も知らない! ブジャルがアンジュのフリしてやったんじゃないの!?』
『今度はブジャルさんの成りすましですか……はぁ……』
『何が真実なのかな……』
アンジュの見苦しい言い訳に麻子さんは溜息を吐き、瑞樹さんも溜息交じりに言う。ネット世界の恐ろしいところはここなんだよね。確固たる証拠がないから成りすましだと言ってしまえば信用せざる得ない。割合としては信用5、疑念5と半々だ。見る人が見れば一発で偽物か本物か区別つくんだろうけど、麻子さんの瑞樹さんは多分だけど一発で見抜けるほどアンジュの事を知らない。困惑するのも無理はない
「このままじゃ僕が悪者? 別にいいんだけどさ」
アンジュは所詮ネット上での関係。嫌われたところで痛くも痒くもない。瑞樹さんは定期的に部屋の掃除に行くくらいだし、麻子さんは丈達の家に遊びに行かない限りは顔を合わせないだろう。結論を言うとこの三人に嫌われたところで僕にダメージはない。けど、アンジュの思い通りになるのは気に入らない
「仕方ない、ステルス解くか」
麻子さんと瑞樹さんはアンジュの言ってる事が二転三転し、変だとは感じていると思う。けど、裏付ける証拠がない以上、彼女を強く咎める事は出来ないようだ。僕はステルスを解いて配信者三人以外をミュートにし、アンジュ達のいるエリアへ向かった
アンジュ達のいるエリアに降り立つと阿鼻叫喚の地獄絵図がそこには広がっていた。こうしている間にもアンジュが「ブジャルは悪い奴なんだよ!」といい続け、瑞樹さんと麻子さんが溜息を吐く。状況が状況なだけにリアクションに困る
「話し合いしながらゲーム内で殺し合いしてたのね……」
アンジュ達はリスナーであろうプレイヤーも巻き込んで殺し合いをしていた。構図的に言うとアンジュ軍VS瑞樹さん・麻子さん軍。マウスやコントローラーの音しなかったのに……ゲームだからって言ってしまえばそれまでなんだけど、普通に怖いよ
「話し合いってなんなんだろう……」
ゲーム配信だから仕方ない事なんだけど、質問中にこんな事してたのかと思うと色々な意味でゾッとする
「めんどくさいなぁ……」
みんなで楽しくワイワイゲームするのと軍勢同士でやり合うのは別。娯楽で戦争とか勘弁してほしい
「まとめて始末しますか」
幸いな事にアンジュ達配信者も彼女達のリスナーも僕の存在には気付いてない。ワンパターンではあるけど、いつもの方法でアンジュ達諸共リスナーをキル。配信者三人の悲鳴と共にログにはもの凄いスピードで撃破の文字が流れた
「ふぃ、地獄絵図がスッキリしたところでVC点けるか」
ステルスモードにすると相手の声は聞こえるんだけど、こっちの声は一切聞こえない。VC点いてても自動的にオフに切り替わるんだよね~
「はろー、ブジャルでーす。貴女方三人の話し合いが情けなさすぎて戻ってまいりましたー。アンジュさーん、オレが貴女の使って荒らしたとか嘘吐かないでもらえますかー?」
『アンジュ嘘吐いてないんですけど!! そう言うブジャルこそアンジュの名前使って別枠荒らしに行かないで!!』
「オレに貴女の偽物語って別枠荒らしに行く暇ありませーん。それで騙せるのはみかと綾のバカコンビだけですよー?」
いつもは別の配信者がいたとしてもアンジュしか煽らない。だけど、今回は違う。瑞樹さんと麻子さんもついでに煽る
『私達はバカじゃないよ!』
『そうですわ! バカとは心外です! 謝ってください!』
煽り耐性低いなぁ……釣れたからいいんだけどさ
「はーい、すみませーん。信じるか信じないかは貴女達次第ですけどぉ、俺はアンジュの名前使ってお二人の枠を荒らしてませんし、アンジュのオバサンに別枠で悪さしろとも言った覚えはありませーん。ぜーんぶアンジュがやりましたー」
彼女達の関係が今後どうなるかは分からないけど、事実だけは伝えておく。配信者の関係が良好だろうと険悪であろうと僕には関係ない
『はぁ!? アンジュ何もしてないんですけど! 嘘吹き込むの止めてくんない!?』
「そういうアンジュさんこそ嘘吹き込まないでくれない? オレは別枠荒らすほど暇じゃないんだよ」
僕には学校がある。学生の本分は勉強だからいつもUWОにインできるわけじゃない。ニートBBAとは違う
『アンジュ嘘吐いてない! 嘘ついてるのはブジャルだろ!!』
確かに僕は嘘吐きだ。ブジャルって名前はイタリア語の嘘吐きから持って来てるし
「はぁ……」
『溜息吐きたいのはこっち────』
僕は溜息を吐きながら近接攻撃に切り替え……彼女が言い終える前に撃破した
「被害妄想も大概にしとけよ? クソババア」
『被害妄想じゃない!! ブジャルこそアンジュの名前使うな!!』
撃破されたアンジュは発狂。彼女の意図は分からないけど、今の彼女は癇癪を起す子供だ
「はいはい。それで? みかあやコンビはオレに何か言いたい事ある? リスナーでもいいよ」
『アンジュを無視────』
発狂したアンジュをミュートにし、ターゲットをみかあやコンビに切り替える。オバサンの発狂は面白いんだけど、今日の目的はあくまでも誤解を晴らす事。アンジュを発狂させる事じゃない
「それで? みかあやコンビはオレに何か言いたい事あるのかな? リスナーが言いたい事ある場合はソイツの名前教えてよ。インしてたらソイツのミュート解除するからさ」
と、僕に物申す場は設けてみたけど……言いたい事ある奴なんて甲谷達くらいしかいない。彼ら三人と配信者二人の話を聞いたらさっさとログアウトしよう
『じゃあ、私からいいかな? コメントでみかリストの人達は特に言いたい事ないって言ってるしさ』
最初に名乗りを上げたのは瑞樹さん。みかリスト……推察するに彼女のリスナーの総称だろう。Vtuberの中には自身のリスナーに独自の呼び方を付けるから面倒臭い
「どうぞー」
『君は本当にアンジュさんの名前使って私の枠荒らしてないんだよね? アンジュさんに荒らすように命令してないんだよね?』
冷淡な声で念押しするように問いかける瑞樹さん。質問してるんだよね? 念押しじゃないよね?
「してないよ。さっきも言ったけどオレはアンタの枠を荒らすほど暇じゃない」
『信じていいの?』
「信じるか信じないかは貴女次第。所詮はネットの世界。仮に俺がアンタの枠に行ったとしても本物かどうか確かめる術なんかないでしょ」
『それは……そうだけど……』
「なら信じるも何もないよ。話が終わりなら次の人に移っていいかな? 一人に時間かけてられないんだよね」
『ど、どうぞ……』
瑞樹さんと話を終え、次は麻子さんの番なんだけど……こっちは長引きそうだなぁ……
「みかが終わったところで次は綾、アンタの番だ。オレに言いたい事ある?」
『わたくしが聞きたい事はみかさんが聞いてくれました。それに、リスナーの皆様も言いたい事はないと仰ってますが、バレー、ドリーム、リー、ティンクルが物申したいと言っておりますのでミュート解除していただいてよろしいですか?』
「りょーかい」
僕は麻子さんに言われた通りプレイヤーリストからバレー、ドリーム、リー、ティンクルのミュートを解除した。多分、甲谷達なんだろうけど、誰が誰だか分からない。調子に乗ってリスナーも物申していいとか言うんじゃなかった……さて、誰から僕に物申すのかな?
『まずは俺だ!!』
「────!?」
甲谷の怒鳴り声に僕はヘッドホンを慌てて耳から離す。バカじゃないの? 少し声のボリューム抑えてよ
『バレー! うるさい!』
『す、すまん! リー!』
『アタシにじゃなくてドリームとティンクルに謝りなさいよ!!』
『『あ、あはは……』』
バレーが甲谷でリーが丈達。で、ドリームが夢乃でティンクルが長村か……。僕は代わり映えしないいつものやり取りを聞きながらそっとログアウトをクリックした
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




