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横四楓院絞男は耳かきがお好き

 五感の一つである聴覚を司る耳はプロのスパイにとって重要な感覚器であることは世界の常識である。昨今の現代人は視覚による情報、すなわち目に入る情報に頼りがちであると言われている。盲目の凄腕猟師は己と獲物の位置関係、距離、そして獲物の数を全て音という耳から入る情報を駆使して、獲物をハントするという。凄腕のプロたる僕こと横四楓院絞男もそれは例外ではない。僕を中心に半径一メートル以内で異常音を察知した際、すぐさま対処という名の敵の殺処分を冷静冷酷に着々と行う。容赦はしない。敵組織に情けなど天ぷらのサツマイモをご飯のオカズにするのと同じくらい無用な行為である。射程外からの銃声も僕の固有結界に入った瞬間、すぐさま察知し、ひらりと華麗にバレエのように避ける。このように耳から入る音はスパイにとって大変に重要な情報なのである。


 しかし、である。

音を認識する肝心の耳が錆び付いていては元も子もなくいざという事態に誤った情報を受け取ってしまい、命を落としかねない諸刃の剣と化してしまう恐れがある。そうならない為にも己の聴覚の要である耳という部位を常に研ぎ澄ませておく必要がある。


 耳かき、である。

耳かきとは鼓膜を邪魔する耳垢を綿棒という武器で女体を扱うように優しく除去する行為のことをいう。乱暴にしなければそこまで精度は求められないことからソロでも耳かきプレイは出来るのである。


「はあ……。誰か僕の耳の中を掃除してくれる巨乳のレースクイーンはいないものだろうか」


 僕は早朝の学園のリノリウムの廊下を一人、歩きながら呟く。膝枕付きで宜しくお願いします!巷では、メイド服やセーラー服を身に纏った女性が膝枕で成人男性の恥垢にまみれた耳の中を掃除してくれる膝枕型の耳かき専門店があるというではないか。うむ、実にけしからんイケナイお店である。こんなブラックな店は早急に潰さなくては……是非、僕の耳の中も掃除してもらいたい。押せば返るような優しさ溢れる十代でレースクイーンな女子の太股の感触に包まれながら耳の中を弄くり回してもらいたい。そして、耳元で『やだ……。お兄さん、とっても大きなブツがこんなに取れましたよ?』とか言われながら屑を見るような蔑んだ瞳で見られた……いかんいかん、何か段々と目的が変わっているような気がする。兎に角、僕は耳かきのソロプレイなど侘しくて寂しいこはしたくないのでござる!ちょっと赤面なあの娘に耳の穴の処女を捧げたいのでござる!


「そうか、それは丁度良かった。ちょっと、こっちに来てくれ、横四楓院氏」


 ぐいっ。


「クェエエエ!」


 いきなりカッターシャツの襟元を掴まれ、ズルズルと引きずられて思わずチョコボールが大好物なキャラクターのような悲鳴を上げてしまう僕。えっ、ちょっ、待って!いきなりそんな激しすぎます!だ、誰だ今まさに僕を誘拐している変態通り魔は!引きずられながらも誘拐魔の後ろ姿を見る。この特徴的な馬の尻尾の髪型に白衣姿の小さな身体は天宮女史だ!変態の天宮女史だ!や、やばい、僕はいったい何処に連れて行かれるのだろう。ち、畜生め!頼みの綱の僕の愛棒じゃなくて相棒のトカレフは家の冷蔵庫の中に忘れてしまった!ぼ、僕はもう二度とシャバの空気を吸えないのだろうか……。


「ほら、着いたぞ」


 謎の部屋の前まで連れて行かれ、その部屋の中に放り込まれる僕。ら、乱暴はよせ!ハジメテだからせめて優しくしやがってください!いや、ナニを言っているんだ僕は。天宮女史は僕を謎の部屋の中へ入れるとすぐさま内側から鍵をかける。えっ、な、何で閉める必要があるの?ひ、秘密裏に僕を処理しようという魂胆か!色々とこの学園の秘密を知りすぎた僕を始末する為にこの女は!し、しまった!僕としたことが何たる迂闊!や、やばい。このままでは労災が下りないではないか!


「? ナニをしている横四楓院氏。こっちに来い。さっさとヤルぞ」


 サッサとナニをヤッチャうの!?

ぐっ、このまま僕はこの女に弄ばれてしまうのだろうか。百歩譲って命を落とす結果になったとしてもそれは僕の自己責任だ。スパイは常に生と死の隣り合わせ、それはこの際仕方ない。しかし、死すら許されない行為だとしたら?そう、例えばこの目の前の女はケミカル幼女である。ケミカルならではの改造人間という名の生き地獄を僕に永遠に味合わせてやるつもりではないだろうか。い、いやだ!この女に一生、玩具とそして実験動物として生きるのは絶対にイヤだ!


「た、たしゅけて。たしゅけてくだしゃい! な、何でも……何でも、オナシャッス!」

「……。事故で頭でも打ったのか君は? いいからこっちに来い。膝枕で耳かきをして欲しいと言ったのは君だぞ? ほら、始業までそう時間はない」


 パンパンとスカートの上から自分の大腿を軽く叩き、そう言う天宮女史。


「耳かきって……僕好みの巨乳のレースクイーンと真逆やないかい! ……あ、ご、ごめんなしゃい」

「何故、そこだけハッキリと言えるんだ君は。まったく、失礼な奴だ」


 口先だけ尖らせながらも全然イヤそうな顔をしない天宮女史。ほっ、よ、良かった。今日はご機嫌が良いのかな?天宮女史がご機嫌斜めだったのなら今頃僕はハイヒール踏みつけ地獄の刑だったろうな。あ、それも結構良いです。


「さあ、無駄話はもう済んだろ? 今から君の肥溜めのような耳の中を掃除してやろう……カマン!」


 天宮女史は自信満々な顔して言いながら、右手に千枚通しを装備する。


「ちょっ、ちょおおお! た、たんみゃ! ナニしゅる気ですか!?」

「はあ。本当に分からないな君は。耳かきに決まっているだろう?」


 分からないのはお前の頭の中だ!

み、耳かき!?正気かこのケミカル幼女は!ふー、やれやれ、みたいな顔をするな!こ、鼓膜を破って僕の貴重な聴覚を潰すつもりか!?僕のスパイ生命を断つつもりか!?それとも耳の穴からその恐ろしい凶器を突っ込んで脳死に至らせるつもりか!?チックショウ!油断した僕が馬鹿だった!


「何をびびっているんだ君は。安心しろ、鼓膜を傷つけないようにこう……コリコリッと優しく耳をかいてやるから」


 今日ここ一番な笑顔で天宮女史は僕に向かって手招きする。そのお前が手にしている凶器の先端が既にお肌に優しくないんだよ!コリコリッとかそんな優しい擬音じゃないんだよ!ゴリゴリとかそう言う命を削る音だ!地獄だ、地獄の手招きだこれ!


「? ああ、そうか。君が大好物な萌え属性とやらが足りないのが気に入らなかったのだな。すまない、『何をびびってるんだニャ~君は。安心してくださいご主人様タマ~鼓膜は傷つけないようにガリガリと善処しますニャ(棒読み)』……はあ」


 な、なんだ!その無理矢理言わされた感がヒシヒシと感じるやる気の無い台詞は!心が全然こもってないよまったく!全裸ニーソでやり直しを要求する!


「い、いや、こ、これ。これを使ってくだしゃあ……」


僕は恐る恐る目の前の凶器を持った女を怒らせないようにスーツの懐に入っている綿棒を取り出して、渡した。


「なんだ、このやわっちいブツは? 心許ないな。これでは勝てないぞ」


 な、ナニと戦っているんだよこのケミカル幼女は!耳かきに勝敗要素とか一切絡まないんですけれど!そして、僕は天宮女史の大腿にお邪魔して左耳が上になるように横になった。


「ううっ、貧相な太ももだなあ……あ、ご、ごめんなしゃい」

「先刻からわざとやっているのか君は? まあ、いい。眠っていろ。動くなよ」

「や、優しくしてね! 優しくしてね! とっても優しくしてね!」

「なんだ、それはフリか? 安心しろ、こう見えても私は耳かき専門店で働いていた過去があってな。そこでは『ゴッドハンドイクイク』と崇め奉られ、おっと、手元が狂った、すまない」


 いった!ちょっと!真面目にやって下さい!天宮大先生!だ、大丈夫かな。ひょっとしたらあかん奴ちゃうかこれ。気付いたら耳の穴の中が血でべっとりとか僕絶対やだかんね!血とか見るだけでも怖いし!あ、怖くないし!し、しかし、不安感しか沸かないな。ふざけて冗談だったらまだしも、自信満々な顔して耳かきに千枚通し出してたからねこの人。ああ、怖い、怖すぎィ。


 コリコリ、コリコリ。


 あ……いい、気持ち良い。耳垢が取れる最適な力加減で耳かきをしてくれているような気がする。自分でやってもなかなかこの気持ち良さは得られない。なんて言うのかな、言葉で上手く説明するのは難しいけれど他人に自分の身を委ねるこの不思議な感覚。散髪の時と近いものがあるかな。なかなか伝わらないかもしれないけれどこの安楽感はたまらない。天宮女史の貧相な太ももには残念だけれど、オカンや野郎の堅くてゴツゴツとした太ももよりはよっぽどマシである。


 コリコリ、コリコリ。


 ふぁああ……あ。ほ、本当に気持ちが良い。気持ち良すぎて夢の世界へと旅立ちそう。し、しかし、だめだ。プロのスパイたる者、他人や敵の前で無防備に寝るなど、ヤッチャって下さいと言っているようなものである。あ、あかん、この快楽は耐えられない。お休みなさい……。


 …………。


──三十分後。


「おい、起きろ、横四楓院氏。もうすぐ始業のチャイムが鳴るぞ」

「ファ、ファイ……?」

「よし、起きたな。私はそろそろ授業の準備をしなければならないのでな。さあ、出てった、出てった」

「…………」


 唐突に廊下へ放り出される僕。

寝てたのか、僕。何かケミカル幼女がいたような気がするけれど。まあ、いっか。僕もさっさと着替えて次の授業の準備を。


「ファイッ!?」


 え、あ、ちょっ、うっそ!

な、何で僕、下着姿(白のブリーフ一丁)なのぉ!?えっ、状況かよくわかんない!こ、ここで一体……記憶が無いけどストリップ大会でも開かれていたのか!?


「あー! もー、探したんだよ佐藤くん! 今日は何して……何して……ナニして」

「…………」

「…………」


 ダダッ。


 ま、待って!?

せめて何か言ってから走り去って田中氏!?ご、誤解なんだァー!

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