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3.ヒマワリ畑のライオン

 なっぱと、しっぽくの字のくーたろうと、でんちゅーの三びきは、町の南へ向かってずんずん進んで行きました。

 町を出てしばらく行くと、本当はいないいるのにおらんの言ったとおり、黄色い花が一面に咲くヒマワリ畑が続いていました。

 三びきともずっとのらねこ小路こみちに住んでいたので、町の外にこんなステキなところがあるなんて知りませんでした。

 それで三びきはしばらくの間見とれていました。

「キレイだね」

「うん」

 なっぱが言ったのに、しっぽくの字のくーたろうがうなずきました。

「キレイ過ぎて、なんだか怖いよ」

 でんちゅーが言いました。

 なっぱもしっぽくの字のくーたろうも、でんちゅーの気持ちがチョッピリ分かるような気がしました。一面のヒマワリ畑は怖いくらいキレイでした。

「そろそろ行きましょう。スイカ山まで行かなきゃですから」

 なっぱの言うとおりです。

 三びきはヒマワリ畑の向こうに見えるスイカ山まで行かなければならないのです。黄色いヒマワリにみとれてばかりなんていられません。

 なっぱたちは、ヒマワリ畑の中をスイカ山目指してとっとことっとこ歩いて行きました。

 ヒマワリ畑をしばらく進んでいくと、ゴーゴーと、まるで嵐の夜みたいな音が聞こえてきました。

「これ何の音? ぼく、怖いよ」

「怖いことがあるもんか、ただの風の音さ」

 しっぽくの字のくーたろうがでんちゅーに言いました。

 けれどもそれが本当のことではないことを、なっぱもでんちゅーも、そしてしっぽくの字のくーたろうも分かっていました。だって、風なんて少しも吹いていなかったのですから。

 けれども風の音とでも思わないと、怖くて怖くて前に進めません。三びきは「風の音、風の音」と言いながらヒマワリ畑の中を進んで行きました。

 先に進むにつれて、ゴーゴーいう風の音はだんだんと大きくなりました。

 風の音がいよいよ大きくなったときです。三びきはヒマワリ畑にぽっかりと空いた広場に出ました。その広場の真ん中に、りっぱなたてがみのある大きなライオンが寝ていました。

 ゴーゴーいう音は風の音ではなくて、ライオンが寝ているイビキの音だったのです。

 三びきはびっくりしました。怖くて縮み上がって、しっぽがぷくぷくに膨れました。

「きっとぼくたちライオンに食べられちゃうよ。怖いよ」

 でんちゅーが泣きべそをかきながら言いました。

「食べられやしないよ寝てるんだから。起こさないようにこっそり行けば大丈夫だよ」

 しっぽくの字のくーたろうの言うとおりです。ライオンを起こさないように静かに通り過ぎればきっと無事に違いありません。

 三びきはなるべく音を立てないようにこっそりと歩きました。

 でんちゅーは怖くてライオンの方を見ることが出来ませんでしたが、なっぱとしっぽくの字のくーたろうは、ライオンのことが気になって気になって目が離せませんでした。

 ライオンをじっと見ていると、しっぽくの字のくーたろうは、ライオンがたてがみにヒマワリの花を一本差しているのに気がつきました。

 一度気がつくと、そのことが気になって気になって仕方がありません。

「おい、なっぱ」

「なんですか、しっぽくの字のくーたろうさん」

「あのライオンのたてがみにヒマワリの花があるのを見たか」

 そう言われて、なっぱもたてがみのヒマワリの花に気がつきました。

「たてがみにヒマワリがありますね」

「だろ?」

「それがどうかしたんですか?」

「だってさ」

 しっぽくの字のくーたろうは、笑いを抑えながら言いました。

「だって、あんなに大きくて強そうで怖いのに、たてがみにお花を差しているなんて、女の子みたいじゃないか」

 ついにこらえきれなくなって、しっぽくの字のくーたろうは、にゃひにゃひ笑ってしまいました。

 そのときです。

 ゴーゴーいびきをかいていたライオンの耳がピクピクっと動いて目をパッチリ開けました。それから、すっくと立ち上がって、ひとっ跳びして三びきの行く手を阻みました。

「今、笑ったのは誰だ!」

 ゴーゴーいういびきに負けないぐらい大きな声でライオンが言いました。

 三びきは怖くて怖くてしっぽがいっそうぷくぷくに膨れました。

 でんちゅーは今にも気絶しそうです。

「誰が笑ったのか言わないと、三びきとも食べてしまうぞ!」

 食べられては大変です。しっぽくの字のくーたろうは、咄嗟に言い逃れをしようと思いました。

 あれこれと言い訳を考えていたときです。しっぽくの字のくーたろうは、本当はいないいるのにおらんが言ったことを思い出しました。

 おばあさんねこは正直が一番と言ったのです。

 それでしっぽくの字のくーたろうは正直に言いました。

「笑ったのはオイラです」

「なんで笑ったんだ」

 ライオンはかんかんに怒っています。

「だって、お花をたてがみに差してるなんて、女の子みたいだったから。大きくて強いライオンさんには似合わないから、笑ってしまったんです」

「なんだって?」

 ライオンの顔がしっぽくの字のくーたろうの間近に迫って来ました。

「悪気はなかったんです。ゴメンなさい」

 しっぽくの字のくーたろうはやっとの思いで言いました。

「女の子みたいだってのは本当か?」

 ライオンが聞きました。

「本当ですとも。なぁ、なっぱ、でんちゅー」

 急に自分の名前を呼ばれたので、なっぱとでんちゅーはあわてました。それで、何も考えずにうんと言ってしまいました。

「そうなのか。女の子みたいなのか」

 ライオンは、何か考え込んでいるようです。

「それじゃぁ、この花を大きくて強い俺様に似合うように、オシャレでカッコよく飾るにはどうすればいい?」

 これには三びきとも目を丸くしました。

「ちょっと待ってください」

 しっぽくの字のくーたろうはライオンに言うと、なっぱとでんちゅーを呼んで三びきで顔を寄せ合ってごにょごにょ相談を始めました。

「それじゃぁライオンさん、お花を十本ばかり根元から折って集めてください」

 ライオンはわかったと言って、背の高いヒマワリを次々と根元から折って、たちまち十本集めてきました。

「集めたぞ。それからどうするんだ」

 ライオンが聞きました。

「そしたら二本持って、茎をギュッと絡めてください」

「こうか?」

 ライオンは上手に二本のヒマワリを絡め合せました。

「そしたら、もう一本継ぎ足して絡めて下さい」

 ライオンはしっぽくの字のくーたろうが言うとおりに、ヒマワリを一本、また一本と継ぎ足して行きました。

 十本全部継ぎ足し終わると、今度は端と端とをつなぎ合わせて輪にしました。

 立派なヒマワリの冠の出来上がりです。

 ライオンは、ヒマワリの冠を頭に乗せました。

「どうだ? 似合うか? カッコイイか?」

「似合いますよ。カッコよくて、強そうです」

 しっぽくの字のくーたろうが言ったのに、なっぱもでんちゅーも、うんうんと頷きました。

「そうか、カッコよくて、強そうか」

 ライオンは得意そうに胸を張りました。

「俺様ほど、黄色いタンポポの花が似合う、オシャレでカッコイイライオンはいないだろうな」

「タンポポですって?」

 三びきは声を合せて素っ頓狂な声を上げました。

「ライオンさん、この黄色い花はタンポポじゃありませんよ。ヒマワリですよ」

「何? 本当か?」

 今度はライオンがビックリして聞きました。

 三びきはうんうんと首を縦に振りました。

「そうか。タンポポにしては大きくて背が高い花だと思ったんだ。タンポポじゃなかったのか」

 ライオンは、のどにつかえていた骨が取れたときのように、スッキリした顔で言いました。

「タンポポでもヒマワリでも、どっちだっていいじゃないですか。似合っているんだから」

 しっぽくの字のくーたろうが言いました。

「そうだな。どっちだっていいな」

 ライオンはしっぽを振り振り喜んで言いました。

「それじゃぁ、ぼくたちはまだ先に行かなきゃいけないんで、もう行きますね」

 なっぱが言いました。

「そうか。じゃぁ気をつけて行きな。ありがとうよ」

 ライオンがしっぽを振りながら言いました。

「ライオンさんもお元気で。さようなら」

 三びきはライオンにお別れを言って、スイカ山へと向かって進みました。


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