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横四楓院絞男はファストフードがお好き

 『にぃに! ファストフードに行く! じゃないと暗殺する!』


 放課後。

バイキングで何か妙にテンション上がって口に含むエサの配分を間違えたハムスターのようにふくれっ面をした睦海にそうせかされた僕は駅前の某ファストフード店にやって来た。睦海を『だまらっしゃい』の一言と僕のご子息…ご自慢のトカレフを突き付けて黙らせることなど赤子の手をひねるようなものである。しかし、悲しいかな。久しぶりにあの女の腐った野郎のようにねちっこく脂っこい高カロリーな食糧を口にしたくなったのである。ああん、貧乏舌な僕のバカ。


「ハンバーガー! ハンバーガー! ハンバーガー! ハンバーガー!」


 レジ前で並んでる際に、睦海は瞳をキラキラさせて口元から涎を垂れ流しながらサポーターのように好物を連呼する。ハッキリ言おう、撃ち殺してもいいですか?中学生の癖に駄々っ子のように騒ぐんじゃない。この暗殺オタにイイように使わされるのは癪なのだが今は身体がジャンクフードを求めているのだ。基本的にスパイである僕の主食はくさやにワインと相場が決まっているのだが、偶にはあの罰ゲームから逃れてこういうリア獣御用達のエサにありつきたいのである。


「いらっしゃいまほ~。ご注文はお決まりですか?」

「はいはい、はい! スマイル! スマイルください!」


 僕と睦海の番が来ると睦海はおっぱいがでかそうな店員のおねーさんに笑顔で挙手し、スマイルを要求する。するとおっぱいがでかそうな店員のお姉さんは僕と睦美にアヘ顔を披露する。こいつら、二人まとめて僕のトカレフでお仕置きしてやろうか?


「えっへっへ~。おいしそうだね、にぃに! はやく! はやく食べよにぃに!」


 無事、高カロリーなエサを購入し終えた僕と睦海はテラス席に座る。はやく食べよとか言いつつ僕のポテトに何の断りもなく手をつけ貪り食う彼奴を思い切りドつきたい衝動に駆られたが、まあいい。妹の失礼な言動や行動にいちいち腹を立てていても仕方がないし、ここは兄として東京ドームのような器の見せどころである。まあしかし、お前の冷蔵庫の中にある大切にとっておいた人質のエクレアがどうなっても僕は知らないがな、フフフ。


「こら、睦海。そんな闘牛のようにハンバーガーを喰い散らかすんじゃないよ。慌てなくてもお前のハンバーガーは逃げて行かないぞ。お前のエクレアは逃げて行くけどな」

「えへへへへ。だって、おいしいんだもん!」

「はいはい。しかし、これだけじゃあ身体に悪いからな。これも食べろ」


 僕は堕天使のように幸せそうな表情でハンバーガーを頬張る睦海の目の前に僕のお手製である筑前煮の入ったタッパーを置いた。先刻、脂っぽいものが食べたいとは言ったが、やはりバランスよくエサを食べることは人間として生きていく上で大切な事だからな。フフフ、人間として……か。スパイの僕が人間を語るとは僕も昔と比べて随分と丸くなったものだ。丸くなったとは別に養豚場に巣食う豚のように肥えたという意味ではないぞ。


「ギャー! にぃにの変態! そんなものいきなり出さないでよ!」

「だ、誰が変態だ!? ……あ、そうか。悪い、割り箸な。原始人みたいに筑前煮を手づかみで喰い散らかしていたらそれはもうゴリラを超えた変態的なナニかだよな」

「にぃにのバカァ! そんな意味で言ったんじゃないよ! こんな場所で唐突に変なモノ出さないでよ! 何でそんな脈絡のないアイテム出すの!」

「へ、変なモノって……筑前煮だぞ、根菜だぞ、根菜。根菜たっぷりの筑前煮はこういう脂っこいエサと一緒に喰うと身体に良いんだぞ」

「エサって言わないでよ! にぃにの言いたいことは分かったけれど、せめてコールスローとかそういうのにしてよ! ファストフード店で筑前煮出すとか頭おかしいし恥ずかしいからやめてよ!」

「コール……スロー……ってなんだ? 大魔球的な何かか?」

「もう、知らない! もうにぃには黙ってて! それ以上しゃべるとポテトで暗殺する!」


 睦海は拗ねながらハンバーガーに再びはむはむと噛り付く。

へにゃへにゃに曲がった野良犬も尻尾振って逃げ出す脂っこいポテトで僕をどう暗殺するつもりなのだ?大量に食わせてブクブク太らせて、生活習慣病にして合併症に導いてヤルデス!とかそういう暗殺か?まあ、いい。わざわざあまり好きでない実の妹と無理矢理に会話を交わす必要はないし、今日は世にも珍しくキティガイちゃんの田中某からもキャッチされなかったから何だかんだ言いつつも平穏である。これもそれもあれもどれも僕の普段の行いが悪いおかげだな、フフフ。


「むーつみちゃん! こ ん に ち は !」

「……!? ぎっ、ぎぁああああ!! だ、誰!? 誰だっ!!」


 神様、いったい僕がナニをしたというのでしょう。

心が平穏状態な僕にまたもや僕の平穏をぶち壊す嵐がやって来ました。黙々とハンバーガーと筑前煮を交互に食べていると、突然目の前にキティガイちゃんこと田中某が沸いて出てきました。田中某はハンバーガーと格闘中の睦海の視界を背後から両手で塞いでいた。ああ、僕じゃなくて良かった……などとホッとできるほど心にゆとりのあるゆとり世代の僕ではない。


「だ、誰だれだれ誰だ! へ、変質者か! に、にぃに! タスケテ!」

「変質者? 変質者ならいるよ? ほら……そこで筑前煮たべてるひと」


 だ、誰が変質者だ!?

と思い切り声を上げたいところではあるが、僕はその声に出したい気持ちをぐっと我慢する。そうだ、最近コイツに絡まれ出してからどうも僕は口数が増えたような気がする。本来のスパイの美学である沈黙の美意識を忘れているような気がするのだ。だからこんなキティガイちゃんの悪戯に構ってやる必要はないんだ!


「…………」

「睦海ちゃんのお兄ちゃんは冷たいネー……妹が襲われかけているのに黙って無視してるよ。食べちゃうぞ~、にっしっし」

「や、やめろー! お、おいしくない! 私を食べてもおいしくないからやめろー! やめるんだ!」

「え~……そうなんだー、どうしようっかな~~……がぶっ」

「ぎぁあああああ! おいしくないって言ったのに! どうしてがぶっと噛んだ! どうして首を噛んだ! もしかしてお前はどらきゅらの変質者か!?」

「あーじみーだよっ! じゅるじゅるっ、おいしいね♪」

「ぎゃああああああ!!」


 はあはあ、何だよこの茶番は。

女子がちちくりあ……ってはいないが、甘噛みの現場を目撃できると何て僕はラッキー……何てことは思ってもいないが、ご馳走様です。違うそうじゃないぞ僕!これは、今がチャンスではないか?田中某が睦海に気を取られているうちにこっそりと逃げ出す。うん、我ながら賢い。戦略的撤退である。決して、臆病風に吹かれて逃げ出すとかそういうのじゃない。僕はこっそりと席から立ち上がり、出口に方へ向か……。


「あ! 逃げるな、どーん!」

ぱふっ

「きゃっぅううん!?」


 田中某から背を向け逃げ出そうとした瞬間である。

いきなり背後に柔らかな優しい感触を感じ、思わず犬のような声を上げてしまう僕。えっ、えっえ……嘘、ナニコノ柔軟剤のような柔らかさと気持ち良さ。うっうっぅう、ま、まさか。まさかこの二つのポッチは。ポポポポ……ポッ、ポッチは。


「わっはっはっは! この私から逃げれると思ったかね佐藤くん!」

「…………」

「さあ! 観念したまえ、さっとうくんよ! 私を無視するな! キミは私の手となり足となり……って、おろ? さっとうくん、首真っ赤っか」

「…………」

「……返事が無い、只の変態のようだ……。おーい! さっとうくん! 起きろ、さっとうくーん! 朝ですよー!」

「…………」

「……おろ?」


 僕は田中某の拘束から逃れ、素早く距離を取る。

いきなりの僕の素早い行動に呆気になった田中某は目を丸くしてしている。そして僕は息を吸ってそして吐き込み、意を決して口にする。


「おっおっおっ……おっぱい、ご馳走しゃまでしたっ!!!!」


 僕はそのままその場から出口に向かって逃げ出した。

すると背後から『きゃああああ!! ブラ、外れてるよおおおお!!』とかいう絶望的な声が聞こえてきた。や、やった……やったぞ!勝った、今日は勝ったぞ!勝者は僕だ!うわははははは!そして、ファストフード店の出口の前に何時の間にか睦海が立っていた。は?何故、お前がそんなところに?


「にぃに! ポテトの恨み! 暗殺する!」


 にゅるぽっ!


「ヒィン!」


 僕の鼻の穴にしなしなになったポテトが睦海の手により突っ込まれた。なんやねん、ポテトの恨みって……鼻の穴の中が油でギトギトになったやないかい!

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