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濡れ衣を着せられた僕。甲谷がブジャルに会おうと言い出しました(2)

ウザい義姉二人に絡まれようとは・・・・

 ちょっと遅めの朝食を食べ、部屋に戻った僕は特にする事もなく、UWОへログイン。アンジュの配信まで時間があるから準備運動がてらPKをしていた。甲谷達の事は開き直ったけど、僕には気がかりな事が一つあった


「アンジュが昼間配信だなんて珍しいな」


 アンジュが昼間配信だなんてまだ信じられない。Vtuberだって人間だ。各々の生活があるからリスナー側から配信時間の指定はもちろん、強制もできないなんて分かりきっている。夜配信する割合が多い配信者だって昼間配信する事あるから珍しい事じゃないんだけど彼女は別だ


「視聴率を気にするアンジュが何でまた昼間配信するんだろ?」


 アンジュはとにかく金と視聴率、著作権に敏感だ。優先順位としては一位に金なんだけど、二位にタイで視聴率と著作権がくる。早い話がアンジュは金に汚い。投げ銭するリスナーには好きと大好きを安売りするBBA。視聴率も投げ銭率も低い昼間に配信するだなんてまずありえない


「何企んでるんだか……」


 アンジュの不可解な行動に考えを巡らせるけど、一向に答えは出ない。当たり前だよね。キチガイBBAの考えを常人の僕が理解出来るわけがない


「どうでもいいか」


 アンジュを問い詰めたところで薄情するわけがない。人の話を最後まで聞けないんだから


「甲谷達大変だろうなぁ……」


 PKが一段落したところで帰還し、ログアウトし、PCを点けたまま部屋を出てリビングへ向かった




 リビングに入ると千夏さんの他に黒髪ロングの女性とボブカット女性がいた


「嫌な時に降りてきたなぁ……」


 千夏さんともそうだけど、僕は彼女達とも極力一緒にいたくない。特に黒髪ロングの方。彼女とは絶対二人きりになりたくなかった。ボブカットの方とも二人きりになりたくないけど、黒髪ロングよりかはマシだ


「よし戻ろう。そうしよう」


 見つかる前に僕は踵を踵を返す。しかし────


「陽人、挨拶くらいしたらどうなの?」

「陽くん、ワタシ達から逃げようとしたの?」


 見つかってしまった


「ご、ごめん、ちょっと考え事しててね。別に逃げようとしたわけじゃないよ」


 仕方なく振り返る。アンジュの配信荒らしがあるから長話は勘弁してほしいんだけどなぁ……


「アナタが考え事してようとどうでもいいのよ。私は挨拶くらいしたらどうなの? って言ってるの」

「ワタシはどうして逃げようとしたか聞いてるの」


 二人の鋭い視線が刺さる。髪型は違うのに二人共妙に細かい。黒髪ロングの方は来たばかりの僕に挨拶を強要するし、ボブカットの方は逃げようとしてないのに逃げようとした前提で質問してくる。要するに彼女達は面倒臭い


「さっきも言ったでしょ? 考え事してたって。それに、部屋に忘れ物したのを思い出して引き返そうとしただけで逃げようとはしてないよ。恋紋(れもん)義姉さん、凛瑠葉(りるは)義姉さん」


 黒髪ロングの方が長女の恋紋さんでボブカットの方が次女の凛瑠葉さん。二人共僕の義姉。恋紋さんが大学一年生で凛瑠葉さんが高校三年生。僕にとっては単なる面倒臭い人


「アナタの事情なんて知らないわ。私はちゃんと挨拶をしろって言ってるの」

「ワタシは逃げようとした理由をちゃんと説明してって言ってるの」


 うるさいなぁ……実の姉でもないのにゴチャゴチャと……


「ごめん、次から気を付けるね」


 僕は義姉二人を適当にあしらい部屋に戻った



「うるさいんだよ!! 後から家に来た余所者の分際で!!」


 部屋に戻った僕はドアに鍵を掛け、思い切り壁を殴った。義姉二人は僕が高校生になってからずっとあんな感じ。何かにつけて僕に干渉してくる。それ以前にも過干渉ではあったんだけどね


「クソ! クソ! クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 自室内に僕の雄叫びだけが響く。あの二人には殺意しか湧かない。家族の情? 何それ?


「はぁ、はぁ……クソッ! こんな家出て行って瑞樹さんのところで暮らせばよかった」


 僕がこの家にいる理由はただ一つ。この部屋があるからに他ならない。けど、あんな入ったばかりで挨拶の事をグチグチ言う義姉と決めつけでものを話す義姉とは一緒にいたくない


「機を見て瑞樹さんのところに転がり込もう。はぁ……このストレスはアンジュの配信荒らして解消しよう」


 ベッドに寝ころび、パソコンの方へ顔を向けるとスリープ状態で真っ暗になった画面に醜い僕の顔が映った



 何もせず時刻はアンジュが配信する時間となった。僕はパソコンに向かい、スイッチを入れる。義姉二人に干渉されたストレスもチャラだ


「始めようか」


 UWОにログインし、いつもの画面からプレイヤーリストを開き、ログインしているプレイヤーを確認。リストにアンジュとプリンチを発見。ついでに見慣れた名前を一つ見つけた


「瑞樹さんもいたんだ……」


 リストを見てちょっとビックリした。まさか水越みかがいるとは思ってもいなかったからだ


「これは面白い事になりそう」


 僕は意気揚々としながらマイクとヘッドホンを接続。ボイチェンを起動させ、いつもと同じ設定にしてアンジュ達のいるエリアへ




「何この状況」


 アンジュ達のいるエリアに来て僕が見たもの。それは水越みか軍とバトルしてる場面だった。状況を簡潔に説明するとアンジュ軍VS水越みか軍。どうしてこうなったかは大体予想がつく。大方アンジュか彼女の偽物が瑞樹さんの枠を荒らしに行ったからってところだろう


「通信点けてみるか」


 声が聞こえないから彼女達が何を話しているか分からない。戦ってる理由ももしかしたら純粋にゲームを楽しんでいるだけかもしれないし


 僕はアンジュと瑞樹さんのみミュートを解除し、ヘッドホンを付ける。今日は甲谷達一行と麻子さんって人も来るから荒らす方としては面白くなりそうだ。話し合いにはならなさそうだけど


『はぁ!? アンジュはブジャルに命令されて仕方なくやっただけなんですけどぉ~!』


 通信点けて初っ端がアンジュの怒声とか今日は本当についてない。厄日かな?


『貴女が誹謗中傷したのは事実でしょ? ブジャルさんに命令されたとか関係ありません!! 言い訳しないで!!』


 アンジュの言い訳を問い詰めてるのは瑞樹さん。Vtuberの時はぽわぽわ系なのに怒声を上げるだなんて珍しい事もあるもんだ


『言い訳じゃありません~! アンジュは事実を言ってるだけですぅ~! アンジュ何も悪くないもん!』


 自分の悪行を人のせいにするとは相変わらず見苦しい。僕がする事は変わらないんだけど


「さぁ、処刑タイムだよ」


 今回はアンジュと愉快な仲間達だけじゃなく瑞樹さん御一行も近くにいる。アンジュ達だけなら近接武器での不意討ちもありっちゃありなんだけど、それだとスマートじゃない。絶対にやられない事を前提にはしてないけけど、荒らすなら出だしくらいはスマートに決めたい。ワンパターンで味気ないけど、僕はいつも通り超粒子砲でアンジュと瑞樹さん、その囲い共に狙い……


「はい、撃破」


 二つの勢力を全滅させた。本当に味気ない。二大勢力を一網打尽にするためとはいえ、同じ方法で撃破。ログにはアンジュと瑞樹さんを始めとしたプレイヤー達のキルログが流れるけど、見たところで達成感はない。あるのは虚しさだけ


「特別強くもない僕にアッサリ殺されるとは味気ない……」


 味気なさすぎるにも程がある。アンジュは毎度の事ながら瑞樹さんも味気ない。配信者にゲームの腕は求めてないし、今のは完全に不意討ちだから仕方ない部分はあれど、それだって味気なさすぎる。機体の性能を熟知してないの? 反応が面白ければそれでいいんだけど。さてどんな反応を見せるかな?


『超粒子砲は卑怯~!』

『不意討ち止めてよ~』


 アンジュにも瑞樹さんにも不意討ちは効果抜群だったみたいだ。そんじゃVC点けますか


「卑怯もらっきょも大好き! どうも! ブジャルで~す! ババア二人には超粒子砲はキツかったかなぁ~?」

『またお前か!! ブジャル!! 毎度毎度アンジュの配信荒らして楽しいか!!』

『えっ!? 君がブジャル!?』


 不意討ちの犯人が僕だと分かった途端に怒声を上げるアンジュと驚嘆の声を上げる瑞樹さん。二人共、ログくらい確認しようよ……。前もこうやって殺してあげたんだからさ


「二人共さ~、前回もこうやって不意討ち食らったのに学習能力なさすぎるでしょ。何? オバサンになると吸収力も落ちるの? 不意討ちしてごめんねぇ~」

『アンジュはババアじゃないんですけど!! まだ二十代前半なんですけど!!』

『君、いきなり失礼だね』

「オレは思った事を言っただけで~す! それより、アンジュ! な~に勝手に人に濡れ衣着せてるんですかぁ~? バカなんですかぁ~? それとも! 歳だからボケたんですかぁ~?」

『アンジュ濡れ衣なんか着せてないんですけどぉ~? そっちこそ言いがかりは止めてくださ~い!』


 言いがかりねぇ……どの口が言ってるんだか……


「言いがかりも何もさっき言ってましたよねぇ? オレに命令されて別の枠で誹謗中傷したって! オレがいつ貴女に他のVtuber誹謗中傷して来いって言いましたぁ~? ねぇ? ねぇ?」

『アンジュは誹謗中傷なんてしてない!』


 甲谷が証拠持ってるし、さっき瑞樹さんとの言い争いを一部聞いてたけど、バッチリ僕に命令されて誹謗中傷したって言ったじゃん


「あれれ~? さっきオレに命令されてみかを誹謗中傷したって言ってましたよね~? 忘れたんですか~?」

『言ってない!! アンジュに言いがかりつけんな!!』

「言ってない? ならみかに聞いてみようか? ん? オバサンはもの忘れ激しいみたいだしさ」


 決定的な証拠があってもアンジュがしらばっくれるのは最初から分かっていた。ならば言い争っていた相手に聞くのが手っ取り早い


『オバサンじゃなくてお姉さん! アンジュは何もしてない! むしろ被害者! ごみかに言いがかりつけられたんだから!』


 真偽はともかく、証拠があってなお被害者ですか。そうですか。まぁ、自分で僕の命令で誹謗中傷したって言ってるから限りなく黒なんだけどね


「はいはい。オバサンは黙ってようね。で? みかさん? どうなんですか? アンジュのオバサンに誹謗中傷されたんですか?」

『う、うん……昨日の深夜枠配信でね』


 嘘でしょ? この人昨日僕が寝た後で配信してたんだ……


「だ、そうですよ? アンジュのオバサン?」


 瑞樹さんの言ってる事の真偽はともかく、アンジュが誹謗中傷したという証言は取れた。問題は彼女がどう返してくるかだ


『アンジュはやってない!!』


 やっぱし……言うと思った。さっきは僕に命令されて誹謗中傷したって言ってたのに……。それはそうとプリンチが黙ったままだな。アンジュがピンチになのに……


「はぁ……」


 呆れて何も言えなかった僕は溜息を吐いた。証言と自白があるのにまだ自分はやってないと言い切るだなんて子供でもしないよ……


『溜息吐きたいのはアンジュなんですけど~? ブジャルさ~、アンジュの名前使って他の枠に誹謗中傷しに行くの止めてくれない?』


 もう何も言うまい。しらばっくれたと思ったら今度は責任転嫁とか……彼女のような大人は見てて情けない。アンジュに情けなさを感じていた時だった


『あ、やっほ~、綾ちゃん』


 どうやら園田綾が到着したらしい。という事は、甲谷、夢乃、丈達、長村もいると見て間違いない。役者は全て揃った。さて、始めようか。配信者と愉快な仲間の蹂躙をね

















今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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