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夢と現実の境界線

だいぶ間が空きました。

すみません

……あったかい

まるで誰かに抱きしめられているみたいにあったかくて、安心できる。

嗅いだことのある香りが、鼻腔をくすぐる。



『幸せ、だなぁ』



聖夜祭の奇跡が僕にも起きてくれたのかな。

こんな、幸せな夢を見させてくれるなんて。


嗅ぎ慣れた彼の香りに、ぬくもりに、しがみつく。夢の中だけでも離さないように。



『幸せ、か』



僕を包み込む、彼の夢が小さく呟く。



『幸せ、だよ……夢でも、まてぃあすが、帰ってきてくれたんだもん…』



寂しかったんだよ、マティアスが僕の誕生日を忘れて。

他の誰かと楽しそうに聖夜祭を楽しんでいて。


キュッと彼の胸元を握りしめて、本音を吐き出す。


きっと起きたら誰もいない。僕には何も残らない。だから

夢の中でだけでも、すべて吐き出していいよね?



『みたことなかったな、あんなえがお…』

『好きな奴がそばにいて、緊張しないわけないだろ』



ふふっ。さすが僕の夢だね。僕の望むことばっかり言ってくれるね。



『ぼくには、めんどくさいって、いったのに』

『サプライズを、するつもりだったんだ』


『やさしいことばなんて、きいたことない』

『それは……悪かったと思ってる』


『だから』


「そろそろ目を覚ましてくれ」



あ〜あ。もうおしまいか。

幸せな、幸せな、僕の夢。


少しずつ浮上していく意識に争わないで、うっすらを瞼を開ける。



「ま、てぃあす……?」



まだ夢の続きをみているのだろうか。

夢うつつを彷徨っていた意識が強制的に引き上げられる。


暖かいと感じていたのは彼の腕の中にいたから。

膝に乗せられ、身体をからめとっているのは彼の大きな腕で。


どうしてここに

……と彼を仰ごうと後ろを振り返った途端に、僕の唇は塞がれた。



「ん……っ!?」



与えられた熱から逃げようと頭を振るも、後頭部を掴まれ動けなくされる。

目を見開きながら必死になって身をよじる。この溶けそうな熱から逃れたい一心で。


溶ける。冷たくなっていた心が、頑なになっていた身体が、トロケていく。

お願い……やめてよ、マティアス……!


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