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横四楓院絞男は漫画喫茶がお好き

 スパイの活動拠点となるアジトの選定は慎重にすべきであることは全宇宙の常識である。アジト選定における条件は以下の三つである。①目立たぬ立地であること。②常に最新情報を最速に仕入れることが出来る環境であること。③狭く、快適な環境であること。まず、①はもはや説明するまでもなく、スパイが極秘任務中に敵組織に見つかるなど一ヶ月洗っていない靴下の出し汁で米を炊くのと同じくらい非背徳的な行為である。②は、情報は時間の生き物である……を体現したようなものである。スパイにとってナマの情報は貴重であり、敵組織を分析する形のない武器となる。情報戦争の時代、いつでもどこでもどこまでもスパイは情報と添い遂げる覚悟が出来なければやっていられない。そして、最後に③であるが……すみません、これは完全に僕の好みです。広いと何かソワソワムラムラして落ち着かない。それに魔改造スケベフィギュアだとかイエス・ノー枕とかそういう余計なものを置いちゃいそうでアジトが夜勤明けのバーコードおやぢの髪みたいに雑然としそうで何かやだ。以上の条件に付随して、アジトは複数構えるべきである。転々とアジトを変えることで敵組織を撹乱させる狙いである。


 僕こと横四楓院絞男の現状のハウスもといアジトは『オンボロ家屋(※絞男ハウス)』『早朝の教室』『学園の男子便所』『視聴覚室』『駅前カラオケボックス』である。しかし、ここで挙げた場所はいずれも、アジト三箇条が揃っていないし、あくまで変態ボマーから身を守るダミー的な役割のアジトである。オンボロ家屋なんぞ、暴走機関車のようなおかんや中二神の生まれ変わりのようなイモウットが自宅待機しているからアジトにとって最悪な環境……いや、年がら年中、天井裏で鼠とクソネコによる大運動会が開催されていたり、部屋数が少ないからイモウットと共同部屋で狭いからアジト三箇条③には当てはまっているな……嬉しくもないけど。


 そこで、僕がもっともアジトでお勧めしたい物件が『漫画喫茶』である。漫画喫茶はその名の通り、無数に漫画を貯蔵している施設であり、プランにより異なるが基本的に各個人に狭い個室が割り当てられ、インターネッツ環境も整っている。それに最近ではセルフサービスでジュースやアイスクリーム、味噌汁と言ったものまで飲み放題というまさにアジトの桃源郷がここにある。まあ、毎回費用がかかるのがネックではあるが、誰にも邪魔されず一人で遊べる……仕事が出来るという点においては最高の環境である。


「いらっしゃいまほ~、お客様? 当店のポイントカードはお持ちでしょうか?」


 駅前の漫画喫茶に入ると、純情そうでおケツが大きそうな女子店員にそう声を掛けられた。大学生くらいかな?僕はハッキリ言って、年上の女性がお好みなのである。これは、イケナイな。僕の諜報リストに加えておかなければ……言っておくが、年上好みと言っても入れ歯を装備しているような老婆はノーセンキューである。ストライクゾーンの上限は四回生の女子大学生である。


「はあ……。キャッシュカードじゃだめですかね?」

「ダメに決まってんだろうがすっとこどっこい……お客様、お席のタイプはお決まりでしょうか? お煙草はお吸いですか?」

「フルフラット席で。パイ乙はお吸いになりますが、お煙草はお吸いになりません」

「はあ? テメ、舐めてんのか、おちん●童貞?」

「ヒェッ、ご、ごめんなしゃい。調子乗ってもうてすんましぇん……」


 いきなり、乱暴にカッターシャツを掴まれ、メンチを切られる僕。あかん、怖いわこの娘……冗談がいっこも通じひん。こうして、僕はケツ毛店員にブースを案内される。


「さて……。ナニをしようかな」


 ①少女漫画を読み耽る。

 ②インターネッツサーフィンする。

 ③AV(アニマル・ビデオ※六話参照)を観賞する。

 ④横になって、天使のようにすやすやと寝る。

 ⑤アランカルトのポテトフライを食べる。

 ⑥ケツ毛店員を諜報する。

 ⑦スネ毛を抜いて、ライターで炙る。

 ⑧たこ踊りをする。


 うーん、思いの外、スパイとしてやるべき訓練が多いなあ。時間も限られているし、今回は幾つかピックアップするか。①は女子の複雑怪奇な乙女心理を勉強するのに必要な訓練だし、②も情報収集に必要だし、③も気分転換に必要であるし、④もスパイたるもの仮眠は体力回復の為に欠かせないし、⑤も同じだ。⑥も諜報活動に必須だし、⑦は女装任務の際に必要な立派なおめかしだし、⑧は……、……。


 何だ!結局、今、全部やるべきことだし、この中からチョイス何てできやしないぞ!う、うーん、あっ、そうか!選べないなら全部ヤッチャえばいいじゃない!よし、じゃあ。


 横になってフライドポテトを貪り食いながら少女漫画を読み、その傍らAVを流し、インターネッツサーフィンを楽しむ。休憩がてらスネ毛を引き抜きつつ抜けた毛は燃やしながら舌で味わい、たこ踊りでケツ毛店員をストーキングする。


 …………。

あれ、何かいつの間にかカオスな訓練になっているような気がするけれど。まあ、いいか。気のせいである。


「どーん! あー、やっぱり佐藤くんここにいたあ! 仲間外れはひどいよ!」

「はうっ!」ビクッ


 誰得訓練の準備に、スネ毛をカミソリで剃る為にスーツのパンツの裾をたくし上げていた時のことである。背後にあるブースの扉が思い切り開かれ、外からアマゾネスが僕のアジトに侵入してきた!キャアアア!痴漢よ、痴漢!誰かあ、このアマゾネスを逮捕してえ!僕が襲われる前に!


「あ、ア、あっ、アマゾネス! ひぃん! お、おか、オカズにしないでぇ!」

「あ~、アマゾネスって、ひどいよさっとうくん! せっかく、差し入れ持ってきてあげたのに!」


 アマゾネスもとい田中某はぷうと頬を膨らませて、袋を手渡す。あ、珍しく気がきくなこいつ。ここは無視するのも気が引けるし、素直にお礼を言おう。


「あ、ありが」


 袋に入っていたのはガングロ和服仕様のリ●ちゃん人形。なんすかこれ……こ、これを何に使えと?


「ところでさっとうくんはズボンの裾を捲って何してるの?」

「あ、え、えっと……足のケアを……す、スネ毛を剃りましゅ」

「へー、それで剃り落とした毛をお茶漬けにかけてワシャワシャと口にかき込むんだ」


 げー!や、やめろ!き、気持ち悪い!想像してしまったではないか!てか、この女はいつの間に僕の隣に座っているんだ!しかも仮にも女の子が胡座をかくんじゃない!し、しかも、このブースはせ、狭いのに、ち、近い……です。


「ん~? あー、わかった! 佐藤くん、誰も見てないと思っていやらしいビデオを見ようとしてたでしょ! だから、自分の足の毛を抜いてたんだ! わーい、えっち!」


 あ、足の毛を抜くのとやらしいビデオを見るのがどう繫がるんだよ!足の毛を抜きながらエロいビデオを見てたって言いたいのか?いったいどんな心理状態なんだそれ……。


「まあ、でもお互い様みたいなもんだね。私も丁度隣のブースでエロゲしてたし」

「ちょっ、おまっ……未成年!」

「『隣人の幼妻は飼育員の俺と相性が良い件について ~蜜月の肉棒感謝祭~』ていうタイトルでネトラレものらしいよ。やー、間男が舞妓姿でギターを弾きながらベランダから侵入してきた時は土器土器したよー」


 やめろっ、ドヤ顔で事細かに説明するな!隣に聞こえてないだろうか……ていうか、先刻から僕がエロ動画見ている前提で話が進んでいるけれど僕は見ていない!ただ、警索(※修行と称して体罰するための棒)を装備したお坊さんとワンコがにゃんにゃんと戯れるビデオを見ようとしていただけだ!


「というか、佐藤くん、臭いよ……佐藤くんから何か異臭が漂うよ。ちゃんと、洗ってる?」


 田中某は鼻を摘まみ、顔をしかめる。こらっ!誤解を招くような言い方をするな!確かに先刻、餃子食べてたから口がニンニク臭いかもしれないけれども!


 シュッ、シュッ。


 田中某はいきなり僕に謎の液体をかけてきた!ワア!な、ナニをする!り、硫酸か!?僕を溶かして亡き者にするつもりか!?


「ヒャアアア! あ、オタスケ……! あ、あれ、良いニオイ」

「にっしっし、バニラ香水。でしょー、振りすぎたら鼻モゲラだけれど、軽く適度につけといたら、佐藤くんも、明日からモテモテ! ……あ、やっぱり返して。佐藤君はモテない冴えない窓際族がお似合いだと思う」


 田中某は僕に渡した香水の瓶をぶんどる。な、何なんだよ!嫌がらせか!畜生め、いつもヤラレテばかりの僕じゃないぞ!今日という今日はお前に陰毛を渡してや……引導を渡してやります!


「あ、あの……ひとつ、いい、でしゅか?」

「ダメ」


 畜生!言わせろ!


「…………」

「ごめん、ゴメン。拗ねないでよ、スネ毛だけに。いいよ、何かな?」

「え、えっと……その。ど、どうして僕にそんなに構うんですか……? じ、じじ自分で言うのもその、あれ、です、けど。こ、こんな、何の取り柄もないぼ、僕、に……」


 畜生!自分で言ってて情けなくなってきた!僕の言葉を聞いていた田中某はキョトンとした顔になり、そして苦笑いする。


「あー……やっぱ、覚えてないよ、ね」

「は、は?」

「そっか……えっと、何だっけ? 何で佐藤くんに構うかって質問だったよね」


 そして、田中某は笑顔で。


「佐藤くんが大好きだからだよ」


 …………。


「…………」

「…………」

「…………」

「……あ、や、ま、待って……。ち、違う……その、あ、あの……ば、ばいばい!」


 そして、田中某はこれ以上ないくらい頬を紅潮させて僕のアジトから走り去って行った。


 そして、一人、ブースに残された僕は……。


「あっあ、あぁああ……ア嗚呼、あああああ゛あ゛アアッああああー!」

「うるっせーぞ! ほかのお客様に迷惑なんだよ! ちん●野郎!」(ケツ毛店員)

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