逃げ出した場所
「何も言わないで、飛び出してきちゃった……」
マティアス達の楽しそうな、幸せそうな光景を見たら、いてもたってもいられなくなって……
家から用意していた荷物だけ掴んで、着の身着のまま森に立ち入った。
元々森や草原で暮らしていたと言われるうさぎ族の僕にとって、森は自分の庭に近い。
危険なこともいっぱいあるけれど、安全な場所も知っている。
それとは対照的に、サバンナで暮らしていたと言われるライオン一族の彼は、森に入ろうともしないだろう。
「父さん、母さん…落ち着いたらちゃんと顔出しに行くから…それまでは許してほしい」
ぼんやりと歩き続けて目指したのは、森の小さな湖。僕の、大好きな場所。
付き合う前ーー友達として彼を連れて行ったことのある、思い出の場所。
「考えてみたら、付き合う前のほうが楽しかったのかも」
ただの友達としてバカやって、笑いあって。
付き合ってからはいつ飽きられるか、一緒にいられなくなるか、ビクビクしてばかり。
会う約束があるときは隅々まで気を使って、とっても疲れたのを覚えている。
「皮肉なものだよね……」
結局、彼と僕は釣り合わなかった。運命の先に、お互いは結ばれていなかったのだ。
「イベントごとは面倒だって言ったのに、ね」
彼を好きだった。愛していた。
それでも。運命で結ばれていないと現実を突きつけられた。
普段より何倍もかけてようやく着いた湖で、力なく座り込んだ。
心なしか、いつもより曇った景色。僕の心が曇っているからかな?
「いつか、忘れられると、いいな……」
忘れたくないと、愛されたいと、心が叫ぶ。
頭では理解していることが心では拒否されて、心と体がバラバラになる。
「やだな…胸が、痛い…」
痛む心を隠しながら立ち上がり、幹に大きな空洞ができた大樹の中に入る。
小さな頃からの、僕の秘密基地。きっとここなら誰にもばれない。
小さな湖と、大きな大きな大樹。
ここなら、大丈夫。
「大丈夫。大丈夫…いつか立ち直れる…」
木の壁に身体を預けて、丸まる。
顔を埋めて、嗚咽を押し殺して、泣く。
きっと……大丈夫……
未だにヒーローの活躍がなし……
ぱっと見マティアスは最低ですが、きちんとわけがありますので…




