突きつけられた現実
聖夜祭だから、いつもより賑わっている街中。
僕は見納めになるかもしれないと、街に繰り出していた。
キラキラとした飾り付けをされた街は、自分の誕生日が好きになったおかげか、例年より輝いて見えた。
「せっかくだから二人に何か買って行こうかなぁ」
親不孝ばっかりする僕の、唯一できる親孝行かもしれないから。
母さんは何がいいかな。父さんはやっぱりお酒かな。あぁ、でも二人ともお酒好きだからワインとかでもいいかもしれない。
浮き上がっていく心とともに、足取りも軽くなる。
それに伴って視線も上がって。
だけど、飛び込んできたのは、見たくない、残酷な光景だった。
「マ、ティアス……?」
先には、楽しそうにアクセサリーの露店を覗く、僕の恋人と、知らない綺麗な女の人。
僕には、めったに見せてくれない照れ臭そうな笑顔を浮かべて、アクセサリーを見ている。
……マティアスは、僕の恋人なのに。まだっ、僕の恋人なのにっ!
でも、これで良かったのかもしれない。
彼の邪魔になる前に、彼から別れの言葉を聞く前に。僕は彼の前から消えることができる。
冷たくなった指先を握りしめて、自分に言い聞かせる。
いつか彼が思い出してくれたらいい。
昔からかった、滑稽な男がいたと。平凡のくせに、身の程もわきまえないで恋人面していた男がいると。
彼には彼女みたいな、綺麗な女の人がお似合い。
僕みたいな貧相な男じゃなくて。子供の産めない平凡な男じゃなくて。
綺麗で、彼の隣に堂々と立つことができる、女の人。
彼女、とっても楽しそうだったな。幸せそうだったな。
彼も、楽しそうで、幸せそうだった。
「マティアス……さようなら。幸せになってください……」
彼が幸せだったらそれでいいのに!
なんで…なんでっ、涙が止まってくれないの……?
幸せそうな彼らに、僕は背を向けて。
全てから、目を背けて。楽になる道を選んだ。
主人公がネガティブすぎて、ハッピーエンドにできるか不安になってきました。
いや、ハッピーエンドにはしますよ?流石にこのままではルトがかわいそうですし…




