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「ふむ。ミサトさんが仰りたいことはわかりました。しかし、それは少々都合が良すぎるのではないかな?」
ケヴィン様が、キラキラのない笑顔を私に向けている。
この笑顔を私自身に向けられるのは初めてであり、ケヴィン様が本気で言っているのであろうことがわかる。
まさか、非難されるとは思わなかった私は、そこで真っ白になった。
三室で、レイ君からエメラルドの聖女様の様子を聞いた後、ケヴィン様に助けていただこうと思い、私は教会に足を運んだ。
「ミサトさん、いらっしゃい。今日はどうしました?」
いつものように、キラキラのまぶしいケヴィン様が出迎えてくれた。
「今日は、ケヴィン様にお願いがあってきました。」
「私に、ですか?おやおや、珍しいこともあるものですね。どうぞ、中へ。」
そこで、私は、リュウ先生が時間外に誘われて少々困っていること、レイ君が助け舟を出してくれて、アズ師匠のお店に連れてってくれたこと、本日は聖女様がかち合ってしまうので、午後から夜にかけて、教会にて、聖女様のお相手をしていただきたいこと、などをなるべくマイルドに伝えた。
ケヴィン様は、「なるほど、それは大変ですね。」とか、「そうでしたか。」とか、相槌を入れながら私の話を聞いてくれたが、その相槌は、以前ジュエル先生が、面接のときに転移者の方に向けていたそれである。
話しているうちに、どうにも居心地の悪さを感じたが、最終的に返ってきた言葉が、先ほどの厳しいものであった。
「都合が良すぎる、ですか・・・。そうですか。」
「そもそも、担当はミサトさんですよね?ですから・・・」
その後、ケヴィン様の話が続いていたが、『担当は私』の一言が重くのしかかって、その後の話が頭に入ってこない。
― そっか・・・担当なら私が責任をもってどうにかするべき問題。
リュウ先生と私がどうなろうが、まずは三室、そうでなければ人界でなんとかするべきなんだ。
聖女様を助けるために、ケヴィン様にお願いしたけど、そもそもそれが間違いだったのかも。
それに、天界が関わっているなら、アズ様のお店に連れて行ったのも、問題があったのかもしれない。
聖女様の言動について、最初からケヴィン様に相談すればよかったのだろうか。
いや、そういうことを仰っているんじゃない。
困ったときだけ、天界や魔界にお願いすること自体が、間違ってるということか。
「しかし、他ならぬミサトさんのお願いとあれば・・・ミサトさん?聞いていますか?ミサトさん?」
ケヴィン様に呼ばれて、ハッと我に返る。
「あ、ああ・・・ケヴィン様の仰る通りです。大変申し訳ございませんでした。後はこちらでなんとかします。」
「え・・・?私の話、聞いていましたか?」
「お忙しいところ、お時間取らせてしまい申し訳ございませんでした。それではこれで失礼します。」
「あ、ちょっと待っ・・・」
思考がまとまらないまま、それだけ言って教会を後にした。
後ろから、声が聞こえたような気がしたが、これからのことを考えるのに精一杯で、振り向く余裕などなかった。
きっと、優しいケヴィン様に拒絶されたショックもあったのだろう、と思う。
三室へ帰る道すがら、まずは今日の午後をどうしようか考える。
聖女様を教会に送り届けるの役目は、リュウ先生とレイ君は無理。
天界の方にお迎えに来てもらおうと思っていたが、それは叶わなくなった。
となると、私しかいない。
昼食は、きっと一緒に食べる流れになるから、その時・・・いろいろ言われるだろうな。
でも、リュウ先生もちゃんと言ってくれたんだもん。
私も毅然とした態度で、ダメなものはダメってちゃんと伝えなくちゃ。
ミサトが立ち去った後の教会では・・・
「ケヴィン様、あれはちょっと言い過ぎですよ。お可哀そうに、真っ青な顔になってましたよ。」
「だって・・・それでもあなたのお願いなら聞いてあげますよって言ったほうが感謝倍増されるかと思ってですね・・・。」
「あ~・・・なに拗らせてるんですか。アズ様に知られたら怒鳴り込まれますよ。私、知りませんからね。」
「えええ~、ねぇ、どうしましょう。困ったなぁ。」
ケヴィンが、部下に呆れられていた。




